独断的映画感想文:ノマドランド
日記:2021年7月21日
映画「ノマドランド」を見る. 2020年.監督・脚本:クロエ・ジャオ(制作も).
出演:フランシス・マクドーマンド(制作も)(ファーン),デヴィッド・ストラザーン(デイブ),リンダ・メイ(リンダ),シャーリーン・スワンキー(スワンキー). ネヴァダ州のエンパイアという企業城下町に住むファーン,夫の死後もその街に住み続けたが,企業は倒産し街そのものがなくなってしまう.ファーンはヴァンに思い出の品を積み込んで家を出る.
まずはアマゾンの臨時労働者となり,アマゾンの駐車料でヴァンでの車上生活をする.仲良くなった同僚のリンダ・メイの紹介で,ボブが主催するノマド(遊牧民)生活をする人々の集会「砂漠の集い」に誘われ,ここで多くの仲間を得る.特にパンクのピンチを救ってくれた末期癌患者のスワンキーとは,深い友情で繋がれる.
ファーンはサウスダコタ州バッドランズ国立公園のキャンプ場で職を得るが,そこにはリンダ・メイ,「砂漠の集い」で知り合ったデヴィッドもいて友情を深め合う.デヴィッドのもとには息子が訪れ,孫も生まれるので実家に帰って欲しいと告げる.デヴィッドはファーンに一緒に来てくれないかと誘うが,ファーンはいずれ行くからと答える.一方ファーンのヴァンが故障し,その修理代を借りるためファーンは実家に住む姉を訪ねることにする….
過酷な季節労働に従事しつつも,定住を嫌い車上生活を続ける高齢労働者たちの軌跡を描く映画.ファーンはどうしてノマド暮らしをするのだろうか.
一つの答えは,それが自分の性に合っているからか.姉の家に滞在中も,自室のベッドに馴染めずヴァンのベッドで寝るファーン.デヴィッドに告白された時,彼の家族からも好意的に迎えられたのに,やはり出ていったファーン.彼女は大自然の中を放浪することが好きなのだ.
もう一つの答えは,ファーンが死別した夫ボーを心から愛していたからだ.そのことを話す,終盤のボブとの会話のシーンは,感銘的だ.
アメリカの圧倒的な風景の中,旅するファーンを追う映像が,誠に美しい.バックに流れるピアノを中心とする音楽も素敵だ.そこにふと挿しはさまれるユーモアも,得難い味がある.美しいロードムービーだが,基底にあるノマドの,連帯を求めて孤立を恐れない覚悟が印象的な映画.見て損は無し.
★★★★☆(★5個が満点)
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