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2022年4月に作成された記事

2022/04/23

独断的映画感想文:ハリエット

日記:2022年4月某日
映画「ハリエット」を見る.1_20220508161901
2019年.監督:ケイシー・レモンズ.
出演:シンシア・エリヴォ(ハリエット・タブマン/ミンティ),レスリー・オドム・Jr(ウィリアム・スティル),ジョー・アルウィン(ギデオン・ブローダス),ジャネール・モネイ(マリー・ブキャナン),クラーク・ピータース(ベン・ロス),ヴァネッサ・ベル・キャロウェイ(リット・ロス),ヴォンディ・カーティス=ホール(グリーン牧師).2_20220508161901
1849年メリーランド州のフローダス家の奴隷ミンティの夫は自由民.二人は自分たちの将来の子どもを自由民とするため,フローダス家の祖父が発行した書類をもとに,子どもの自由民としての承認を求めるが,主人はその書類を破り捨て,子どもが生まれたらそれは自分の奴隷だと宣言する.その後主人は急死,息子ギデオンは借金返済のためミンティを南部に売却しようと考える.
絶望したミンティは奴隷商人の来訪を察知し脱走を決意,追手の迫る中独りで100㎞以上を走破しペンシルベニア州境を突破,フィラデルフィアの反奴隷制協会にたどり着き保護される.ここで奴隷制度廃止運動家ウィリアム・スティルと出会ったミンティはハリエット・タブマンと名前を変え仕事を得て自立する.3_20220508161901
その後奴隷制度廃止運動家たちの秘密組織“地下鉄道”の一員となったハリエットは、夫に会うべくメリーランド州に舞い戻る.しかし夫はハリエットが死んだと聞かされて再婚していた.ハリエットは兄弟・母親らを連れて再度州境を超える.ハリエットは“黒人たちのモーセ”と呼ばれる存在となるが,奴隷の逃亡で零落したギデオン・フローダスは復讐の鬼となり,州を越えて逃亡奴隷を逮捕できる逃亡奴隷法の助けを借りてハリエットを追及する….5_20220508161901
事実に基づく物語.心身ともにたくましいハリエットを演じるシンシア・エリヴォの演技が見ごたえあり.ブロードウェイのスターでもある彼女は,この映画でも自身の通信手段として黒人霊歌を歌うシーンを自ら歌唱するが,その圧倒的な歌声は感銘的だ.
“地下鉄道”の活動で70名以上の奴隷を解放したハリエットは,南北戦争にも参加,黒人兵の軍を指揮して,逃亡してきた数百名の奴隷の保護に成功する.そのシーンも印象的だ.監督をはじめ製作陣は3名の女性が指揮していたというこの映画,一見の価値あり.4_20220508162001
★★★★(★5個が満点)
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2022/04/10

独断的映画感想文:ジャッジ 裁かれる判事

日記:2022年4月某日
映画「ジャッジ 裁かれる判事」を見る.1_20220411180201
2014年.監督:デヴィッド・ドブキン.
出演:ロバート・ダウニー・Jr(ハンク・パーマー),ロバート・デュヴァル(ジョセフ・パーマー),ヴェラ・ファーミガ(サマンサ・パウエル),ヴィンセント・ドノフリオ(グレン・パーマー),ジェレミー・ストロング(デイル・パーマー),ダックス・シェパード(C・P・ケネディ),ビリー・ボブ・ソーントン(ドワイト・ディッカム).3_20220411180201
ハンクはシカゴで活躍する腕利きの弁護士,金さえ積めば悪辣な依頼人のためでも働く.仕事に没頭するハンクにうんざりした妻は浮気,ハンクは愛娘ローレンの養育権を得て離婚しようと考えている.
そんなある日実家から母が急死したとの知らせが入り,ハンクは捨てたも同然の故郷インディアナへ帰省する.父ジョゼフは地元で40年以上判事を務めている人物,葬儀の日も裁判を終えて通夜に参加した.兄グレンと知的障がい者の弟デイルとともに母の葬儀に参加するが,居心地は悪い.5_20220411180201
葬儀の翌日,父の車に衝突した跡を発見したハンク,ジョゼフは自分ではないと言い張り,父と衝突したハンクはシカゴに帰ろうとする.ところが機内にグレンから,ジョゼフがひき逃げの疑いで取り調べを受けているとの連絡が入る.グレンは急遽実家へ引き返すが,ジョゼフはハンクに自分の弁護は依頼しないと告げる….
この映画には重層的な謎が幾つもある.ハンクはなぜ父から疎んじられているのか.何故ハンクは故郷を捨てたのか.高校時代名ピッチャーだったグレンはなぜ野球に挫折したのか.父が轢いたとされる被害者マークと父との因縁は何か.父が被害者を轢いた記憶がないのは何故か.
暴君的な家長であり子どもには厳しかった父は,しかし誠実な判事であり決して嘘は言わない人物である.このような物語の根幹をなす謎の他にも,この映画にはハンクが酒場で出会った元カノの娘の父親は誰かという謎などがあり,物語の進展に引き込まれる.また法廷シーンのやり取りのスリリングな展開も魅力的.2_20220411180201
俳優ではロバート・ダウニー・Jr,ロバート・デュヴァルがいずれも見応え十分.検事役で登場したビリー・ボブ・ソーントンは久しぶりだったが,相変わらず魅力的.4_20220411180201
ところで映画の中盤で,ジョゼフとハンクが話をしていて,最も尊敬する弁護士は誰かという話題になる.ハンクが自分の師匠だと云うのに対し,ジョゼフは若い時に出会った高潔な弁護士:ヘンリー・ショウを最も尊敬すると云う.自分はハンクがヘンリーの愛称だということを知らなかったが,このことは後での伏線の一つだった.多少ネタバレだが触れて置く.
蛇足:先週見た映画もこの映画も,主人公と親との確執の原因は,交通事故だった.こういう偶然は時々起きるが,吃驚した.
★★★★(★5個が満点)
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2022/04/05

