独断的映画感想文:世界で一番しあわせな食堂
日記:2022年1月某日
映画「世界で一番しあわせな食堂」を見る.
2019年.監督:ミカ・カウリスマキ.
出演:アンナ=マイヤ・トゥオッコ(シルカ),チュー・パクホン(チェン),カリ・ヴァーナネン(ロンパイネン),ルーカス・スアン(ニュニュ),ヴェサ=マッティ・ロイリ(ヴィルプラ).
フィンランドのラップランドに近い村ポホヤンヨキの,ポテトとソーセージしかない食堂・シルカに,ある日中国人のチェンとニューニューの親子がやってくる.チェンは「ミスター・フォントロン」を捜していて,食堂の皆に尋ねるが,手掛かりは全くない.チェンは探し続けるため,食堂の経営者シルカが提供する部屋に滞在することになる.
ある日中国人観光客の一団が来訪,チェンは申し出て中国料理を作り大好評を博す.チェンは上海の一流シェフだったのだ.チェンは無償でシルカの厨房で中国料理を作るようになり,食堂は評判を呼んで大繁盛,常連の老人たちもチェンの薬膳料理で体の健康を取り戻す.
やがて探していた「フォントロン」はすでに亡くなっていたことが判り,チェンたちはお墓参りをする.「フォントロン」は,妻を交通事故で亡くし,酒浸りになって自分の店をなくしかけたチェンを助けた,恩人だったのだ.チェンは帰国しようとするが,シルカは彼を引き留め,ニュニュも地元の少年たちの馴染んでいくが….
フィンランドの最果ての地で人生を生きなおそうとする中国人親子と,中国料理を受け入れたフィンランドの村の人々のヒューマンドラマ.悪い人は誰も出てこず(まあ強いて言えば,美味しい料理を食べながらチェンを疑いの目でしか見ない若い警官が唯一の「悪い人」か),穏やかで静かなフィンランドの自然が心を癒す.
特に終盤,常連の老人らがチェンをサウナと湖での宴会に招待するシーンが印象的だ.アコーディオンの伴奏でヴィルプラ老人が歌うフィンランドの唄は哀愁に満ちて美しく,画面のチェンと同様,映画を見ている自分も涙を禁じ得ない.何の捻りもなく淡々とした映画だが,見た後心が温まる.一見の価値あり.
ミカ・カウリスマキは,国際映画賞をいくつも取っているアキ・カウリスマキの兄,1981年から弟と共に映画の制作会社を設立し,多くの作品を手掛けた.
★★★★(★5個が満点)
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