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2021年7月に作成された記事

2021/07/27

番外:独断的歌舞伎感想文 七月大歌舞伎 第一部 あんまと泥棒/蜘蛛の絲宿直噺

日記:2021年7月某日
歌舞伎座で「七月大歌舞伎 第一部」を見る.Kabukiza2107_h_5f5344b8c4ea89b989e583e1d 村上元三 作・演出,石川耕士 演出.「一、あんまと泥棒(あんまとどろぼう)」.出演:あんま秀の市(中車),泥棒権太郎(松緑).「二、蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし) 市川猿之助六変化相勤め申し候」.出演:女童熨斗美,小姓澤瀉,番新八重里,太鼓持彦平,傾城薄雲実は女郎蜘蛛の精(猿之助),平井保昌(松緑),坂田金時(坂東亀蔵),碓井貞光(中村福之助),卜部季武(弘太郎),金時女房八重菊(笑三郎),貞光女房桐の谷(笑也),渡辺綱(中車),源頼光(梅玉).
あんまと泥棒は中車では3回目,松緑では2回目.純情な泥棒が,口八丁のあんまに手玉に取られる物語.渡辺保評で「芝居が一つ足りない」というのは,例えば客の誰もがあんまが嘘をついているのが判っているのに,泥棒だけが判っていないという構造を示すことだろう.それ以外は双方達者な芝居で面白かった.
蜘蛛の絲宿直噺は昨年11月の再演.猿之助が5人6役を早変わりで演じる.今回は亀蔵・福之助の踊りはややもたもたしていたが,笑三郎・笑也の太鼓持ちとの踊りや,梅玉以下の四天王と蜘蛛の精との踊りが素敵.松緑の押し戻しがさすがに立派で,舞台は華やかに終わり,昼前の第一部ながら見応え十分だった.
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2021/07/23

独断的映画感想文:三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実

日記:2021年7月某日
映画「三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実」を見る.1_20210820140001 2020年.監督:豊島圭介.出演:三島由紀夫,芥正彦,木村修,橋爪大三郎,平野啓一郎,内田樹,小熊英二,瀬戸内寂聴.3_20210820140001 1969年5月13日に東大駒場キャンパスで行われた,三島由紀夫と東大全共闘の討論を,TBSの収録映像をもとにドキュメンタリーとして編集した作品.当時の映像に併せ,討論に参加した全共闘学生の現在の姿,現代の文学者,評論家のコメントをまとめた.討論の内容はなかなかに面白い.特に,現在も前衛芸術家として活躍する芥正彦と三島由紀夫の議論の応酬は,双方正確なパンチを繰り出す正統派のボクシングに似て迫力あり.三島由紀夫も,挑発的な言辞や逃げの姿勢は一切見せず,誠実な応答に終始している点は印象的.昨今のネット評論家やネトウヨの品性とは比べ物にならない.歴史的な映像として,見て損は無し.点数は特につけない.2_20210820140001 にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ

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2021/07/21

独断的映画感想文:ノマドランド

日記:2021年7月21日
映画「ノマドランド」を見る.1_20210722230101 2020年.監督・脚本:クロエ・ジャオ(制作も).
出演:フランシス・マクドーマンド(制作も)(ファーン),デヴィッド・ストラザーン(デイブ),リンダ・メイ(リンダ),シャーリーン・スワンキー(スワンキー).2_20210722230101 ネヴァダ州のエンパイアという企業城下町に住むファーン,夫の死後もその街に住み続けたが,企業は倒産し街そのものがなくなってしまう.ファーンはヴァンに思い出の品を積み込んで家を出る.
まずはアマゾンの臨時労働者となり,アマゾンの駐車料でヴァンでの車上生活をする.仲良くなった同僚のリンダ・メイの紹介で,ボブが主催するノマド(遊牧民)生活をする人々の集会「砂漠の集い」に誘われ,ここで多くの仲間を得る.特にパンクのピンチを救ってくれた末期癌患者のスワンキーとは,深い友情で繋がれる.4_20210722230101
ファーンはサウスダコタ州バッドランズ国立公園のキャンプ場で職を得るが,そこにはリンダ・メイ,「砂漠の集い」で知り合ったデヴィッドもいて友情を深め合う.デヴィッドのもとには息子が訪れ,孫も生まれるので実家に帰って欲しいと告げる.デヴィッドはファーンに一緒に来てくれないかと誘うが,ファーンはいずれ行くからと答える.一方ファーンのヴァンが故障し,その修理代を借りるためファーンは実家に住む姉を訪ねることにする….
5_20210722230101 過酷な季節労働に従事しつつも,定住を嫌い車上生活を続ける高齢労働者たちの軌跡を描く映画.ファーンはどうしてノマド暮らしをするのだろうか.

