独断的映画感想文:ドライブ・マイ・カー
日記:2022年3月某日
映画「ドライブ・マイ・カー」を見る.
2021年.監督:濱口竜介.
出演:西島秀俊(家福悠介),三浦透子(渡利みさき),霧島れいか(家福音),パク・ユリム(イ・ユナ),ジン・デヨン(コン・ユンス),ソニア・ユアン(ジャニス・チャン),アン・フィテ,ペリー・ディゾン,安部聡子(柚原),岡田将生(高槻耕史).
映画の冒頭,Sexの後ベッドで不思議な物語を話し始める家福音.家福悠介は舞台俳優・演出家,音は元女優で脚本家.音はSex後に物語を話すが,翌朝には本人の記憶は曖昧になり,悠介から教わってそれを脚本化する.
悠介は移動に愛車サーブ900を使い,車中で音の吹きこんだ台詞を聞きながら自分の台詞を暗誦する.ウラジオストクの演劇祭に出張する日,トラブルでフライトが一日遅れる.急遽自宅に戻った悠介は,音の浮気現場を目撃する.男の顔は見なかったが,悠介は相手は音の書いたドラマの出演者・高槻ではないかと思う.悠介は踵を返して空港のホテルに宿泊し,その後何事もなかったように振る舞う.
二人の間には娘がいたが幼くして病気で亡くなった.その法事に二人で出かけた夜,音はまた物語の続きを話した.翌朝,悠介が出かける時,音は「今晩話したいことがある」と云うが,夜悠介が帰宅すると音はくも膜下出血で倒れていた.そのまま音は帰らぬ人となる.
2年後,広島で行われる国際演劇祭に招待された悠介は,多国籍の俳優が演じる「ワーニャおじさん」の舞台を演出することになる.2か月の稽古と2週間の上演中,規定により車の運転は許されず,サーブは専属運転手の渡利みさきが運転することになる.悠介は音がかって吹き込んだ「ワーニャおじさん」のテープを聞きながら,宿舎と稽古場の間を往復することになった.そのオーディションには高槻が参加していた….
映画の後半,舞台稽古の進んでいく中,みさきと次第に打ち解けていく悠介は,心の底に沈めていた音のことを改めて捉え返す.みさきは自分の母との生活,地滑りで母を失い天涯孤独の身になったことを悠介に語る.ワーニャを演じることになった高槻は音との関係を悠介に告白する.そして物語はクライマックスを迎える….
一定のテンポで淡々と,しかし揺るぎない緊張感をもってクライマックスに向かって進行するドラマが素晴らしい.悠介の愛車・サーブの存在感も印象的.悠介・みさきとともに湾曲したハイウェイや打ち続くトンネルを走破していく姿,みさきの廃屋にたどり着いた時の疲れ切った姿,悠介とみさきの心情がサーブの姿に反映する.
劇中劇である多国籍言語の「ワーニャおじさん」の設定も素敵,特にソーニャを演じる韓国手話の俳優イ・ユナを演じたパク・ユリムが素晴らしい.映画の終盤でもある「ワーニャおじさん」のラストシーン,悠介のワーニャおじさんとソーニャとの演技は,誠に感銘的だった.カメラも美しく,音楽もドラマの進行によく合っている.実に見応えのある映画,一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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