独断的映画感想文:ある天文学者の恋文

日記:2022年4月某日
映画「ある天文学者の恋文」を見る.1_20220412161601
2016年.監督:ジュゼッペ・トルナトーレ.音楽:エンニオ・モリコーネ.
出演:ジェレミー・アイアンズ(エドワード・フィーラム教授),オルガ・キュリレンコ(エイミー・ライアン),ショーナ・マクドナルド(ヴィクトリア),パオロ・カラブレージ(オッタヴィオ),アンナ・サヴァ(アンジェラ),イリーナ・カラ(エイミーの母親).5_20220412161601
天文学の学生エイミーは同部門の教授で妻子あるエドと熱愛中.エイミーは母親と折り合いが悪く,映画のスタントや塑像のヌードモデルをして暮らし,エドからはカミカゼと呼ばれている.ロンドンのホテルで会った後,エドからは通信や映像は届くが会うことはできない.それでもエドの助言通り勉強して無事進級の口頭試験に合格する.ところが出席した大学の講義中,講師がエドは数日前に亡くなったと言い,皆に黙とうを呼びかける.混乱したエイミーはエドに連絡を取ろうとするが繋がらない.4_20220412161601
エイミーは報道でエドの死を受け入れるが,一方エドからのメールと手紙は引き続き届く.エイミーはエドの自宅のあるエジンバラを訪れ,伝言のままに弁護士事務所を訪問,エドの旧友の弁護士からエドの贈り物と手紙を渡される.ロンドンに戻ったエイミーは手紙に同封された別荘の鍵を持って,かって二人で行ったイタリア・オルタ湖のボルゴヴェントーソ島に行く.別荘では暖炉に火がたかれ,エイミーへの贈り物が待っていた….3_20220412161601
死んだ恋人からメッセージが届くというミステリアスな内容と,エイミーの家族との確執やエドの死の克服という展開が印象的な映画.島でエドのメッセージを受け取ったエイミー,エドは自身の死に際してエイミーの母親との確執への助言を行う.激高したエイミーは衝動的にエドの映像記録を暖炉に投じ,エドのメールに通信の終了を指示するサインを返信してしまう.その後ぷっつりとエドからの通信は途絶えた.
画像の復元も通信の再開にも失敗したエイミーは,憔悴して再びエジンバラを訪れる.ここでエドの娘ヴィクトリアと会うことから新しい展開が開けるという物語.主演のジェレミー・アイアンズとオルガ・キュリレンコが魅力的,物語のテンポも良い.2_20220412161601
エイミーの論文スケジュールに合わせて届くエドの助言の的確さは驚異的だが,一回だけ順番を間違えてメールが届く場面があり,立ち直りかけていたエイミーがそれを笑って受け入れるというエピソードも面白かった.落ち着いた色調の映像も美しく,特にボルゴヴェントーソ島のたたずまいは魅力的.エンニオ・モリコーネ(制作時88歳)の音楽も控えめながら美しい.
★★★★(★5個が満点)
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