独断的映画感想文:テルアビブ・オン・ファイア
日記:2020年11月某日
「テルアビブ・オン・ファイア」を見る. 2018年.ルクセンブルク/フランス/イスラエル/ベルギー.監督:サメフ・ゾアビ.
出演:カイス・ナシェフ(サラーム),ルブナ・アザバル(タラ/ラヘル),ヤニブ・ビトン(アッシ),マイサ・アブドゥ・エルハディ(マリアム),サリーム・ダウ(アテフ),ユーセフ・スウェイド(イェフダ). パレスチナのTV局で,ヘブライ語がしゃべれることで演出助手に採用された,脚本家バサムの甥サラーム.自宅のエルサレムから毎日撮影所に通うが,イスラエルの検問所でテロリストと誤解され司令官アッシの取り調べを受ける.
人気ドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」の脚本を持っていたおかげで誤解は解けるが,アッシに脚本家と誤解され,プロットにアッシのアイディアを採用するよう強要される.やむなく受け入れ撮影所に戻ったサラーム,ところがアッシのアイディアによるサラームの提案が採用され好評,サラームは脚本助手に昇格する. おかげでサラームは行き詰っていた恋人マリアムとの仲も復活するが,今度は主演のフランス人女優タラからも筋書き変更の依頼を受けたり,アッシのイスラエル寄りのアイディアが身内から批判されたり.挙句はアッシの機嫌を損ね,IDカードを取り上げられて自宅にも戻れなくなる.追い詰められたサラームは…. イスラエル生まれのパレスチナ人監督が,欧米とイスラエルからの出資・公的補助を受けて製作したユニークなコメディ.ドラマの内容は,パレスティナの女性工作員がイスラエル将校から情報を取得しようとして,恋に落ちる(そのふりをする)というもの.
アッシは本当に恋に落ち結婚するという路線を主張し,TV局側はそれに反発する.サラームは間に立って往生する.
パレスティナTV局のこのドラマを,イスラエル・パレスティナ双方の家庭で夢中になって見ているという設定自体が面白い.最後の思いがけない結末は後味が良かった. イスラエルとパレスティナという不倶戴天の敵同士という先入観が,別な観点から崩される映画,一方でパレスチナ人の苦渋の現実や歴史も垣間見え,印象深い作品である.
★★★★(★5個が満点)
DVDに収載されている東京国際映画祭で来日した際の監督のインタビューは,必見.
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