独断的映画感想文:そして、私たちは愛に帰る
日記:2021年6月某日
映画「そして、私たちは愛に帰る」を見る.
2007年.ドイツ/トルコ.監督:ファティ・アキン.
出演:バーキ・ダヴラク(ネジャット),トゥンジェル・クルティズ(アリ),ヌルギュル・イェシルチャイ(アイテン),ハンナ・シグラ(スザンヌ),ヌルセル・キョセ(イェテル),パトリシア・ジオクロースカ(ロッテ). ブレーメンに住むトルコ出身のアリは男やもめの年金生活者.馴染みになったトルコ人の娼婦・イェテルに,手当てを払うから一緒に暮らそうと持ち掛ける.トルコにいる娘・アイテンの学費のため申し出を受けるイェテル.同居する息子の大学教授・ネジャットとは心が通い合う.一方,家でも彼女を娼婦扱いするアリに反発するイェテル,激高したアリは彼女を殴って死なせてしまう.イスタンブールのイェテルの葬儀に参列したネジャットは,アイテンの行方を捜そうと教授の職を辞し,ドイツ書店を引き継いで現地にとどまる決意をする. 一方,亡き父と同じ左翼の活動家となっていたアイテンは,当局に追われドイツに逃亡,大学の食堂で知り合ったロッテと愛し合う仲となる.ロッテの協力で母イェテルを探すアイテン,しかし不法滞在で逮捕され,政治亡命は認められずトルコに送還される.ロッテは母・スザンヌの止めるのも聞かずイスタンブールに渡り,偶然知り合ったネジャットの家に下宿して,アイテン救援に没頭する.ようやくアイテンと面会できたロッテ,しかしその日アイテンに依頼された活動を果たそうとして,街角で命を落とす…. この後ネタバレがあります.数奇な運命をたどる3組の家族が,悲劇を乗り越え新しい関係を作っていく物語.アイテンはロッテの死に深い衝撃を受け,スザンヌとの面会で心から詫びる.娘たち世代とは深い溝を感じていたスザンヌも,ロッテの願ったアイテンの救出に心を砕く.ネジャットもスザンヌと話をするうち,父ともう一度会う決心をする. 実はイェテルの物語とアイテンの物語は時系列に差があり,更にロッテとネジャットはお互いに相手がアイテンを探していることを知らず,その経過は観客だけが知っているという構造になっている.そのことは映画に運命的なものを感じさせる要素となっている.冒頭のシーンが物語のラストシーンだったという構成も,印象的.背景となるドイツとトルコの関係も興味深い.映画らしい映画,見応え充分.
★★★☆(★5個が満点).
人気ブログランキングへ
コメント