独断的映画感想文:羊飼いと風船
日記:2022年2月某日
映画「羊飼いと風船」を見る. 2019年.中国.監督・脚本:ペマ・ツェテン.
出演:ソナム・ワンモ(ドルカル),ジンバ(タルギェ),ヤンシクツォ(シャンチェ・ドルマ). 1980年代,少子化政策がすすめられるチベット自治区.羊の牧畜をしながら老父と3人の子どもを育てている若い夫婦,タルギェとドルカル.避妊のため使っている貴重なコンドームを,やんちゃな子どもたちが持ち出して風船にして遊んでいる.ドルカルは診療所の女先生に避妊の相談に行く.
タルギェは今年も友人から種羊を借りて,羊の種付けを始める.寮から中学校に通っているタルギェの長男ジャムヤンは夏休みを迎え,ドルカルの妹で尼僧のシャンチェが迎えに来る.シャンチェは校庭で教師タクブンジャに会うが,タクブンジャはシャンチェの元恋人だった.シャンチェが尼僧となった原因も,二人の別離にあったようだ.タクブンジャは自分の書いた小説をシャンチェに贈るが….
伝統的な家族制度・信仰を揺り動かす近代化の波と少子化政策.子どもたちの悪戯はドルカルの妊娠につながり,亡き親族の転生を期待するタルギェやジャムヤンの願いと,少子化政策・貧困の現実の間でドルカルは板挟みになる.
映画はこの様な物語を,独特のリズムと映像美で描いていく.終盤,羊を売った金でジャムヤンの学費を払おうとするタルギェにジャムヤンが勉強は嫌いだと告白するシーン,タルギェが町の市場で子どもたちのために大きな風船を(それ以外には何も買わない)買って帰るシーン.タルギェ,ドルカルの夫婦の心情が思いやられ,それぞれが心に残る.
★★★★(★5個が満点)
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