独断的映画感想文:海辺の家族たち
日記:2022年5月某日
映画「海辺の家族たち」を見る.
2016年.監督:ロベール・ゲディギャン.
出演 アリアンヌ・アスカリッド(アンジェル),ジャン=ピエール・ダルッサン(ジョゼフ),ジェラール・メイラン(アルマン),ジャック・ブーデ(マルタン),アナイス・ドゥムースティエ(ヴェランジェール),ロバンソン・ステヴナン(バンジャマン),ヤン・トリゴー(イヴァン),ジュヌヴィエーヴ・ムニク(スザンヌ),フレッド・ユリス(モーリス),ディオク・コマ(士官).
パリで活躍する女優アンジェルが,20年ぶりに故郷・マルセイユに近い漁村に帰ってくる.村で長らくレストランを営んでいた父が倒れたのだ.父の後をついでレストランを経営する長兄アルマン,失業中で若い婚約者ヴェランジェールと共に帰ってきている次兄ジョセフと,実家で久しぶりに語り合う.以前マルセイユでアンジェルの舞台を見て以来そのファンとなり,今では週末に劇を上演しているという漁師バンジャマンもやってくる.
この漁村が別荘地としてひらけ始めたころ,父は庶民的なレストランを開業しそれをずっと守ってきた.近況を交換しこの後実家をどうするか,3人は話し始めるが解決すべき問題は多い.往時に比べすっかりさびれたこの村,年老いた父の世代.隣人のマルタン夫妻は家賃の支払にも窮し,息子がそれを援助しようと申し出るのを心苦しく思っている.アンジェルはかって仕事中に父に預けた一人娘が事故で亡くなり,そのことで夫とも別れたという過去があった.一人一人の辛い過去が明らかになる一方,バンジャマンは憧れのアンジェルに猛烈なアタックを開始するが….
この後の人生をどうするのかがなかなか見えてこないのに,若いヴェランジェールやバンジャマンに対しては歳を感じざるを得ない兄妹たち.ところがある事件が起きて3人の気持ちが少しずつ切りかわっていく.他の状況は何も変わらないのに,3人は前向きに人生に向かい合うことになる.
静かな漁村を背景に進むこの人生模様が,フランス映画らしくて素敵.監督と主演の2人がマルセイユ出身ということも,映画の雰囲気を良くしているようだ.海辺の様々な情景,古びているが優美な別荘の家々,谷にかかる高い石橋を夜昼渡っていく列車.これらを映すカメラも美しい.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点)
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