独断的映画感想文:プライベート・ウォー
日記:2021年4月某日
映画「プライベート・ウォー」を見る.
2018年.監督:マシュー・ハイネマン.
出演:ロザムンド・パイク(メリー・コルヴィン),ジェイミー・ドーナン(ポール・コンロイ),トム・ホランダー(ショーン・ライアン),スタンリー・トゥッチ(トニー・ショウ).
映画の冒頭,果てしなく続く廃墟の街の俯瞰.
メリー・コルヴィンはロンドンに本拠を置くサンデータイムズの記者,戦場取材を専門とする.2001年,スリランカのタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)の取材時に,政府軍の攻撃に巻き込まれ負傷,左目を失明する.以来彼女は,左目にアイパッチをつけるようになる.
2003年,イラクに入国した彼女は,カメラマン・ポールとチームを組み,米軍の庇護下を離れ独自の取材を行う.イラク軍の検問をかいくぐり,フセインに殺され埋められた人々の亡骸の発掘現場を取材する.
2011年には内戦下のリビアに渡り,ポールと共にカダフィ大佐のインタビューに成功,その後殺害されたカダフィの遺体の置かれた現場も取材する.2012年,内戦中のシリアにポールと共に入国,2月21日政府軍包囲下のホムスで,反政府勢力側からの現場レポートの世界中継に成功するが….
どう目すべき戦場ジャーナリスト:メリー・コルヴィンの活動を描く.
彼女の活動のすばらしさは,命をかけて戦場のただなかに飛び込むことだけでなく,そこで出会った人々にに勇気をもって厳しい質問をぶつけることだ.LTTEの指導者には,LTTEの支援物質横領の疑いについて切り込む.カダフィ大佐には反対派市民の大量殺害について追及する.
一方で,映画は彼女がPTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しむ姿,アルコールと煙草への耽溺,一夜限りのセックスをも描く.もがき苦しみながらも戦争の報道に命をかけるメリー・コルヴィンを,ロザムンド・パイクが好演.
映画の冒頭に描かれる廃墟は,ホムスの市街であった.そしてそれは彼女の終焉の地でもある.政府軍の攻撃に倒れた彼女の亡骸から引いていくカメラが,冒頭と同じ映像につながるラスト・シーンは印象的.重い映画だが一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点).
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