独断的映画感想文:パーフェクト・センス
日記:2021年4月某日
映画「パーフェクト・センス」を見る.
2011年.監督:デヴィッド・マッケンジー.
出演:ユアン・マクレガー(マイケル),エヴァ・グリーン(スーザン),ユエン・ブレムナー(ジェームズ),スティーヴン・ディレイン(スティーブン).
感染症学者のスーザン,恋に破れ荒れているさなか,奇病の患者が運ばれる.突然襲う悲嘆の発作のあと,嗅覚が無くなったと言う.同症状の患者が散発,感染症が疑われたがその証拠はない.やがてスーザン自身を襲う悲哀の発作,顔見知りのシェフ:マイケルに助けられるが,翌朝嗅覚は失われていた.
その現象は世界中同時に発現し,マイケルは嗅覚に依存しないメニューの開発に忙殺される.やがて全人類を飢えの発作が同時に襲う.手当たり次第に身近にある食糧食材をむさぼった後では,全ての人の味覚が失われていた.この危機の中で恋に落ちたスーザンとマイケル,しかしその後怒りの発作が人類を襲う.スーザンに悪罵の限りを投げつけたマイケル,しかしその直後人々は聴覚を失う….
2011年の作品だが,コロナ禍の真っただ中にいる我々には極めてリアルなSF映画.まるで黙示録が現実化したような災厄が,人類に次々と襲い掛かる.マイケルとスーザンの恋が一方の軸とはなっているが,それとて物語の進展の前には何の力もない.
当初一時的に嗅覚が失われたと理解されていた災いが,味覚そして聴覚と進むにつれ,絶望的雰囲気が社会を覆っていく.すでに聴覚を失った二人が,視覚を失う前兆として現れた至福の思い,全てを許し愛を渇望する思いに促され,互いを死に物狂いで探し合う終盤のシーンが印象的だ.
何の罪でかはわからないが,人類は滅びるのだろう.しかし視覚を失う直前にお互いを抱きしめた二人は,そこで至高のものを得たのだろうか.今の状況下で心に残る作品,見て損は無し.
★★★★(★5個が満点).
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