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2021/08/10

独断的映画感想文:シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢

日記:2021年8月某日
映画「シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢」を見る.1_20210810180501 2018年.監督:ニルス・タヴェルニエ.
出演:ジャック・ガンブラン(シュヴァル),レティシア・カスタ(フィロメーヌ),ベルナール・ル・コク(オーギュスト),ナターシャ・リンディンガー(ガランス)),ゼリー・リクソン(アリス).3_20210810180501 フランス南東部のオートリーヴ,徒歩で一日郵便を配達するシュヴァルは寡黙で口下手な男.1873年,妻が病死し息子のシリルは親戚に引き取られる.一人ぼっちになったシュヴァルに配慮した局長は担当区域を変え,シュヴァルはその区域に住む寡婦,フィロメーヌと言葉を交わすようになる.やがて二人は結婚し,娘アリスを授かる.2_20210810180501
1879年,配達中に石に躓いたシュヴァルは道から転落,負傷を負う.石を掘り出してみると実に奇妙な形をしており,天啓を得たシュヴァルは,それ以来郵便配達の傍ら石を集めてはセメントで塗り固め,自宅の庭に奇怪な宮殿を建設し始める.宮殿を遊び場として育ち,夫妻の掌中の珠であったアリスは1894年に病死するが….4_20210810180501
オートリーヴに現存する「シュヴァルの理想宮」の建設に至る,実話に基づく映画.シュヴァルは33年かけて理想宮を完成させ,さらにその後8年をかけて村の墓所にアリスの墓を建設した.その間村人からは変人扱いされるが,ユニークなその宮殿は次第に新聞で紹介されるようになり,見学に訪れる人や,評価する芸術家が増えていく.長きにわたるシュヴァルの物語は,大河小説の様で印象的だ.5_20210810180501
この物語には悪人は誰一人登場しないが,運命によりアリスを失った時のシュヴァルの慟哭には,涙を禁じ得ない.それでもシュヴァルは黙々と建設を続ける.寡黙なシュヴァルだが,心の中は異国風な詩とイメージに満ち溢れているのだ.最後の場面,理想宮の前で執り行われたシリルの遺児・アリスの結婚式に出席し,ダンスを見ながら思い出にふけるシュヴァルのシーンには胸を打たれる.
主演のジャック・ガンブラン,レティシア・カスタがいずれも素晴らしい.郵便局長のオーギュストとフィロメーヌの友人ガランスがシュヴァル夫妻を見る暖かい目も嬉しい.素敵な映画です.6_20210810180501 ★★★★(★5個が満点)
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