独断的映画感想文:バイス
日記:2020年2月某日
映画「バイス」を見る.
2018年.監督:アダム・マッケイ.
出演:クリスチャン・ベイル(ディック・チェイニー),エイミー・アダムス(リン・チェイニー),スティーヴ・カレル(ドナルド・ラムズフェルド),サム・ロックウェル(ジョージ・W・ブッシュ),タイラー・ペリー(コリン・パウエル),アリソン・ピル(メアリー・チェイニー).
ジョージ・ブッシュ大統領の副大統領を務めた,ディック・チェイニーの政治活動を描いたブラック・コメディ.コメディと銘打っているが笑えるところは皆無.
ディックは大学在学中から議会のインターンシップに採用されたことを足がかりに,ラムズフェルド議員のスタッフとなり政治の世界に足を踏み入れる.ニクソン政権でラムズフェルドの下僚として働いたが,その後フォード政権,ブッシュ(シニア)政権で閣僚を歴任した.
ジョージ・ブッシュが共和党の大統領候補となった時,副大統領候補にオファーされたが辞退し,副大統領検討委員会の委員長となるも,適任者がいないとの理由で結局自分が副大統領候補となる.その後9.11アメリカ同時多発テロ事件からイラク侵攻に至る過程で,ジョージ・ブッシュ大統領に代わり強硬な政策を遂行した….
ジョージ・ブッシュに副大統領に誘われたときのチェイニーの行動の描写が印象的.ジョージ・ブッシュを,自分に副大統領候補になって欲しいと懇請するところまで追い込んでいくチェイニーの駆け引きが,チェイニーの得意な川釣りの針の動きを挿入しながらじっくり描かれる.この未経験な大統領の下で副大統領になることで,何を獲得できるかがチェイニーには見えていたのだろう.
結局副大統領になったチェイニーは,「戦時下には大統領は議会・司法を越えて全ての権限を握る」という特異な憲法解釈に基づいて,軍産複合体の利益に自分も与りながらアメリカと世界を混沌の中に突き落とした.最凶の副大統領と呼ばれた所以である.
映画の見どころは,このチェイニーの所業を冷静に描いていく映像の力と,チェイニーに扮するクリスチャン・ベイルのメイクアップだろう.恐ろしい内容の映画だが,チェイニーは未だ生きている.
★★★★(★5個が満点).
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