独断的映画感想文:マイ・ブックショップ
日記:2020年7月某日
映画「マイ・ブックショップ」を見る. 2018年.監督:イザベル・コイシェ.
出演:エミリー・モーティマー(フローレンス・グリーン),ビル・ナイ(エドモンド・ブランディッシュ),パトリシア・クラークソン(ガマート夫人),オナー・ニーフシー(クリスティーン).
イギリスの海辺の田舎町.フローレンスは,16年前死んだ夫との夢であった本屋を,長年空き家だった「オールドハウス」という店を借りて開くことにする.銀行の融資は断られたが,フローレンスは海洋少年団の子供たちに手伝ってもらい,利発な小学生クリスティーンを助手に雇って,店をオープンする. しかし地元の有力者ガマート夫人は,オールドハウスを「芸術センター」にするという企画を温めていたため,フローレンスに本屋は別のところで開くよう求めるが断られる.
町で唯一の読書家といわれるブランディッシュ氏には,見計らいで本を届けるが,ブランディッシュはフローレンスの選択が気に入り,顧客となって「ロリータ」発売時にも意見を寄せてくれる.(このことで映画は1955年あたりを舞台にしていることがわかる).「ロリータ」がベストセラーになったこともあり,本屋は思いのほか好調な滑り出しとなったが,ガマート夫人はオールドハウスを奪う夢を諦めていなかった…. ガマート夫人は小学校に「視学官」を送りこみ,放課後に児童が働くのは問題があるとして,クリスティーンのアルバイトを止めさせる.町に2軒目の本屋を知人に開設させる.甥を使って,町に歴史的建造物は町が強制収容できる条例を作らせ,「オールドハウス」にそれを適用させる.
有力者は狡猾で町の人々はしたたかだ.追い詰められていくフローレンス.ブランディッシュとクリスティーンはフローレンスのために動こうとするがその結果は…. 淡々とした物語が美しい海辺の町で展開する.俳優たちはそれぞれに素晴らしい存在感で,その演技を味わうのが楽しい.
それに加えて素晴らしい本たち‼ブランディッシュが手にするブラッドベリの「華氏451度」や「火星年代記」,「タンポポのお酒」も入荷する.それと,店を温めるのはあの懐かしい石油ストーブ,アラジンのブルーフレームヒーターだ.このストーブは実は映画でそれなりの役割を果たす.この映画はそういう懐かしさをあちこちで見出す映画だ. 映画の語り手はあのジュリー・クリスティー.彼女の声が誰なのかもこの映画のオチの一つ.最後の画面はある現代のブックストアだが,そこに何気なくこの映画の原作本が置かれているのもおかしい. 映画の持ついろいろな引出しを楽しめる,映画らしい映画.★★★★(★5個が満点).
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