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2021/07/17

独断的映画感想文:イーダ

日記:2021年7月某日
映画「イーダ」を見る.1_20210718154501
2013年.監督:パヴェウ・パヴリコフスキ.
出演:アガタ・チュシェブホフスカ(アンナ),アガタ・クレシャ(ヴァンダ),ダヴィッド・オグロドニック(リス),イェジー・トレラ(シモン・スキバ),アダム・シシュコフスキ( フェリクス・スキバ) .4_20210718154501
1962年,ポーランド.孤児として修道院で育てられたアンナ,一生修道生活を送るための修道誓願の時期が近づいている.院長はアンナの唯一の肉親である伯母・ヴァンダに一度会って来るようにと,アンナを送り出す.ヴァンダが自分を引き取ることを拒否していることを知って,アンナは気が進まなかった.2_20210718154501
ヴァンダのもとを訪れると,彼女は酒と煙草に耽溺し,昼間から男と自室で寝ている女性だった.戸惑うアンナにヴァンダは,アンナの本名はイーダ・レベンシュタイン,ユダヤ人であると告げる.彼女を引き取らなかったのも,ユダヤ人であることを明らかにしないためだったと言う.3_20210718154501
イーダの両親は,大戦末期に非業の死を遂げたらしい.イーダとヴァンダは,両親の住んでいた村に車で向かうことになる.イーダの生家はそのまま残っていたが,今は別の人が住んでいる.その住人シモンは,彼の父・フェリクスがイーダの両親をかくまったが,フェリクスは入院中で詳細は判らないと言う.ヴァンダは,イーダの両親を殺したのはフェリクスか,その時預けていたヴァンダの息子も同時に殺したのではないかと,追及する.6_20210718154501
ヴァンダとイーダはその夜村のホテルに泊まり,ホテルのバーでは昼間ヒッチハイクで車に乗せた青年・リスが,サックスを演奏していた.その夜,シモンがイーダのもとに来て,自分が彼らを殺したこと,翌日埋葬場所に案内することを告げた….
大戦中のポーランドの暗黒を描いた映画.ヴァンダは戦中レジスタンスとして戦い,戦後は共産党政権下で検事として働いていた.
ヴァンダから告げられた,過酷な過去の歴史に向き合うイーダの姿が淡々と描かれる.登場人物は寡黙で,説明は映像で行われる映画,モノクロ・スタンダードの画面が,緊張感に満ちている.埋葬の森の暗い情景,放棄されたユダヤ人墓地の荒れ果てた佇まいが痛々しい.5_20210718154501
一方,映画で演奏される音楽はその緊張をわずかに和らげているようで,印象的.ヴァンダが自室で蓄音機で聞くモーツァルトをはじめとするクラシックの曲,リスが演奏するジョン・コルトレーンのジャズ,リスの伴奏で歌手が歌うポップス(1961年サンレモ音楽祭準優勝の「24000のキッス」が懐かしい).ヴァンダの運命,イーダの選択をはじめ,考えさせられることの多い映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点).
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