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2019年11月に作成された記事

2019/11/29

独断的映画感想文:ホテル・ファデットへようこそ

日記:2019年11月某日
映画「ホテル・ファデットへようこそ」を見る.
2017年(劇場未公開).監督:フロランス・カンタン.1_20191231221201
出演:ジェラール・ドパルデュー(ジェラール),カトリーヌ・ドヌーヴ(バルバラ),ゴチエ・バトゥー(マニュ),ギヨーム・ドゥ・トンケデック(アントワーヌ村長).2_20191231221201
ジェラールは自動車修理工場長.オーナーは60年間義母が勤めてきたが,最近妻が後を継いだ.
しかし妻はダンスに入れ込み,パートナーの男とただならぬ仲に.ジェラールは怪しい客の車の不正改造で得た大金を持って遂に家出を敢行,かねて目をつけた田舎の村の修理工場を居抜きで買い取るため,その村のホテル・ファデットに滞在する.
買取交渉はうまくいき,オーナーが旅行中とりあえず工場を預かることになる.ホテル・ファデットの支配人バルバラは,飲んだくれては客を放ったまま逃げ出す女.その度に気の良い村人が何とか対応して辻褄を合わせるが….3_20191231221201
この女主人の無茶苦茶に次第に巻き込まれていくジェラールの物語.4_20191231221201
バルバラの無軌道ぶりは次第に激しくなり,遂には24 人の結婚パーティーを忘れたまま出かけてしまう.この時点ではすっかり馴れたジェラールが中心になって,パーティーを何とか成功させてしまうドタバタがおかしい.フランス映画らしく,登場人物はことごとく自由恋愛に走っているし,まっとうな市民ジェラールの生活再建資金がどうもブラックマネーらしいというのも可笑しい.小規模なコミカル作品だが,2大俳優の演技で最後まで面白く見た.
★★★☆(★5個が満点)
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2019/11/24

独断的映画感想文:ファースト・マン

日記:2019年11月某日
映画「ファースト・マン」を見る.1_20191127205102
2018年.監督:デイミアン・チャゼル.
出演:ライアン・ゴズリング(ニール・アームストロング),クレア・フォイ(ジャネット・アームストロング),ジェイソン・クラーク(エド・ホワイト),カイル・チャンドラー(ディーク・ストレイン),コリー・ストール(バズ・オルドリン),クリストファー・アボット(デイヴ・スコット),キアラン・ハインズ(ボブ・ギルルース),パトリック・フュジット(エリオット・シー),ルーカス・ハース(マイク・コリンズ).3_20191127205102
人類で初めて月に降り立ったアポロ11号船長:ニール・アームストロングの伝記映画.
映画の冒頭,ヘルメットに覆われたパイロットの顔と,狭い視界の風防から見える激しく揺れる空の映像が続く.ニールは朝鮮戦争にパイロットとして参加したあと大学に戻り,卒業後は政府系の研究所でテスト・パイロットに従事.X-15試験機で大気圏外との往復飛行を繰り返す.
私生活では2番目の子どもカレンを幼くして脳腫瘍で亡くすという悲運に見舞われながら,宇宙飛行士を目指す審査に応募し合格する.ニールは技術力を持つパイロットとして,ジェミニ計画でのドッキング試験とその直後に起こった異常回転の制御に成功する等,成果を挙げていく.
アポロ1号の訓練中に3名の飛行士が火災事故で死亡,これを乗り越えニールはアポロ11号の船長として月への飛行を命じられるが….5_20191127205101
アメリカ映画には珍しい寡黙な映画である.
ニールは宇宙パイロットとして人並み外れて心身共にタフな人間だったと思われるが,その内面は極めて複雑だった.カレンの死は長くニールの心に悲哀をもたらした.また開発途上の狭く技術的にも未熟な宇宙船への搭乗は,恐ろしいものだったことは想像に難くない.それを乗り越える思索がニールの内面を形成したのだろうか.2_20191127205102
そのニールを,映画は少ない台詞と沈黙の画面で表現していく.暗い廊下を歩いて行くニールの後ろ姿もよく描かれる.長く苦しい行程の果てに遂にニールは月面に到着するが,そこでニールが行った鎮魂の行動には,涙を禁じ得なかった.
最終場面,地球帰還後,隔離されたニールはガラス越しに妻と対面する.何も語らず二人は只目を見交わすが,このシーンも感銘的.ライアン・ゴズリングとクレア・フォイの演技が素晴らしい.4_20191127205102
映画は緊張感高く,141分の長尺を息を詰めて見た思い.素晴らしい作品だ.
★★★★☆(★5個が満点)
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2019/11/19

