独断的映画感想文:影裏
日記:2021年2月某日
映画「影裏」を見る.
2020年.監督:大友啓史.
出演:綾野剛(今野秋一),松田龍平(日浅典博),筒井真理子(西山),中村倫也(副島和哉),平埜生成(清人),國村隼(日浅征吾),永島暎子(鈴村早苗),安田顕(日浅馨).
沼田真佑の芥川賞受賞作が原作.岩手に異動となって2年目の今野秋一,唯一親友となった日浅と酒を飲み,釣を楽しむ.しかし日浅は突然退社し,再び彼と会ったのは4ヶ月後,日浅は冠婚葬祭業の契約社員となっていた.日浅とのつき合いは旧に復するかと見え,互いの位置関係の変化から微妙なぎごちなさを含む様になる.一方,今野にはかって2年付き合った福島という恋人があった.2011年3月11日,釜石に出張していた日浅はそのまま消息を絶つ.日浅の親族を訪ねた今野は,思いがけない日浅の影の一面を知ることになる….
原作の短編は予想外の長尺映画となった.しかし描かれる岩手の自然,山河は誠に美しい.演じる俳優もその実力をいかんなく発揮し,実に見応えあり.特に松田龍平は日浅というとらえどころのない人物を絶妙に表現し,綾野剛は陰影ある今野をリアルに演じて印象的.
今野がゲイであることは,原作ではそれほどはっきりと描いてはいなかったように思うが,本作では物語の結末はそこに着地する.それはそれで納得できる.親密な時間を過ごした今野と日浅,にもかかわらず,お互いにその影の部分を見せずに別れることになった.その物語は心に残る.
★★★★(★5個が満点).
人気ブログランキングへ
コメント