独断的映画感想文:歓びのトスカーナ
日記:2019年11月某日
映画「歓びのトスカーナ」を見る. 2016年.監督:パオロ・ヴィルズィ.
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(ベアトリーチェ),ミカエラ・ラマッツォッティ(ドナテッラ),ヴァレンティーナ・カルネルッティ(ザッパ医師),アンナ・ガリエナ(ルチアーナ),マルコ・メッセーリ(モレッリ). イタリア・トスカーナ地方の自然に恵まれた司法精神療養施設.ここで女王のように君臨するベアトリーチェは猛烈なおしゃべり,上流階級出身で「伯爵夫人」を名乗るが,極端な虚言癖の持ち主.詐欺罪で有罪判決を受けここに収用されている.
新参のドナテッラは息子と無理心中を図ったシングルマザー,重い鬱に苦しむ無口な女性.
何故かドナテッラに興味を持ったベアトリーチェは彼女と同室になり,ベアトリーチェの凄まじいおしゃべりに辟易しながらドナテッラもベアトリーチェと行動を共にする.ひょんなことから所外作業の帰路まんまと脱走することができた二人,破天荒な逃走を重ねるが,ドナテッラの望みは養子に出された息子に会うこと只そのことのみだった…. 一風変わった取り合わせのコンビのドタバタ風逃走劇だが,抱える問題は相当重い.その問題は映画の後半にいたって次第に詳らかになる(ドナテッラが重い口を開いて自分の起こした事件を訥々と語るのに対し,奔流のように喋り続けるベアトリーチェの巻き起こした事件は,彼女ではなくその母から語られる対比も印象的だ).
ベアトリーチェの奮闘にもかかわらず,彼女とは全く関係のない偶然から映画の最後でドナテッラが息子と邂逅する展開も,皮肉だが感動的だ.彼女たちの苦しみの原因は人間の悪意だが,彼女たちの再生のきっかけも人間の善意であることが,この映画の見どころか.
見て損はなし.でもこの邦題はいまいち分からない.
★★★★(★5個が満点)
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