6_20210722230101 一つの答えは,それが自分の性に合っているからか.姉の家に滞在中も,自室のベッドに馴染めずヴァンのベッドで寝るファーン.デヴィッドに告白された時,彼の家族からも好意的に迎えられたのに,やはり出ていったファーン.彼女は大自然の中を放浪することが好きなのだ.
もう一つの答えは,ファーンが死別した夫ボーを心から愛していたからだ.そのことを話す,終盤のボブとの会話のシーンは,感銘的だ.3_20210722230101

アメリカの圧倒的な風景の中,旅するファーンを追う映像が,誠に美しい.バックに流れるピアノを中心とする音楽も素敵だ.そこにふと挿しはさまれるユーモアも,得難い味がある.美しいロードムービーだが,基底にあるノマドの,連帯を求めて孤立を恐れない覚悟が印象的な映画.見て損は無し.
★★★★☆(★5個が満点)
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2021/07/18

独断的映画感想文:パブリック 図書館の奇跡

日記:2021年7月某日
映画「パブリック 図書館の奇跡」を見る.1_20210720095601 2018年.監督・脚本・製作:エミリオ・エステヴェス.
出演:エミリオ・エステヴェス(スチュアート・グッドソン),アレック・ボールドウィン(ビル・ラムステッド),ジェナ・マローン(マイラ),テイラー・シリング(アンジェラ),クリスチャン・スレイター(ジョシュ・デイヴィス),ジェフリー・ライト(アンダーソン),マイケル・K・ウィリアムズ(ジャクソン),ガブリエル・ユニオン(レベッカ・パークス),ジェイコブ・バルガス(エルネスト・ラミレス),チェ・“ライムフェスト”・スミス(ビッグ・ジョージ).
グッドソンはまじめな図書館員,過去には酒とクスリにおぼれホームレスになったこともあるが,本に目覚め立ち直り今は図書館で正職を得ている.彼の勤めるオハイオ州シンシナチ市中央図書館は,一定数のホームレスが(特に冬場は)一日中館内で過ごし,グッドソンも彼らとは顔見知りだ.5_20210720095601
ある冬の日,シンシナチを猛烈な寒波が襲う.シェルターは満杯,シェルターに入れなかった100名ほどのホームレスたちは,閉館時刻が来ても退館しないと宣言して3階に集まる.巻き込まれたグッドソンは,彼らを追い出せば凍死者が出ると考え,彼らと共に3階に立てこもることにする.
3_20210720095601 市警からは交渉人が来て説得にあたるが,次の選挙で市長を狙う検察官・デイヴィスの偏見に満ちたコメントや,TVレポーター・レベッカのセンセーショナルな報道で,グッドソンは精神を病んだ危ない容疑者にされてしまうが….
いくつも公共の機関はあるが,図書館はその中でも特別な存在である.図書館は役所や警察のように市民に命令することはしない一方,市民の知的要請に応え,市民の個人情報を守るためには闘わなければならない(日本の図書館も無論そうである).4_20210720095601 その図書館にホームレスが凍死を避けるために逃げ込んだ時,「公共」はどう動くべきか.この映画はその答えを提示するファンタジーだ.
グッドソンは「公共」はホームレスの側に立つべきだと考える.検察官デイヴィスは,退館時間を破って残ったホームレスは警察力で叩き潰すべきと,躊躇なく考える.交渉人はその間で苦悩する.ではホームレスたちは,どのような結論を出すか.2_20210720095601
ホームレスの側には最終的に図書館長も身を投じるのだ.図書館長の「公共図書館はこの国の民主主義の最後の砦だ」というセリフには,しびれた.TVレポーター・レベッカの電話インタビューに,グッドソンが「怒りの葡萄」の最後のパラグラフを朗読するシーンも素敵.結末には静かな深い感動がある.
手応えある映画,一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点).エミリオ・エステヴェスLove.
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2021/07/17