独断的映画感想文:散り椿

日記:2019年11月某日
映画「散り椿」を見る.1_20191127205101
2018年.監督:木村大作.
出演:岡田准一(瓜生新兵衛),西島秀俊(榊原采女),黒木華(坂下里美),池松壮亮(坂下藤吾),緒形直人(篠原三右衛門),新井浩文(宇野十蔵),柳楽優弥(平山十五郎),芳根京子(篠原美鈴),駿河太郎(坂下源之進),渡辺大(千賀谷政家),麻生久美子(瓜生篠),石橋蓮司(田中屋惣兵衛),富司純子(榊原滋野),奥田瑛二(石田玄蕃).2_20191127205101
瓜生新兵衛はかって扇野藩勘定方の武士,平山道場の四天王と言われた腕の持ち主.勘定方の不正を訴え出た事件後脱藩,8年後の今は地蔵院の庫裡で妻・篠と共に暮らす.
篠は労咳を病み,死に臨んで新兵衛に藩に戻り,榊原采女を助けるよう言い残す.
四天王の一人で今は側用人を務める采女は,かって篠を巡る恋敵でもあった.新兵衛は不正事件の真相と,篠の遺言の真意を確かめるべく,扇野藩に戻るが….3_20191127205101
地方ロケの映像が美しく,これだけで見る値打ち充分.岡田准一の殺陣は目にも止まらぬ速さ,冒頭のシーンで殺到する3名を一瞬の間に切り伏せた動きを始め,圧倒的な迫力を見せる.麻生久美子,黒木華,富司純子の女優陣も見応えあり.この様に時代劇として骨格は一応出来ている.4_20191127205101
残念なのは勘定方不正事件の真相が見えてこないところで,現家老・石田玄蕃の企むお家乗っ取りと過去の不正事件の処理が,どう繋がっているのか判然としない.篠の兄であるやはり四天王の源之進の,切腹の理由も腑に落ちない.
その他新藩主政家が狙撃された時の家臣の動き方(皆狙撃犯を追って行ってしまい,主君を身を挺して守るものは誰も居ない)等,突っ込みどころは幾つかある.なかなか必要十分条件をきちんと満たした時代劇を見るのは難しくなった.
★★★☆(★5個が満点)
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2019/11/18

番外:独断的歌舞伎感想文 11月吉例顔見せ大歌舞伎夜の部 菊畑/連獅子/市松小僧の女

日記:2019年11月某日
歌舞伎座で11月吉例顔見せ大歌舞伎夜の部を見る.Kabukiza_201911_tokubetsu_e1572337175346 「一、鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき) 菊畑 中村梅丸改め初代中村莟玉披露狂言」.出演:奴智恵内実は吉岡鬼三太(梅玉),奴虎蔵実は源牛若丸(梅丸改め莟玉),笠原湛海(鴈治郎),吉岡鬼一法眼(芝翫),皆鶴姫(魁春).河竹黙阿弥 作.「二、連獅子(れんじし)」.出演:狂言師右近後に親獅子の精(幸四郎),狂言師左近後に仔獅子の精(染五郎),僧蓮念(萬太郎),僧遍念(亀鶴).池波正太郎 作.大場正昭 演出.江戸女草紙「三、市松小僧の女(いちまつこぞうのおんな)」.出演:お千代(時蔵),市松小僧の又吉(鴈治郎),南町奉行同心永井与五郎(芝翫),娘お雪(梅枝),森田屋彦太郎(萬太郎),武士大沢録之助(由次郎),掏摸の仙太郎(市蔵),大番頭伊兵衛(齊入),後妻お吉(秀調),百姓権兵衛(家橘),嶋屋重右衛門(團蔵),おかね(秀太郎).
Img_20191118_161058 菊畑は莟玉の美しさが際立つ舞台,牛若丸の所作口跡共に見事.小さい顔ながら身体はしっかりできていてバランスも良く,末が楽しみ.連獅子も染五郎の活躍が印象的,未だ身体はできていないが顔立ちが精悍で幸四郎より遙かに男前.こちらも楽しみ.市松小僧の女は池波正太郎の新歌舞伎.昼の部の髪結新三に出ていた脇役連中(秀調,家橘,團蔵等)が、全く違った役柄でこちらにも出ているのが楽しい.秀太郎のおかねも秀逸.主役の時蔵・鴈治郎が池波作品らしい味を出し,良くまとまった芝居で感銘的だった.
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2019/11/16

