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2020年7月に作成された記事

2020/07/20

独断的映画感想文:無頼漢

日記:2020年7月某日
映画「無頼漢」を見る.1_20200809211601
1970年.監督:篠田正浩,脚本:寺山修司.
出演:仲代達矢(片岡直次郎),岩下志麻(三千歳),小沢昭一(丑松),丹波哲郎(河内山宗俊),渡辺文雄(森田屋清蔵),米倉斉加年(金子市之丞),市川翠扇(おくま),芥川比呂志(水野越前守),中村敦夫(松江出雲守),太地喜和子(浪路),山本圭(三文小僧).
天宝六歌仙の話を軸とした,寺山修司脚本の長編映画.
いかにも寺山といった内容で,今となっては面白くもなんともない,過去の遺物を見る思い.
俳優は丹波哲郎がさすがの存在感だが,仲代達也はもっと若々しくて直情的であるべき直次郎を,いやに癖のある演技で演じ,しらける思い.50年前の人気はどうだったのか,その時代は通用したのだろうか?
★★(★5個が満点).
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2020/07/15

独断的映画感想文:夜汽車

日記:2020年7月某日
映画「夜汽車」を見る.0_20200809210901
1987年.監督:山下耕作.
出演 十朱幸代(岡崎露子),秋吉久美子(岡崎里子),萬田久子(むら咲の蔦江),白都真理(花勇),新藤恵美(お辰),速水典子(牡丹),水野久美(政代),小林稔侍(梵天の信次),遠藤太津朗(百鬼勇之助),丹波哲郎(田村伊三郎),津川雅彦(溝上昇),萩原健一(田村征彦).
昭和10年,夜汽車で故郷高知に帰る露子.14年前妹を産んで母は死に,露子は父に山海楼の芸子に売られる.ところが父はその日のうちに博奕でその金を使い果たし,喧嘩を吹っ掛けて命を落とす.露子は妹を里子に出し,借金と妹の養育費を稼ぐために,日本中旅をして廻る.
高知に帰った露子は妹・里子を引き取り,山海楼の芸子勤めに復帰するが,そこで客の征彦と知り合い深い仲となる.征彦は田村組の跡取りながらやくざ稼業を嫌い,事業を立ち上げて大陸に渡る夢を見ていた.1_20200809210901
ところが里子が結核を発病,征彦はその療養費を作ろうと汚職役人を強請り,そのため刺客に襲われ相手を刺して刑務所に入る.露子は再び借金を背負って全国を廻る旅に出る.
幸い里子の結核は寛解し退院するが,征彦が世話してくれた新居で,里子は征彦のものになった.旅から帰った露子はその事実を知り,二人の住む家を飛び出した….
これでまだ映画は前半.宮尾登美子の重厚な物語は延々と続く.演技陣も豪華で,萩原健一がきちんとした演技でしょうもないやくざ者をしっかり演じた.2_20200809210901
特に十朱幸代は心身ともに充実した演技で,秋吉久美子とともに一人の男を愛した姉妹の葛藤を好演.終盤の人力車上のシーンで,傷ついた露子と病身の里子が語り合う,6分近い長回しの場面は,感銘的である.
★★★★(★5個が満点).
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2020/07/12

独断的映画感想文:マイ・ブックショップ

日記:2020年7月某日
映画「マイ・ブックショップ」を見る.1_20200713214801 2018年.監督:イザベル・コイシェ.
出演:エミリー・モーティマー(フローレンス・グリーン),ビル・ナイ(エドモンド・ブランディッシュ),パトリシア・クラークソン(ガマート夫人),オナー・ニーフシー(クリスティーン).
イギリスの海辺の田舎町.フローレンスは,16年前死んだ夫との夢であった本屋を,長年空き家だった「オールドハウス」という店を借りて開くことにする.銀行の融資は断られたが,フローレンスは海洋少年団の子供たちに手伝ってもらい,利発な小学生クリスティーンを助手に雇って,店をオープンする.2_20200713214801 しかし地元の有力者ガマート夫人は,オールドハウスを「芸術センター」にするという企画を温めていたため,フローレンスに本屋は別のところで開くよう求めるが断られる.
町で唯一の読書家といわれるブランディッシュ氏には,見計らいで本を届けるが,ブランディッシュはフローレンスの選択が気に入り,顧客となって「ロリータ」発売時にも意見を寄せてくれる.(このことで映画は1955年あたりを舞台にしていることがわかる).「ロリータ」がベストセラーになったこともあり,本屋は思いのほか好調な滑り出しとなったが,ガマート夫人はオールドハウスを奪う夢を諦めていなかった….3_20200713214801 ガマート夫人は小学校に「視学官」を送りこみ,放課後に児童が働くのは問題があるとして,クリスティーンのアルバイトを止めさせる.町に2軒目の本屋を知人に開設させる.甥を使って,町に歴史的建造物は町が強制収容できる条例を作らせ,「オールドハウス」にそれを適用させる.
有力者は狡猾で町の人々はしたたかだ.追い詰められていくフローレンス.ブランディッシュとクリスティーンはフローレンスのために動こうとするがその結果は….6_20200713214801 淡々とした物語が美しい海辺の町で展開する.俳優たちはそれぞれに素晴らしい存在感で,その演技を味わうのが楽しい.
それに加えて素晴らしい本たち‼ブランディッシュが手にするブラッドベリの「華氏451度」や「火星年代記」,「タンポポのお酒」も入荷する.それと,店を温めるのはあの懐かしい石油ストーブ,アラジンのブルーフレームヒーターだ.このストーブは実は映画でそれなりの役割を果たす.この映画はそういう懐かしさをあちこちで見出す映画だ.4_20200713214801 映画の語り手はあのジュリー・クリスティー.彼女の声が誰なのかもこの映画のオチの一つ.最後の画面はある現代のブックストアだが,そこに何気なくこの映画の原作本が置かれているのもおかしい.5_20200713214801 映画の持ついろいろな引出しを楽しめる,映画らしい映画.★★★★(★5個が満点).
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2020/07/09