独断的映画感想文:イーダ

日記:2021年7月某日
映画「イーダ」を見る.1_20210718154501
2013年.監督:パヴェウ・パヴリコフスキ.
出演:アガタ・チュシェブホフスカ(アンナ),アガタ・クレシャ(ヴァンダ),ダヴィッド・オグロドニック(リス),イェジー・トレラ(シモン・スキバ),アダム・シシュコフスキ( フェリクス・スキバ) .4_20210718154501
1962年,ポーランド.孤児として修道院で育てられたアンナ,一生修道生活を送るための修道誓願の時期が近づいている.院長はアンナの唯一の肉親である伯母・ヴァンダに一度会って来るようにと,アンナを送り出す.ヴァンダが自分を引き取ることを拒否していることを知って,アンナは気が進まなかった.2_20210718154501
ヴァンダのもとを訪れると,彼女は酒と煙草に耽溺し,昼間から男と自室で寝ている女性だった.戸惑うアンナにヴァンダは,アンナの本名はイーダ・レベンシュタイン,ユダヤ人であると告げる.彼女を引き取らなかったのも,ユダヤ人であることを明らかにしないためだったと言う.3_20210718154501
イーダの両親は,大戦末期に非業の死を遂げたらしい.イーダとヴァンダは,両親の住んでいた村に車で向かうことになる.イーダの生家はそのまま残っていたが,今は別の人が住んでいる.その住人シモンは,彼の父・フェリクスがイーダの両親をかくまったが,フェリクスは入院中で詳細は判らないと言う.ヴァンダは,イーダの両親を殺したのはフェリクスか,その時預けていたヴァンダの息子も同時に殺したのではないかと,追及する.6_20210718154501
ヴァンダとイーダはその夜村のホテルに泊まり,ホテルのバーでは昼間ヒッチハイクで車に乗せた青年・リスが,サックスを演奏していた.その夜,シモンがイーダのもとに来て,自分が彼らを殺したこと,翌日埋葬場所に案内することを告げた….
大戦中のポーランドの暗黒を描いた映画.ヴァンダは戦中レジスタンスとして戦い,戦後は共産党政権下で検事として働いていた.
ヴァンダから告げられた,過酷な過去の歴史に向き合うイーダの姿が淡々と描かれる.登場人物は寡黙で,説明は映像で行われる映画,モノクロ・スタンダードの画面が,緊張感に満ちている.埋葬の森の暗い情景,放棄されたユダヤ人墓地の荒れ果てた佇まいが痛々しい.5_20210718154501
一方,映画で演奏される音楽はその緊張をわずかに和らげているようで,印象的.ヴァンダが自室で蓄音機で聞くモーツァルトをはじめとするクラシックの曲,リスが演奏するジョン・コルトレーンのジャズ,リスの伴奏で歌手が歌うポップス(1961年サンレモ音楽祭準優勝の「24000のキッス」が懐かしい).ヴァンダの運命,イーダの選択をはじめ,考えさせられることの多い映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点).
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2021/07/15

