独断的映画感想文:永遠の門 ゴッホの見た未来
日記:2021年3月某日
映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」を見る.
2018年.監督:ジュリアン・シュナーベル.
出演:ウィレム・デフォー(フィンセント・ファン・ゴッホ),ルパート・フレンド(テオ・ファン・ゴッホ),マッツ・ミケルセン(聖職者),マチュー・アマルリック(ポール・ガシェ医師),エマニュエル・セニエ(ジヌー夫人),オスカー・アイザック(ポール・ゴーギャン).
パリで弟テオの支援のもと画家として制作に励むゴッホ.しかしパリでの画家同士の付き合いも彼には苦痛で,パリの寒さも身体を蝕む.唯一親交を得たゴーギャンは,彼に南の太陽を求めてアルルに行けと勧める.
アルルに居を構えたゴッホは,アルルの風景に癒されるが,地元の人間とは衝突が絶えない.そこに待ち兼ねたゴーギャンがやってきて,二人は情熱的な交友と画作に没頭する.しかしゴーギャンも地元の人間関係に悩まされ,パリで一定の評価を得たことでアルルを離れることになる.絶望したゴッホは自らの耳を切り,病院に収容された….
ゴッホは子供の時から好きである.1957年公開の監督:ヴィンセント・ミネリ・主演:カーク・ダグラスの「炎の人ゴッホ」の予告編を見た記憶があるが,この映画は怖いシーンがある(多分耳切りのことだろう)ということで,親に見せてもらえなかった.
本作の特徴は,ゴッホの主観に極力寄り添った映像・描写の映画であることだ.そのため手持ちカメラの手振れ映像や画面の下半分がぼやけたシーン(意図は良く判らないがゴッホの視点なのだろう)が多用されて,悩まされる.画面の人物が喋っているとは思えない幻聴のような声も聞こえて,見ているシーンが現実なのかどうか判らなくなる場面も多い.
それにもかかわらずこの映画は,自身の画家としての才能にゆるぎない信念を持ち,一方で意図せざる意識の混乱に恐れを抱くゴッホの心情を,まざまざと描写して誠に感銘的だ.
サン=レミ療養所での療養を終えた時,聖職者と交わした長い会話も印象深い.画家になる前は父のあとを継いで牧師でもあったゴッホは,問われるまま,神は自分を送る時代を間違えたのだと言う.神に間違いがあるのかと問い返す聖職者に対し,ゴッホは自分は未来の人々のために絵を描いているのではないか,と答える.この映画はこういう点では,ある種のファンタジーかもしれない(例えば,ゴッホ自身の人間的不品行については全く触れられていない).
それでも映画として一見の価値あり,見て後悔なし.俳優はウィレム・デフォーがさすがの好演,彼を看取ったガシェ医師役のマチュー・アマルリック(この人も007からコメディまでいろいろな映画で会う)が魅力的だった.
★★★★☆(★5個が満点)
人気ブログランキングへ
コメント