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2022年2月に作成された記事

2022/02/21

番外:独断的歌舞伎感想文:二月大歌舞伎第3部 鬼次拍子舞/鼠小僧次郎吉

日記:2022年2月某日
歌舞伎座で「二月大歌舞伎第三部」を見る.2202_nezumikozo1643632241551_20220612144001 「一、鬼次拍子舞(おにじひょうしまい)」.出演:山樵実は長田太郎(芝翫),白拍子実は松の前(雀右衛門).河竹黙阿弥 作.「二、 鼠小紋春着雛形 鼠小僧次郎吉(ねずみこぞうじろきち)」.出演:稲葉幸蔵(菊之助),刀屋新助(巳之助救援・代役菊次),芸者お元(新悟),杉田娘おみつ(米吉),蜆売り三吉(丑之助),石垣伴作(吉之丞),左膳弟子左内(橘太郎),養母お熊(橘三郎),与之助(坂東亀蔵),早瀬弥十郎(彦三郎),本庄曾平次(権十郎),大黒屋抱え松山(雀右衛門),辻番与惣兵衛(歌六).
拍子舞は台詞のある踊りを言うらしい.芝翫・雀右衛門ともに美しく古風な踊りが印象的.Img_20220215_171352-3
鼠小僧はスピーディーで現代風な物語.この芝居は「起承転結」で言えば,「承」と「転」の間で大変な激変がある.「承」で面目躍如となった鼠小僧だが,「転」では「承」の結果がすべて裏目に出て鼠小僧はのっぴきならない羽目になる.現代の不条理劇にも通じる状況だ.一方で登場人物はほぼすべてが鼠小僧とは血縁含めゆかりのある人物ばかり(黙阿弥ものですから),それが明らかになっていく「転」から「結」の展開はなかなか面白い.役者ではなんと言っても丑之助が子役と思えぬねちこい芝居で見応えあり.主役・菊之助と歌六がさすがの力量で印象的だった.2時間を超す舞台があっという間,見て損はなかった.18日の予約が休演でふいになり21日に再度チケットを獲得して見た甲斐あり.
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2022/02/15

番外:独断的歌舞伎感想文 2月大歌舞伎1部・2部:御浜御殿綱豊卿/石橋/春調娘七種/渡海屋・大物浦

日記:2022年2月某日
歌舞伎座2月大歌舞伎1部を見る.2202kabukiza_h_d93aa0a4e00724fdd3d286f16
真山青果 作・真山美保 演出.「一、元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら) 御浜御殿綱豊卿」.徳川綱豊卿(梅玉),富森助右衛門(松緑),中臈お喜世(莟玉),上臈浦尾(歌女之丞),小谷甚内(松之助),新井勘解由(東蔵),御祐筆江島(魁春).「二、石橋(しゃっきょう)」.出演:獅子の精(錦之助),同(鷹之資),同(左近).
真山青果ものは元来好きではない.膨大なセリフ劇だし,自らの言葉に感激して涙ぐむあたり(綱豊卿と新井勘解由の会話)は全くいただけない.今回は松緑の富森助右衛門が,ニンに合って共感できた.石橋は鷹之資がコロナ感染で休演,錦之助・左近での踊りとなったが,左近奮闘,見事な踊りで感激.2202_genroku_poster1644147075988
その後歌舞伎座2月大歌舞伎2部を見る.
「一、春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)」.出演:曽我十郎(梅枝),静御前(千之助),曽我五郎(萬太郎).「二、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) 渡海屋 大物浦 片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候」.出演:渡海屋銀平実は新中納言知盛(仁左衛門),源義経(時蔵),女房お柳実は典侍の局(孝太郎),入江丹蔵(隼人),銀平娘お安実は安徳帝(小川大晴),相模五郎(又五郎),武蔵坊弁慶(左團次).Img_20220215_104407
最初の踊りは梅枝が曽我の十郎で立ち役,千之助が静御前だが,これが美しい.若手3人の踊りが魅力的.渡海屋/大物浦は仁左衛門一世一代というだけあって素晴らしい雄渾な舞台.知盛が平家一門の中にあって,武人として安徳帝に仕えたということが,その凄惨な最後によって明確に描かれる.そのことが明らかにされる仁左衛門の渾身の舞台が,誠に印象的で心に残る.最後に弁慶の吹くほら貝と,その後の弁慶の花道の引っ込みも感銘的だった.
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2022/02/13