番外:独断的歌舞伎感想文 七月大歌舞伎第三部 雷神不動北山櫻

日記:2021年7月某日
歌舞伎座で「七月大歌舞伎第三部」を見る.20210715
安田蛙文 作,中田万助 作,奈河彰輔 演出,藤間勘十郎 演出・振付.「通し狂言:雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら) 市川海老蔵五役並びに空中浮遊相勤め申し候」.出演:鳴神上人/粂寺弾正/早雲王子/安倍清行/不動明王(海老蔵),八剣玄蕃(右團次),秦民部(男女蔵,雲の絶間姫(児太郎),八剣数馬/制多迦童子(九團次),小野春風/矜羯羅童子(廣松),錦の前(男寅),小原万兵衛実は石原瀬平/黒雲坊(市蔵),秦秀太郎(門之助),白雲坊(齊入),小野春道(友右衛門),腰元巻絹(雀右衛門),後見(家橘).
歌舞伎座の海老蔵は丸2年ぶり,2年前のこの月,海老蔵は義経千本桜の通しを13役早変わりでやるという奮闘を演じたが,今回は5役.大雑把に言えば序幕を2役の早変わりで演じ,毛抜き・鳴神上人をしっかりやり,大詰めで早雲王子で大暴れの殺陣の後,不動明王になるという構成.
海老蔵の毛抜きと鳴神上人を堪能した.特に大詰めでの早雲王子の殺陣は,加わる黒四天の意気込みも並々ならないものがあって圧巻.花道に立てた梯子上の見得が素晴らしかった.Fireshot-capture-319-wwwkabukibitojp
久しぶりの児太郎と芝のぶ(去年8月のお富さん以来)も出ていてうれしい.しかし全体のバランスは悪く,特に殺陣の後不動明王になる間は長すぎて興醒め.不動明王の空中浮遊もちゃちい.研究の余地あり.
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2021/07/11

独断的映画感想文:コンフィデンスマンJP プリンセス編

日記:2021年7月某日
映画「コンフィデンスマンJP プリンセス編」を見る.1_20210820134001
2020年.監督:田中亮.
出演:長澤まさみ(ダー子),東出昌大(ボクちゃん),小手伸也(五十嵐),小日向文世(リチャード),織田梨沙(モナコ),関水渚(コックリ),前田敦子(鈴木さん),ビビアン・スー(ブリジット・フウ),白濱亜嵐(アンドリュウ・フウ),古川雄大(クリストファー・フウ),滝藤賢一(ホテルの支配人),濱田岳(ユージーン),濱田マリ(ヤマンバ),デヴィ・スカルノ(元某国大統領夫人),石黒賢(城ケ崎善三),生瀬勝久(ホー・ナムシェン),柴田恭兵(トニー・ティン),北大路欣也(レイモンド・フウ),竹内結子(スタア),三浦春馬(ジェシー),広末涼子(韮山波子),江口洋介(赤星栄介).2_20210820134001
シンガポールに本拠を置く財閥:フー一族の当主レイモンドが死去,その遺言状は,長女ブリジット,長男クリストファー,次男アンドリュウを差し置いて,誰も見たことがない隠し子・ミシェルを当主とするというとんでもないものだった.詐欺師ダー子の一味は,スリのヤマンバに仕込まれていた捨て子コックリを救い出し,ミシェルに仕立ててフー財閥に乗り込もうと画策するが….5_20210820134001
豪華な出演陣が,奇想天外な詐欺ネタを次から次へとテンポよく繰り出す.その割には物語は安っぽい感動仕立ての平凡なものという,如何にもフジテレビらしい映画.3_20210820134001
コックリ役の関水渚は,実は広瀬すずではないかと評判,確かにそっくりだ.一方三浦春馬と竹内結子はこの映画の後自死を遂げているし,東出昌大も大スキャンダルに見舞われ,なかなか不吉な映画でもある.
別な方面での話題が多い映画だが,映画自体はエンタメとして平均点.
★★★(★5個が満点).
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2021/07/10

