独断的映画感想文:罪の声
日記:2021年9月某日
映画「罪の声」を見る. 2020年.監督:土井裕泰.
出演:小栗旬(阿久津英士),星野源(曽根俊也),松重豊(水島洋介),古舘寛治(鳥居雅夫),市川実日子(曽根亜美),火野正平(河村和信),宇崎竜童(曽根達雄),梶芽衣子(曽根真由美),宇野祥平(生島聡一郎),篠原ゆき子(生島千代子),原菜乃華(生島望). 1984年,お菓子メーカーのギンガ・萬堂が脅迫された連続事件,犯人からは挑戦状が次々と発信されたが,結局警察は犯人を逮捕できず事件は時効となった.
大阪大日新聞の記者阿久津は,事件から35年後の2019年,本件の追及の企画を任される.阿久津は社会部長の鳥居から,当時オランダのビール王誘拐事件を調べていたロンドン在住の日本人がいたとの情報を得,ロンドンに飛ぶが,情報は途中で切れた. 曽根俊也は亡き父のあとを継いだテーラーの2代目.家の探し物をしていて黒革の手帳とカセットテープを見つける.英文で記載された手帳に「GINGA」・「MANDO」の字を見た俊也は,ネット上にあったこの事件の3人の子どもの声の脅迫音声データを再生するが,その一人の声はまさしくカセットテープにあった幼い自分の声だった.
俊也は行方不明の叔父・曽根達夫がこの件に関与していると考え,父の代から馴染みの仕立て職人・河村から達夫が過激派だったことを知る.更に父と達夫が共に写っている柔道場の写真から,免職されたまる暴の刑事生島の存在を知る.生島の2人の子どもが,残り2人の声の子どもと確信した俊也は,生島の一家が忽然と姿を消した時の状況を掴む.また堺の料亭「し乃」で生島も加わった犯人グループの会合があったことも知る. 一方阿久津は,犯人グループの狙いは脅迫状公開による株価暴落を見越した空売りにあったとの見立てから,その人脈を辿り堺の料亭「し乃」に行きつき,遂に俊也の存在を知る…. 1984年に起きた企業脅迫事件:グリコ・森永事件に取材した映画.35年の歳月と日本・イギリスを舞台とする壮大な物語を,テンポよくぐいぐいと展開していく力は見事.特に阿久津ら記者たちの組織的なしらみつぶしの取材と,俊也の点から点を地道に追求していく動きとの対比が面白い.
謎解き物としての展開だけでなく,事件の影で人生をつぶされていった生島一家の悲劇も含め,丁寧な描写が印象的だ.終盤,ロンドンでの松村達夫と阿久津のシーンも美しく感銘的.やや長めの映画だが,見応え充分,見て損は無し.
★★★★(★5個が満点)
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