独断的映画感想文:羊飼いと風船

日記:2022年2月某日
映画「羊飼いと風船」を見る.1_20220220212201 2019年.中国.監督・脚本:ペマ・ツェテン.
出演:ソナム・ワンモ(ドルカル),ジンバ(タルギェ),ヤンシクツォ(シャンチェ・ドルマ).2_20220220212201 1980年代,少子化政策がすすめられるチベット自治区.羊の牧畜をしながら老父と3人の子どもを育てている若い夫婦,タルギェとドルカル.避妊のため使っている貴重なコンドームを,やんちゃな子どもたちが持ち出して風船にして遊んでいる.ドルカルは診療所の女先生に避妊の相談に行く.5_20220220212201 タルギェは今年も友人から種羊を借りて,羊の種付けを始める.寮から中学校に通っているタルギェの長男ジャムヤンは夏休みを迎え,ドルカルの妹で尼僧のシャンチェが迎えに来る.シャンチェは校庭で教師タクブンジャに会うが,タクブンジャはシャンチェの元恋人だった.シャンチェが尼僧となった原因も,二人の別離にあったようだ.タクブンジャは自分の書いた小説をシャンチェに贈るが….4_20220220212201 伝統的な家族制度・信仰を揺り動かす近代化の波と少子化政策.子どもたちの悪戯はドルカルの妊娠につながり,亡き親族の転生を期待するタルギェやジャムヤンの願いと,少子化政策・貧困の現実の間でドルカルは板挟みになる.3_20220220212201
 映画はこの様な物語を,独特のリズムと映像美で描いていく.終盤,羊を売った金でジャムヤンの学費を払おうとするタルギェにジャムヤンが勉強は嫌いだと告白するシーン,タルギェが町の市場で子どもたちのために大きな風船を(それ以外には何も買わない)買って帰るシーン.タルギェ,ドルカルの夫婦の心情が思いやられ,それぞれが心に残る.
★★★★(★5個が満点)
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2022/02/08

独断的映画感想文:ジャスト6.5 闘いの証

日記:2022年2月某日
映画「ジャスト6.5 闘いの証」を見る.651 2019年.監督・脚本:サイード・ルスタイ.
出演:ペイマン・モアディ(サマド),ナヴィド・モハマドザデー(ナセル),ファラッド・アスラニ(判事),パリナズ・イザディアール(エルハム).652 めったに見ることのないイラン映画.
麻薬汚染が広がるイラン,薬物対策チームの部長刑事・サマドは強硬な捜索を続けていく.卸元の捜索では売人に逃げられたが,土管置き場のホームレス狩りこみ等で逮捕した被疑者の尋問から,製造者と卸をつなぐ大物・ナセルが浮上する.ナセルの元婚約者の尋問でそのアジトを突き止めたチームは,その高級ペントハウスに突入,薬物服用で自殺を図ったナセルを逮捕するが….653 激しい会話のやり取りと心理戦,買収の誘い等が火花を散らすナセル等売人たちとサマドのチームの戦い.サマドも捜査過程で押収薬物が紛失した件で,判事の取り調べを受けている身,部下は自分の息子がナセルたちに拉致され殺されたとの疑いを持ち,ナセルへの感情的な対応を取る.警察チームの中でも確執があるのだ.654 一方イランの家族社会の特徴も描かれる.捕まった障がい者の売人は,自分の服役を避けるため11歳の息子に身替りを命じ,判事はその状況を知ったうえで息子の量刑を短くする判決を出す.ナセルは家族・親戚の特に子どもを大事にしてきたと主張,自分が刑事の子を拉致・殺害したとの疑いを不名誉なことと受け止める.655 映画はテンポよく,緊張感が維持され,サマド,ナセルを演じる俳優らはいずれも熱演.見て損はなし.邦題は,サマドが警察に入ったころの中毒者数100万人が,今や6.5倍に増えているというセリフから取られた.★★★★(★5個が満点)
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