独断的映画感想文:夕陽のあと

日記:2019年11月某日
新宿シネマカリテで映画「夕陽のあと」を見る.1_20191116182801 2019年.監督:越川道夫.
出演:貫地谷しほり(佐藤茜),山田真歩(日野五月),永井大(日野優一),川口覚(新見秀幸),木内みどり(日野ミエ),松原豊和(豊和).2_20191116182801 鹿児島県最北端の町長島町は,漁業・農業・畜産業が盛んで,地域コミュニティの結びつきも強い町.1年前から町にやって来て,港の食堂で働く茜は,元気良い働きぶりで若い男性客にも人気があり,待ちの子供達の養育活動にも参加していた.
夫・義母と共にぶり養殖業を営む日野五月は,不妊治療を諦め,生後まもなくから養子に迎えた豊和を育ててもう7年になる.生活の安定を得た日野家では,いよいよ豊和と特別養子縁組を組むべく,親権を持つ児童相談所と相談を重ねている.5_20191116182801 その中で豊和が7年前のネットカフェ乳児置き去り事件の被害者であること,自殺未遂ののち有罪判決を受けた母親は佐藤茜であることが判明する….
産みの親と育ての親の対立は,子どもを巡るものだけに胸が痛む.五月は「奪いに来たのか」と身構え,茜は「自分が島を出るときは豊和も一緒だ」と頑なになる.答のない両者の確執がどうなるのか,結末は予断を許さない. ところで,ブレイディ・みかこ氏のベストセラー「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の中にこんな話がある.英国の小学校で「エンパシー(共感)とは何か」と言う宿題が出た.息子さんの答えは「自分で誰かの靴を履いてみること」.映画では,五月は豊和と茜を理解するため,「相手の靴を履いてみる」行動に出る.また豊和も実践的に「相手の靴を履く」行動を示す.このことがどのような結末に繋がるか.3_20191116182801
貫地谷しほり・山田真歩の好演が印象的,永井大・木内みどりも良かった.松原豊和はオーディションで決定した地元の少年.題名は,夕陽のあとの海は凪いで一番温かいという,日野五月の言葉による.見て損はなし.★★★★(★5個が満点)4_20191116182801 にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ

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2019/11/15

独断的映画感想文:空飛ぶタイヤ

日記:2019年11月某日
映画「空飛ぶタイヤ」を見る.1_20191117195901 2018年.監督:本木克英.
出演:長瀬智也(赤松徳郎),ディーン・フジオカ(沢田悠太),高橋一生(井崎一亮),深田恭子(赤松史絵),寺脇康文(高幡真治),小池栄子(榎本優子),阿部顕嵐(門田駿一),ムロツヨシ(小牧重道),柄本明(野村征治),佐々木蔵之介(相沢寛久),六角精児(谷山耕次),津田寛治(濱中譲二),升毅(巻田三郎),笹野高史(宮代直吉),岸部一徳(狩野威).Photo_20191117200901 赤松運送のトラックが運行中タイヤが突然はずれ,歩行者の柚木妙子がタイヤに直撃され死亡する.この事故で赤松運送は整備不良を疑われたが,整備記録は通常のレベルをしのぐ整備を示していた.
社長の赤松はトラックの製造元「ホープ自動車」に車体の調査を依頼するが,結果は戻ってこない.被害者家族は赤松の整備不良を認めない態度に激昂し,「あなたは人間ではない」と非難する.また取引先や主力銀行も赤松運送から手を引き始める.3_20191117200301 週刊誌が内部通報からホープ車トラックの構造欠陥を報道することになったが,発行直前に記事は掲載中止となり,内部通報者は左遷された.赤松は窮地に追い込まれるが….4_20191117200901
三菱自動車のリコール隠しを題材としたベストセラー小説の映画化,原作は未読.現実に起こった事件だから,結果は分かっているが,それにいたる三菱自動車内部での暗闘や,三菱銀行である「ホープ銀行」の三菱自動車に対する融資を巡る企業内の確執が描かれ,それなりに面白い.2_20191117200901
演技陣は結構豪華な配役で,もう2~3本の映画が撮れるのじゃないかと思えるほど.美貌の深キョン含めちゃんと演じているが,主役の長瀬君が何とも非力で見ていて苛々する.何故この人を主役にしたのかは理解できない.
★★★(★5個が満点)
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2019/11/12

