独断的映画感想文:淵に立つ
日記:2021年8月某日
映画「淵に立つ」を見る.
2016年.日本・フランス.
監督・脚本:深田晃司.出演:浅野忠信(八坂草太郎),古舘寛治(鈴岡利雄),筒井真理子(鈴岡章江),太賀(山上孝司),三浦貴大(設楽篤),篠川桃音(鈴岡蛍),真広佳奈(鈴岡蛍〈8年後〉).
父のあとを継いで金属加工工場を経営する利雄には,妻・章江と娘・蛍がいる.利雄は寡黙に仕事に励む中年男,章江と蛍はプロテスタントである.
ある日,利雄の旧友・八坂が工場を訪れる.殺人で11年の刑期を務めた八坂は,そのまま住み込みで利雄の工場で働くことになる.いぶかしむ章江に,八坂は自分の罪を告白,相手の間違いを許せず殺人を犯したが,遺族の悲哀を見て自分の非を悟ったと言い,章江の理解を得る.八坂は礼儀正しく,蛍のオルガンの稽古も親身に見て蛍にもなつかれ,八坂の新生活は順調に見えた.しかしある日,八坂は一家に取り返しのつかない傷を残して,忽然と姿を消す….
一部ネタバレあります.平凡な一家に突然入ってきた八坂,殺人者である彼の不気味さ・恐ろしさがテーマの映画かと思いのほか,利雄,章江にも他者に明かせぬ闇があった.章江が八坂に心を許し抱き合う仲になったことは,観客も見ている.一方,利雄も八坂の殺人現場にいたこと,それだけでなく共犯者と言っていい存在だったことが明らかになる.
八坂が去って8年後,新しく雇われた工員・孝司の登場で物語は大きく回転し,結末に至る.俳優陣は筒井真理子を始め期待通り,中盤で突然利雄に対してだけその本性を見せる八坂のシーン,唐突に自分が殺人の共犯者であることを薄笑いを浮かべながら口走る利雄のシーン,浅野忠信・古館寛治がともにうまい.
上辺を取り繕った正しさを示す白,禍々しい凶事を予告する赤と,色彩の対比も鮮やかで,物語の展開は誠にサスペンスフル.ただしこの結末は自分の共感できるものではない.
★★★☆(★5個が満点).
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