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2022年6月に作成された記事

2022/06/28

独断的映画感想文:怪盗ルビイ

日記:2022年6月某日
映画「怪盗ルビイ」を見る.Photo_20220713105301
1988年.監督・脚本:和田誠.
出演:小泉今日子(加藤留美),真田広之(林徹),水野久美(徹の母),加藤和夫(徹の会社の上司),伊佐山ひろ子(徹の会社の年上の女),天本英世(食料品屋の親父),高見恭子(買物帰りの女),吉田日出子(銀行の係の女),斎藤晴彦(宝石店の店長),奥村公延(マンションの管理人),岡田眞澄(マンションの住人・男),木の実ナナ(マンションの住人・女),陣内孝則(留美の恋人),富士真奈美(アパートの主婦),秋野太作(刑事),名古屋章(白衣の男).2_20220713105301
母一人子一人で暮らすサラリーマンの徹,ある日アパートの1階上の部屋に留美が引っ越してくる.引越しの手伝いをしたことで打ち解けた二人,スタイリストだという留美はしかしこれからは泥棒として暮らすのだと打ち明け,犯罪計画に協力するよう徹に迫る.いたって真面目で小心者の徹はしかし留美の魅力に抗えず,二人は怪盗コンビを組んで犯罪の成功者を目指すが….
徹の真面目さと生来の勘の悪さがたたり,周到に練られた犯罪は全く成功しない.赤字がかさむばかりで犯罪は成立さえしない.おとぎ話のような映画だからこれで良いのだが,それよりも,嬉しそうにこの映画を撮っている和田誠の姿が目に浮かぶようなしゃれた展開が,小泉今日子と真田広之という格好なコンビを得て,最後まで楽しめる映画.1_20220713105301
映画にはあちこちに名画へのオマージュ的場面が仕組まれ(全てを正確に指摘することは小生には到底不可能ですが),それも楽しい.主人公二人が突然歌い始める中盤のミュージカルシーンも,なかなか見事な出来.隅々にまで和田誠の神経が行き届いた小粋な映画,一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点).
蛇足:本編はWOWOWの小泉今日子特集で見たのだが,始まる前に小泉今日子が撮影時の思い出を語る場面があり,これも一見の価値があった.
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2022/06/24

独断的映画感想文:マルモイ ことばあつめ

日記:2022年6月某日
映画「マルモイ ことばあつめ」を見る.1_20220625173601
2019年.監督・脚本:オム・ユナ.
出演:ユ・ヘジン(キム・パンス),ユン・ゲサン(リュ・ジョンファン),キム・ホンパ(チョ先生).3_20220625173701
1941年京城,映画館の呼び込みキム・パンスは,仲間が館内でスリを働いたかどでクビになる.中学生の息子ドクジンと6歳の娘スンヒを育てるやもめのパンスは,息子の学費を工面するため,街角でリュ・ジョンファンの鞄を奪い逃走する.ところが帰宅するとリュ・ジョンファンが待っていた.リュ・ジョンファンはドクジンの通う中学の理事長の息子,逃げる時パンスが落とした学費の督促状から足がついたのだ.2_20220625173601
リュ・ジョンファンは朝鮮語学会の代表,鞄の中身は大事な資料だった.キム・パンスは刑務所で同房だったチョ先生のとりなしで,朝鮮語学会の雑用係となる.朝鮮語学会は朝鮮語大辞典の編纂中,現在は各地の方言を集め標準語を確定する作業中だが,朝鮮語の使用禁止,創氏改名の強制が行われる中,辞書編纂自体が朝鮮総督府の弾圧にさらされていた.4_20220625173701
お調子者で字も読めないパンスだったが,辞書編集者たちの必死の取り組みに,自らも協力するようになる.一方ドクジンはそれがばれたらパンスは刑務所へ,ドクジンは徴兵され,幼いスンヒはどうなるのかと心配が尽きない….5_20220625173701
朝鮮語大辞典編纂を巡る物語.この映画の魅力は,第一には信念あるインテリだが世の中にはやや疎いリュ・ジョンファン,教養はなく喧嘩っ早いが機知に富み実行力のあるキム・パンス他,多士済々の登場人物にある.物語もユーモアに富み,テンポよく困難な時代の彼らの活躍を描いていく.6_20220625173601
弾圧は厳しく,映画の中盤では秘密の編集所が当局に摘発され,10年かけて集めた資料がすべて焼却されるという事態になるが,彼らはなお挫けない.大きな犠牲の後,1947年に至って朝鮮語大辞典は完成する.その辞典を覗きこむ今は教師となったドクジンと中学生となったスンヒの光景で映画は終わる.見ごたえある映画.
★★★☆(★5個が満点).
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2022/06/15

