独断的映画感想文:家族を想うとき
日記:2021年8月某日
映画「家族を想うとき」を見る.
2019年.監督:ケン・ローチ.
出演:クリス・ヒッチェン(リッキー),デビー・ハニーウッド(アビー),リス・ストーン(セブ),ケイティ・プロクター(ライザ・ジェーン),ロス・ブリュースター(マロニー).
2008年の銀行の取り付け騒ぎで勤務先が倒産,持ち家も失ったリッキーは以後転職を重ね借金も増えた.友人ヘンリーの勧めで宅配業者のドライバーとなることに.主任のマロニーは,個人事業主としてフランチャイズとなるのだと説明し,リッキーは受けいれる.
配送用のバンを購入,頭金の1000ポンドは妻アビーの車を売って調達した.訪問介護の仕事をしているアビーは,訪問先にバスで通うことになる.
リッキーは仕事を始めるが,必需品の「黒い携帯」は,貨物の追跡管理や配達のルート表示をしてくれる一方,ドライバーが時間内に配送を完了しているか,車を2分以上離れていないかを常に監視する.7時から21時まで,週6日間働くハードな勤務が始まった.
思春期の息子セブは学校をさぼりがち,仲間とペイントで街に落書きをする「グラフィティ」に夢中だ.セブの学校から呼び出しがあった午後,リッキーは仕事の都合がどうしてもつかず,アビーのみが学校に行くが,父親が来ないことに怒った校長はセブに停学を課し,リッキーはアビーになじられる.更に大きなトラブルがリッキーを襲うが….
家庭生活と到底両立しないような,激しいフランチャイズ労働の実態を描く映画.セブが万引きで捕まり,親がもらい下げに行かないとセブに前科がついてしまうというピンチ.リッキーはやむなく警察に急行するが,マロニーは激怒してリッキーに厳しい罰金を科す.
丁寧で親密な訪問介護をするアビーも,顧客には好評だが,ルールに縛られ長時間労働を強いられる.移動の時間を惜しんでまだ10歳の娘ライザに電話を掛けるが,ライザは不安が隠せないようだ.両親が長時間労働を強いられ不在な中,思春期のセブとまだ小さいライザはどうなるのか.
この後,リッキーは強盗に襲われ重傷を負い荷物を盗まれるが,受診中のリッキーにマロニーから,保険の効かない貨物の弁償金と「黒い携帯」の修理費用,欠勤で課される罰金の通告が来る.父の受傷に家族の絆は強まるが,リッキーは家族の制止を振り切り,怪我をおして出勤する.
リッキーとアビーを演じる俳優は,本業の役者としても苦労人らしいが,短気だが誇り高いリッキーと,献身的な介護をする慈愛深い母親アビーの演技がいずれも素晴らしい.何ともやりきれない現実を考えさせられる,この監督らしい映画.見て損は無し.
★★★★(★5個が満点)
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