独断的映画感想文:希望の灯り
日記:2020年3月某日
映画「希望の灯り」を見る.
2018年.監督:トーマス・ステューバー.
出演:フランツ・ロゴフスキ(Christian Gruvert),ザンドラ・ヒュラー(Marion Koch),ペーター・クルト(Bruno),アンドレアス・レオポルト(Rudi),ミヒャエル・シュペヒト(Klaus),ラモナ・クンツェ=リブノウ(Irina).
ライプツィヒ近郊にある大型スーパーマーケット,27歳の無口なクリスチャンは新入職員として飲料部の在庫管理に配属され,ブルーノに仕事を教わることになる.ブルーノ等古参職員は,東独時代にそこが物流センターだったときからの同僚,皆クリスチャンには親切だ.
菓子部で働くマリオンは年上の既婚女性,クリスチャンはマリオンに惹かれていく.少年時代に悪い仲間と付き合い刑務所経験もあるクリスチャン,前職の建設現場では上司に侮辱を受け,相手を殴ってクビになった.
フォークリフトの運転にも慣れ次第に職場に溶け込んでいくクリスチャン,マリオンとも親しくなったように見えたが,或る日からマリオンは姿を消す.失望したクリスチャンは,また悪い仲間と酒に溺れる日々を過ごすが….
このマーケットの労働者の日常はまことに単調だ.決まった時間に始業し閉店後の作業を終えて深夜に終業する.バスで帰宅するクリスチャン,そのアパートは満足に家具もなく飾り気もない一人住まいだ.
アウトバーン脇のブルーノの家に誘われて飲みに行くが,その古い戸建ての台所は古びたタイル張りの殺風景な部屋で,そこで二人は煙草を吸いながら只酒を飲む.ライプツィヒの豊かとは言えない労働者の荒涼たる生活が淡々と描かれる.この荒涼の中に絶望しか見いだせないものもいる.では「希望の灯り」とは何か?クリスチャンとマリオンとの交流の大切さが自ずと浮かび上がる.
ブルーノは,フォークリフトの運転時に「海の音」が聞こえると言っていた.マリオンとクリスチャンが,二人でその音に耳を傾けるラストシーンは印象的.寡黙で単調だが,緊張感が維持され見応えのある映画.★★★★.
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