独断的映画感想文:サンドラの小さな家

日記:2022年6月某日
映画「サンドラの小さな家」を見る.1_20220619145701
2020年.監督:フィリダ・ロイド.
出演:クレア・ダン(サンドラ),ハリエット・ウォルター(ペギー),イアン・ロイド・アンダーソン(ゲイリー),ルビー・ローズ・オハラ(エマ),モリー・マッキャン(モリー).
サンドラの夫ゲイリーはDV男,逃げ出そうとしていたサンドラに決定的な暴行を加える.サンドラは娘エマとモリーを連れて市の保護を受け,娘を保育所に預けて複数のバイト仕事を掛け持ちで懸命に働く.2_20220619145701
住居は公営住宅の順番待ちが長く,市の借り上げホテル,しかしホテルはサンドラを客扱いせず,ロビーに入れずエレベーターにも乗せて貰えない.疲れ切ったサンドラに,長年掃除婦として世話をしてきた老医師ペギーが手を差し伸べる.サンドラが見つけた「35000ユーロで自力で建てる家のプラン」を実現するため,自分の裏庭を提供すると云うのだ.3_20220619145701
様々な人のつながりが生まれ,週末を利用した自宅の建設が進み始める.一方,娘モリーはゲイリーを嫌い週1回の父親訪問を泣いて嫌がる.モリーはサンドラが暴行された現場を見ていたのだ.これに対しゲイリーは,サンドラが娘の面会の義務を履行していないとして,サンドラから親権をはく奪するための訴えを起こす….4_20220619145701
典型的な筋書きとは言え,懸命に働くサンドラの周囲に徐々に出来上がっていく人の輪に心が温まる.舞台はアイルランドらしいが,口は悪いが人懐こいボランティアの面々が,それぞれに印象的だ.原案・脚本はサンドラを演じたクレア・ダン.物語は決して単純なハッピーエンドではないが,サンドラと娘たちの未来が開かれていくのを観客も確認できるだろう.一見の価値あり.
★★★☆(★5個が満点).
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2022/06/11