独断的映画感想文:歓びのトスカーナ

日記:2019年11月某日
映画「歓びのトスカーナ」を見る.0_20191112211401 2016年.監督:パオロ・ヴィルズィ.
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(ベアトリーチェ),ミカエラ・ラマッツォッティ(ドナテッラ),ヴァレンティーナ・カルネルッティ(ザッパ医師),アンナ・ガリエナ(ルチアーナ),マルコ・メッセーリ(モレッリ).1_20191112211401 イタリア・トスカーナ地方の自然に恵まれた司法精神療養施設.ここで女王のように君臨するベアトリーチェは猛烈なおしゃべり,上流階級出身で「伯爵夫人」を名乗るが,極端な虚言癖の持ち主.詐欺罪で有罪判決を受けここに収用されている.
新参のドナテッラは息子と無理心中を図ったシングルマザー,重い鬱に苦しむ無口な女性.
何故かドナテッラに興味を持ったベアトリーチェは彼女と同室になり,ベアトリーチェの凄まじいおしゃべりに辟易しながらドナテッラもベアトリーチェと行動を共にする.ひょんなことから所外作業の帰路まんまと脱走することができた二人,破天荒な逃走を重ねるが,ドナテッラの望みは養子に出された息子に会うこと只そのことのみだった….3_20191112211401 一風変わった取り合わせのコンビのドタバタ風逃走劇だが,抱える問題は相当重い.その問題は映画の後半にいたって次第に詳らかになる(ドナテッラが重い口を開いて自分の起こした事件を訥々と語るのに対し,奔流のように喋り続けるベアトリーチェの巻き起こした事件は,彼女ではなくその母から語られる対比も印象的だ).4_20191112211401 ベアトリーチェの奮闘にもかかわらず,彼女とは全く関係のない偶然から映画の最後でドナテッラが息子と邂逅する展開も,皮肉だが感動的だ.彼女たちの苦しみの原因は人間の悪意だが,彼女たちの再生のきっかけも人間の善意であることが,この映画の見どころか.
見て損はなし.でもこの邦題はいまいち分からない.
★★★★(★5個が満点)
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2019/11/10

番外:独断的歌舞伎感想文 吉例顔見世大歌舞伎昼の部 研辰の討たれ/関三奴/髪結新三

日記:2019年11月某日
歌舞伎座で「吉例顔見世大歌舞伎 昼の部」を見る.Kabukiza_1911_h_dc6790dd8b970d84313f4531 木村錦花 作・平田兼三郎 脚色・大場正昭 演出.「一、研辰の討たれ(とぎたつのうたれ)」.出演:守山辰次(幸四郎),平井九市郎(彦三郎),平井才次郎(坂東亀蔵),八見伝介(亀鶴),小平権十郎(廣太郎),猿廻し光吉(市村光),高橋三左衛門(寿治郎),吾妻屋亭主清兵衛(橘太郎),中間市助(松之助),湯崎幸一郎(錦吾),粟津の奥方(高麗蔵),宮田新左衛門(竹三郎),平井市郎右衛門(友右衛門),僧良観(鴈治郎).「二、関三奴(せきさんやっこ)」.出演:奴(芝翫),奴(松緑).河竹黙阿弥 作.「三、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう) 髪結新三 白子屋見世先より閻魔堂橋まで」.出演:髪結新三(菊五郎),手代忠七(時蔵),弥太五郎源七(團蔵),下剃勝奴(権十郎),お熊(梅枝),紙屋丁稚長松(丑之助),肴売新吉(橘太郎),車力善八(秀調),加賀屋藤兵衛(家橘),家主女房おかく(萬次郎),後家お常(魁春),家主長兵衛(左團次).
研辰の討たれは,2001年の野田版を勘三郎(当時は勘九郎)で見て以来.武士世界に紛れ込んだ研辰の,卑怯未練な武士ぶりの最後を描く異色のドタバタ狂言.Kabukiza_201911_tokubetsu_m1572337149531 幸四郎は研辰にぴったり,一報の平井兄弟を演ずる彦三郎・亀蔵兄弟も役柄にぴったり.面白かったが,武士世界での出世に執着していた研辰が,何故家老を闇討ちして逐電したか等すっきりしな部分もあり.
関三奴は短い踊りだが,折り目正しく美しい松緑の奴と飲んだくれた芝翫の奴の対比が面白く,楽しかった.
髪結新三はまだまだ元気な菊五郎の新三,左團次の家主,團蔵の弥太五郎源七等いずれも役柄にピタリとはまった好演,安心して楽しめた.橘太郎のカツオ売りの手捌きが出色.梅枝のお熊も素敵だった.
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2019/11/04

