独断的映画感想文:ファースト・マン
日記:2019年11月某日
映画「ファースト・マン」を見る.
2018年.監督:デイミアン・チャゼル.
出演:ライアン・ゴズリング(ニール・アームストロング),クレア・フォイ(ジャネット・アームストロング),ジェイソン・クラーク(エド・ホワイト),カイル・チャンドラー(ディーク・ストレイン),コリー・ストール(バズ・オルドリン),クリストファー・アボット(デイヴ・スコット),キアラン・ハインズ(ボブ・ギルルース),パトリック・フュジット(エリオット・シー),ルーカス・ハース(マイク・コリンズ).
人類で初めて月に降り立ったアポロ11号船長:ニール・アームストロングの伝記映画.
映画の冒頭,ヘルメットに覆われたパイロットの顔と,狭い視界の風防から見える激しく揺れる空の映像が続く.ニールは朝鮮戦争にパイロットとして参加したあと大学に戻り,卒業後は政府系の研究所でテスト・パイロットに従事.X-15試験機で大気圏外との往復飛行を繰り返す.
私生活では2番目の子どもカレンを幼くして脳腫瘍で亡くすという悲運に見舞われながら,宇宙飛行士を目指す審査に応募し合格する.ニールは技術力を持つパイロットとして,ジェミニ計画でのドッキング試験とその直後に起こった異常回転の制御に成功する等,成果を挙げていく.
アポロ1号の訓練中に3名の飛行士が火災事故で死亡,これを乗り越えニールはアポロ11号の船長として月への飛行を命じられるが….
アメリカ映画には珍しい寡黙な映画である.
ニールは宇宙パイロットとして人並み外れて心身共にタフな人間だったと思われるが,その内面は極めて複雑だった.カレンの死は長くニールの心に悲哀をもたらした.また開発途上の狭く技術的にも未熟な宇宙船への搭乗は,恐ろしいものだったことは想像に難くない.それを乗り越える思索がニールの内面を形成したのだろうか.
そのニールを,映画は少ない台詞と沈黙の画面で表現していく.暗い廊下を歩いて行くニールの後ろ姿もよく描かれる.長く苦しい行程の果てに遂にニールは月面に到着するが,そこでニールが行った鎮魂の行動には,涙を禁じ得なかった.
最終場面,地球帰還後,隔離されたニールはガラス越しに妻と対面する.何も語らず二人は只目を見交わすが,このシーンも感銘的.ライアン・ゴズリングとクレア・フォイの演技が素晴らしい.
映画は緊張感高く,141分の長尺を息を詰めて見た思い.素晴らしい作品だ.
★★★★☆(★5個が満点)
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