独断的映画感想文:MOTHER マザー

日記:2020年7月某日
映画「MOTHER マザー」を見る.1_20200709173501
2020年.監督・脚本:大森立嗣.
出演:長澤まさみ(三隅秋子),阿部サダヲ(川田遼),郡司翔(周平 幼少期),奥平大兼(周平 少年期),夏帆(高橋亜矢),皆川猿時(宇治田守),仲野太賀(赤川圭一),木野花(三隅雅子).4_20200709173501
山寺香の著作「誰もボクを見ていない:なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか」を原案とする映画.
三隅秋子はシングルマザー.小学生の周平には父親から養育費を取っているが,自身は働かず男を作っては遊興し,親戚知人から借金しまくっている.新しい男川田遼とはラブホテルで暮らし,周平は学校にも行けず,秋子のために借金の調達に従事する.3_20200709173501
妊娠を機に川田に捨てられた秋子は,周平を実家への借金申込みに送り込むが….
およそ母親としての役割は果たせず,享楽的に過ごす一方で,周平との間に極めて強い絆を築いている秋子.周平も母親を慕い,秋子のために役に立とうと努力する.5_20200709173501
その後妹・冬華が生まれ,路上生活を交えて暮らしてきた秋子たちの5年後,一時は母子寮に部屋を得て,周平もフリースクールに通える様になるが,彼らを探していた川田がその一部屋に転げ込んでくる.
川田は遊興費をブラック金融で調達し,その結果秋子たちは母子寮から逃げ出さざるを得なくなる.どこまでもダメな母親に従い,働きながら妹の世話もする周平の,秋子への強い依存が心に残る.2_20200709173501
映画は緊張感に満ち,最後まで間断するところがない.長澤まさみと阿部サダヲの,ロクなものではないのに人を脅し上げるときだけ大声で強気に出る悪党ぶりや,弱気な時は子供にもすがるその演技は,それぞれ見応えあり.ただし,殺人に至る過程での母子双方の緊迫感は,やや物足らなかった.
ラストシーンの秋子の頑なでこわばった表情が,秋子と周平の救いのなさを告げていて,印象的.
★★★☆(★5個が満点).
なお,原案が描いている2014年に起こったこの殺人事件は,自分が3月に読んだ,葉真中顕の小説「ブルー」でモデルにされた事件と同一と思われる.そのため,原案の著作は未読だが,映画自体には強い既視感があった.
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2020/07/08

独断的映画感想文:ひろしま

日記:2020年7月某日
映画「ひろしま」を見る.1_20200709180001
1953年.監督:関川秀雄.製作会社:日教組プロ.
出演:岡田英次(北川先生),月丘夢路(米原先生),加藤嘉(遠藤秀雄),山田五十鈴(大庭みね),薄田研二(仁科博士).
被爆後7年がたった広島のある高校,担任北川の授業中倒れた大庭みち子は,そのまま白血病で入院する.同じクラスの遠藤幸夫は叔父夫婦に引き取られ,夜はキャバレーで働きながら学校に来ていたが,今は辞めてパチンコに没頭しているという.
あの日,大庭みち子の母・みねは自宅で被爆,姉・町子は勤労奉仕中被爆し,米原先生らと逃げる途中力尽きて死んだ.弟は保育園で被爆し黒焦げの死体となった.母とみち子は弟の遺体とともに逃げるが,途中の海上で母も息を引き取る.
遠藤秀雄は自宅の下敷きになった妻が焼死するのを助けられず,その後長男一郎を苦心の末見つけ出すが,一郎はすでに亡くなっていた.自らも死に瀕している病床に,疎開先から両親を探しに来た次男・幸夫と長女・洋子がやってくるが,すでに秀雄はこと切れていた….
1945年8月6日の広島を中心に,被爆の実態を圧倒的な迫力で描く.ただ被爆当日の惨状を描くだけでなく,大庭家・遠藤家を中心とした人々のドラマを語ることにより,緊張感あふれる物語の見応えある映画となった.大庭みち子は白血病で亡くなるが,遠藤幸夫は苦しみながらも生きる道を模索していく.2_20200709180001
ラストシーンでは,原爆忌に広島の街路から溢れ出るように原爆ドームに向かう,幾万幾千の人々の列,そこに重なって浮かび上がる死んだ人々の群れ,川で死んだ米原先生達,海で死んだ大庭みね達,その他名前もわからない人々が,立ち上がりこちらに向かって歩き出す.まことに印象的なシーンだ.
★★★★(★5個が満点).
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