独断的映画感想文:ザ・ファブル

日記:2021年7月某日
映画「ザ・ファブル」を見る.1_20210819171501
2019年.監督:江口カン.
出演:岡田准一(ファブル/佐藤アキラ),木村文乃(佐藤ヨウコ),山本美月(清水ミサキ),福士蒼汰(フード),柳楽優弥(小島),向井理(砂川),木村了(コード),佐藤二朗(田高田),光石研(浜田),加藤虎ノ介(風間),安田顕(海老原),佐藤浩市(ボス).5_20210819171501
桁違いのスキルを持つ殺し屋:ファブル.ボスは殺しをやり過ぎたとの理由で,1年間ファブルと助手のヨウコに大阪で普通人の生活を送るように指示する.その間殺しをしたら,ボスがファブルを殺すというのだ.3_20210819171501
ボスの紹介でファブルは大阪の真黒組・濱田組長に紹介され,若頭・海老原の世話で住居を確保する.気のいい田高田が社長のイラスト事務所でバイトを始めるが,同僚のミサキが海老原の舎弟・小島に脅されAV出演を強要される.そのさなか,真黒組の海老原と対立する幹部・砂川が小島を襲撃する事件が起こり,二人は拉致される.海老原の依頼で小島の救出に向かったファブルだが….4_20210819171501
人気漫画シリーズの実写映画化.岡田准一のアクションはすさまじいが,それ以外は漫画のネタを忠実になぞる物語で,あまり映画的感動は期待しない方が良い.安田顕の海老原がそれなりの存在感あり.2_20210819171501
木村文乃は酒がめちゃくちゃに強く,敵の殺し屋を一蹴りで倒す腕の持ち主という,ニンに合わない役をしていて,それが結構面白い.
★★★(★5個が満点).
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2021/07/09

独断的映画感想文:MORTAL モータル

日記:2021年7月某日
映画「MORTAL モータル」を見る.Mortal1
2020年.監督:アンドレ・ウーヴレダル.
出演ナット・ウルフ(エリック),イーベン・オーケルリー(クリスティン),ペール・フリッシュ(ヘンリク).Mortal2
体に火傷を負い,放心状態で森から街に出てきたエリック.彼をホームレスと思い絡んできた青年は,彼の身体に触れただけで死んでしまう.殺人犯として警察に拘束されたエリック,しかし怯えた様子で何もしゃべらない.警察署長は臨床心理士のクリスティンに彼と面談するよう依頼する.クリスティンの面前でエリックは自分に宿った能力を明らかにするが,それに怯えなかったクリスティンにエリックは心を開く.一方,アメリカ大使館はエリックの存在を知り,エリックがアメリカ国籍であることから介入してくるが….Mortal4
この映画も昨日の「海を駆ける」に続く不思議映画.美しいノルウェーの風景をバックに(カメラがめちゃ綺麗)始まる映画だけに,リアリズムの映画かと思ったら実はアメコミも真っ青の奇想天外映画.新たな存在となったエリックを描くラストシーンは,ハリウッド映画ならここからシリーズ化が始まるかという展開だが,本作はどうなんだろ.Mortal5
★★☆(★5個が満点).
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2021/07/08