番外 独断的歌舞伎感想文:通し狂言 孤高勇士嬢景清

日記:2019年11月某日
国立劇場で「通し狂言 孤高勇士嬢景清(ここうのゆうしむすめかげきよ) 四幕五場.―日向嶋(ひゅうがじま)―」を見る.2019_11kabuki_hon2_omote
西沢一風・田中千柳=作『大仏殿万代石楚』,若竹笛躬・黒蔵主・中邑阿契=作『嬢景清八嶋日記』より.国立劇場文芸研究会=補綴.国立劇場美術係=美術.序幕 鎌倉大倉御所の場,二幕目 南都東大寺大仏供養の場,三幕目 手越宿花菱屋の場,四幕目 日向嶋浜辺の場・日向灘海上の場.主な配役:悪七兵衛景清(中村吉右衛門),源頼朝/花菱屋長(中村歌六),肝煎左治太夫(中村又五郎),仁田四郎忠常(中村松江),三保谷四郎国時(中村歌昇),里人実ハ天野四郎(中村種之助),玉衣姫(中村米吉),里人実ハ土屋郡内(中村鷹之資),和田左衛門義盛(中村吉之丞),俊乗坊重源/花菱屋遣手おたつ(嵐橘三郎),梶原平三景時(大谷桂三),秩父庄司重忠(中村錦之助),景清娘糸滝(中村雀右衛門),花菱屋女房おくま(中村東蔵).
平家の侍大将・悪七兵衛景清は,平家滅亡後も頼朝の命を狙う.大仏落慶供養の東大寺に頼朝を狙い切り込むが,道理を説かれ断念,二度と復讐をしない誓いとして両目を自ら刺し貫く.
景清の娘・糸滝は,3歳の時別れた父が日向国に流されていると知り,花菱屋に遊女として身を売った金を携え父のもとを訪ねるが,景清はなお頼朝からの仕官の誘いを頑なに拒絶して,貧窮の暮らしを続けていた….
男性の意地が女性の無償の愛に覆るという点では,昨晩見たオグリと共通するところもある通し狂言.吉右衛門の熱演に何と言っても引き込まれる.
これに歌六,又五郎,錦之助,雀右衛門,東蔵等が過不足なく一座として好演し,味わいのある舞台.また若手の歌昇,種之助,鷹之資も動き良く好印象だった.
スーパー歌舞伎と対照すると如何にも地味な舞台だが,楽しかった.竹本の出来も素晴らしい.
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2019/11/03

番外 独断的歌舞伎感想文:スーパー歌舞伎II 新版 オグリ

日記:2019年11月某日
新橋演舞場で「スーパー歌舞伎II(セカンド) 新版 オグリ」を見る.Enbujo20191011kkkk2_88f798330d2660989c84
出演:藤原正清後に小栗判官(市川猿之助),遊行上人(中村隼人),照手姫(坂東新悟),小栗一郎(市村竹松),小栗二郎(市川男寅),小栗三郎/山賊(市川笑也),小栗四郎(中村福之助),小栗五郎/山賊(市川猿弥),小栗六郎(中村玉太郎),鬼次/銀鬼少将/商人(市川弘太郎),カメ婆(市川寿猿),金坊(市川右近),大納言の妻/閻魔夫人(市川笑三郎),横山修理太夫/長殿(市川男女蔵),鷹乃/薬師如来(市川門之助),翁(石橋正次),フグ婆/女郎屋女将(下村青),鬼王/赤鬼大将/女郎千早(石黒英雄),横山家継/鬼頭長官(髙橋洋),高倉久麿/黒姫/女郎蒲公英(嘉島典俊),閻魔大王(浅野和之).
2011年に亀治郎の小栗判官を,同じ劇場で早替わり/宙乗りで見たが,今回は小栗判官をかなり大幅に脚色したスーパー歌舞伎II.
1幕目,2幕目は,音響と映像の技術を駆使し鏡を多用した斬新な演出,派手な立ち回りと豪華な群舞によるテンポ速い展開が印象的.3幕目は一転してオグリの苦難と内省の道,照手姫との愛をじっくり描く落ち着いた進行後,遂に大団円がやって来る.
猿之助の圧倒的な存在感と,新悟との心情溢れる演技に感動した.猿之助と遊行上人隼人との二人宙乗りも見事.
閻魔大王を演じた浅野和之も良かった.まことに見応えある舞台だった.
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