独断的映画感想文:娘は戦場で生まれた
日記:2021年8月某日
映画「娘は戦場で生まれた」を見る.
2019年.監督:ワアド・アル=カティーブ,エドワード・ワッツ.
出演:ワアド・アル カティーブ,サマ・アルカティーブ,ハムザ・アルカティーブ.
アレッポ大学の学生ワアドはジャーナリスト志望.2011年に起きたシリアの反体制運動をきっかけにスマホで取材をはじめ,2012年以降始まったアレッポの戦闘の映像を記録し,世界に配信する.その後,アレッポの反体制派支配地域で医療活動に従事するグループと行動を共にし,青年医師ハムザと結婚する.2015年には娘サマ(アラビア語で“空”の意)が誕生するが,情勢は悪化,ロシア軍機の空爆による市民の死傷が激増し,病院も次々に爆撃されていく.2016年12月,遂にロシア軍からの通告に従って,アレッポから退去するまでの,ワアドが撮った映像を編集したドキュメンタリー映画.
ドキュメンタリーであるから,そこに映し出されるのは本当の死,本当の血,本当の破壊だ.しかしその凄惨な緊迫した映像から,目を離すことはできない.一方でその苦難の中でもおおらかに笑う大人たちや,楽しく遊ぶ子どもたちのシーンに心が安らぐ.
2016年9月からのアレッポ包囲に際し,トルコのハムザの両親を見舞いに行っていたワアドたちが,決死の覚悟で前線を潜り抜けアレッポに帰還するシーン,爆撃で負傷した9か月の妊婦から帝王切開で取り出した新生児が,遂に目を開け産声を上げるシーン等,ドラマティックな場面にも映画としての見応えがある.
シリア内戦の実態を痛烈に訴えると同時に,感銘と感動を与える映画.一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点).
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