独断的映画感想文:海を駆ける

日記:2021年7月某日
映画「海を駆ける」を見る.1_20210819165401
2018年.監督:深田晃司.
出演:ディーン・フジオカ(ラウ),太賀(タカシ),阿部純子(サチコ),アディパティ・ドルケン(クリス),セカール・サリ(イルマ),鶴田真由(貴子).2_20210819165401
インドネシア:アチェの海岸に日本人が打ち上げられる.記憶喪失と診断された男は,ラウ(海)と名付けられ,現地のNGOで働く貴子が預かることになる.貴子の息子で大学生のタカシは,日本語も喋るがインドネシア生まれのインドネシア国籍,カメラマンを目指す.親友の学生・クリス,クリスの幼馴染でバイトしながら記者を目指すイルマとつるんでいる.3_20210819165401
そこに貴子の姪・サチコが父の遺骨散骨のため日本からやってくる.サチコは大学もやめ引きこもっていたらしい.貴子と若者4人に見守られながらラウは暮らすが,彼は日本語もインドネシア語も達者と判る.そのうち彼の周りに不思議な「奇跡」が頻々と起こるようになってくる….
ネタバレあります.不思議な映画である.4人の若者はそれぞれに事情を持つが,映画の中でそれは何も解決されない.4人の若者たちが2組のカップルになる訳でもない.4_20210819165401
またラウの起こす「奇跡」は村の少女の命を救うが,一方で別の村人が(おそらく彼のために)命を落とす.ラウはその見た目に拘わらず,善意の人ではなく,そもそも人ではないらしい.映画のラストシーンでは,まさにラウが「海を駆け」て姿を消す.
狐につままれたような結末で,いくつもの「なぜ??」が残されたまま映画は終わってしまう.しかしその割には最後まで見てしまう緊張感は維持される.インドネシアの風景も美しい.映画を見終わった後の印象は悪くない.この監督の「さようなら*」も不思議な映画だったが,本作もまた別の不思議映画.
★★★☆(★5個が満点).
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2021/07/02

独断的映画感想文:最初の晩餐

日記:2021年7月某日
映画「最初の晩餐」を見る.1_20210704162701
2019年.監督・脚本:常盤司郎.
出演:染谷将太(東麟太郎),戸田恵梨香(北島(東)美也子),窪塚洋介(東シュン),斉藤由貴(東アキコ),永瀬正敏(東日登志),森七菜(東美也子(少女時代)),楽駆(東シュン(青年時代)).
主人公・麟太郎はフリーになって間もないカメラマン,その父で元登山家の日登志が死んだ.麟太郎は福岡に帰り父の葬儀に出席する.姉・美也子も夫と2人の子どもと共に来る.6_20210704163801
親戚が集まって通夜となるが,母・アキコは遺言だからと言って,自分で振舞料理を作り始める.その最初の皿は目玉焼きだった.麟太郎は母と最初に会った日を思い出す.20年前,麟太郎7歳,美也子11歳の時に,アキコは17歳のシュンを連れて嫁いできた.その最初の日にアキコは盲腸で入院,父が作ってくれた料理が目玉焼きだった.アキコが作る振舞料理に次々と思い出は重なる.
シュンと姉弟は次第に打ち解け,アキコも姉弟の心を掴んで,家族が徐々に出来ていった.しかしある日,アキコの前夫が亡くなった知らせが届く.しばらくしてシュンの22歳の誕生日に,日登志はシュンと2人で登山に出掛ける.翌日帰ってきた2人,シュンはその日に家を出て,二度と帰ってこなかった….5_20210704162701
一度崩壊した家族の再生をめぐる物語.麟太郎は恋人がいるが,家族というものに確信が持てず結婚に踏み切れない.美也子も夫をないがしろにする態度が見え,夫婦仲はうまくないようだ.ただ,シュンが出て行った後の15年間,残された4人がどのような状況で暮らしてきたのかは全く触れられず,この点は釈然としない.麟太郎・美也子ともどもアキコに対してはぎごちなく,家族は修復されなかったままに見える.3_20210704163101
シュンが15年前に家を出ていった理由は,最後にアキコから明かされる.また,終盤こつ然と現れたシュンの行動がこの辺を理解するカギの様で,結局大人として家族の崩壊を受けとめ得たシュンと,その時まだ子供だった麟太郎・美也子との違いがあったと思われる.
実力派俳優たちがそれぞれに好演し,その演技はなかなかに見ごたえがある.特に窪塚洋介の存在感は圧倒的だ.音楽も美しく,映画らしい映画だった.4_20210704163101
舞台は福岡,アキコとシュン以外の登場人物は皆福岡弁を喋るが,ロケ地は長野県上田市だそうで,交通案内等に福岡の地名が出ているのはどうやって撮ったのか,興味深い.
★★★☆(★5個が満点).
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