独断的映画感想文:提督の艦隊
日記:2021年2月某日
映画「提督の艦隊」を見る. 2015年.監督:ロエル・レイネ.
出演:フランク・ラマース(ミヒール・デ・ロイテル),サネ・ランゲラール(アンナ・デ・ロイテル),バリー・アトスマ(ヨハン・デ・ウィット),チャールズ・ダンス(チャールズ2世),ダニエル・ブロックルバンク(チャンセラー),ルトガー・ハウアー(トロンプ提督). 17世紀の英蘭戦争に活躍した,オランダ艦隊の名提督:ミヒール・デ・ロイテルの活躍を描く.
1653年のスヘフェニンゲンの海戦でトロンプ提督を失ったオランダ海軍,政権を握った共和派のヨハン・デ・ウィット首相は,トロンプの信頼厚かったミヒールの提督就任を懇望する.ミヒールは逡巡した後就任を承諾し,首相ヨハンの兄コルネリウスの協力で,オランダ海軍の近代化に乗り出す. 1665年の第2次英蘭戦争には提督として臨み,1666年の4日海戦で勝利,1667年にはイギリス艦隊の母港テームズ川口チャタムに夜襲をかけ,イギリス艦隊に壊滅的打撃を与える.しかし1672年のルイ14世のオランダ侵攻に際し,危機感のもとウイレム3世がオランダ総督に就任,王党派はこの時とばかりに民衆を扇動,政敵デ・ウィット兄弟はおびき出され,暴徒に惨殺される….
あまり見たことのないオランダの映画,この映画の特徴は2つ.一つはこの時代の欧州の政治状況の複雑さである.この時代の欧州は国民国家は成立しておらず,国家と王権は別のカテゴリーに属す.ウイレム3世はハプスブルグ王家の係累で,オランダがフランスに侵略されたとき,真っ先にやったことは自国の共和派の殲滅だった.その後ウィレム3世は英国王ウィリアム3世となる.こういう事情はヨーロッパ人には先刻承知のことなのだろう.
もう一つは稀にみる大航海時代の艦隊決戦の映画だということ.砲弾飛び交う中,大型帆船の帆と舵を操り,信号旗を掲げて艦隊を指揮する現場のシステムは,並大抵のものではない.映画はその迫力を忠実に伝えて,誠に見応えあり.
いずれにしろこのデ・ロイテル提督は素晴らしい人物だったようだ.映画の終盤,ウィレム3世の命令でスペイン艦隊応援のため地中海でフランス艦隊と戦った時,デ・ロイテル提督は少数の艦船で突撃し,壮烈な戦死を遂げた.提督戦死の黒旗を掲げたオランダ艦隊旗艦に対し,フランス艦隊は空砲を発射,将兵が艦上で敬礼して名将デ・ロイテルへの弔意を表した.このシーンも感銘的だ.各シーンの緊張感高く,強烈な印象を残す映画.★★★★(★5個が満点).
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