独断的映画感想文:すばらしき世界

日記:2022年6月某日
映画「すばらしき世界」を見る.0_20220616142801
2021年.原作:佐木隆三「身分長」.監督・脚本:西川美和.
出演:役所広司(三上正夫),仲野太賀(津乃田龍太郎),橋爪功(庄司勉),梶芽衣子(庄司敦子),六角精児(松本良介),北村有起哉(井口久俊),長澤まさみ(吉沢遥),安田成美(西尾久美子),白竜(下稲葉明雅),キムラ緑子(下稲葉マス子).4_20220616142801
殺人罪で13年の刑期を終え旭川刑務所を出た三上正夫.東京の保護司・庄司のもとで堅気への一歩を踏み出す.福岡で私生児として生まれた三上は施設育ち,14歳で暴力団の舎弟となり少年院入りとなる.以降10犯を重ね,最後の犯罪は妻が経営するスナックに日本刀を持って乗り込んできた対立暴力団の若者を,その日本刀で返り討ちにした殺人罪によるものだった.5_20220616142801
三上は行方不明の実母を探したいと,TV局に自分の「身分帳(刑務所が作成した個人台帳)」の写しを履歴書代わりに渡していた.プロデューサーの吉沢は,制作会社の津乃田に三上の密着取材を依頼,津乃田は三上が殺人犯と聞いて躊躇するが,三上は人懐こく人付き合いの良い男だった.体調も悪く庄司の勧めで生活保護を受けることになった三上,その担当の井口や庄司夫妻,同郷と知れて親しくなったスーパー店長の松本らと交流しながら生活再建を目指す.3_20220616142801
しかし自分なりの正義感を持ち,堅気でない相手には暴力の行使をためらわない三上.運転免許の取得や就職がうまくいかず苛立った三上は周りとも衝突,兄弟分の暴力団組長・下稲葉の誘いで福岡に里帰りするが….
実在の人物に取材した佐木隆三の小説「身分長」を原作とする映画.2_20220616142801
三上は自身の気概と暴力を頼りに誇りを持って生きてきた男だ.そう生きてきた男にとって堅気社会の壁は高い.怒りの爆発を必死に抑え我慢して生きていく三上,彼を支える周囲の人の真情も,なかなか三上の本質を変えるには至らない.しかしある事件が三上を変えたのではなかったか,自身も弱い人間の一人なのだと思い至ったのではなかったのか.そう思えた映画のラストシーン,カメラが見上げた青空をバックに,ようやく映画のタイトル「すばらしき世界」が映し出される.まことに印象的な幕切れ.1_20220616142901
主演の役所広司・仲野太賀始め共演陣も演技が素晴らしく,高い緊張感で物語が進行する.特に身を挺して堅気に戻るよう説得する下稲葉の妻を演じたキムラ緑子の,「そやけど空が広いち言いますよ」というセリフなど,印象的なシーンが随所にある.一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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2022/06/06

独断的映画感想文:花束みたいな恋をした

日記:2022年6月6日
映画「花束みたいな恋をした」を見る.1_20220713104501
2020年.監督:土井裕泰.
出演:有村架純(八谷絹),菅田将暉(山音麦),清原果耶(羽田凜),細田佳央太(水埜亘),オダギリジョー(加持航平),戸田恵子(八谷早智子),岩松了(八谷芳明),小林薫(山音広太郎).3_20220713104501
2015年のある夜,惜しいところで終電に乗り遅れた同士の男女4人,カフェで時間をつぶすがそのカフェには押井守がいた.それに気付かずサラリーマン同士の男女2人はタクシーで去り,残された絹と麦は押井守に会えた興奮を抱きつつ居酒屋へ.話すうちにお互いの共通点(同じスニーカー,天竺鼠の最近のライブに行きそびれた,好きな小説傾向,好きな映画,好きなゲーム)に気付く二人,夜通し歩いて二人は麦の部屋に行き,麦の作品であるガスタンク映像集を見るうち,絹は寝てしまう.2_20220713104501
やがて就活期を迎えた二人,しかしうまくいかないまま二人は多摩川沿いのマンションで同棲を始める.卒業後フリーターとして働きながら同棲生活を続ける二人,しかしバイトだけでは立ち行かなくなり二人は就職を決意する.先に絹が働き始め,麦もネット通販の会社の営業に採用される.多忙のためすれ違いの生活を重ねる二人,麦は絹のためとますます営業職に打ち込み,一方絹はやりたいことを仕事にしたいとイベント会社に転職して映画やゲームのイベントに関わり始める….
典型的な恋の物語を今ふうな背景とコンテンツを取り合わせて描いた映画だが,主演の二人が素敵で最後まで一気に見た.特に有村架純のキュートな笑顔と,菅田将暉の一途さは魅力的.4_20220713104501
物語の最終局面,ファミレスで最後の食事をしている二人に,隣席の今恋が始まったばかりの凛と亘の会話が聞こえてくる.かって二人で語り合ったことを今目をキラキラさせて話し合っている二人(清原果耶と細田佳央太が良い),絹と麦の眼に涙が浮かぶこの場面が印象的.
★★★☆(★5個が満点).
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2022/06/05

独断的映画感想文:夏への扉 キミのいる未来へ

日記:2022年6月某日
映画「夏への扉 キミのいる未来へ」を見る.1_20220713103801
2021年.監督:三木孝浩,脚本:菅野友恵,原作:ロバート・A・ハインライン.
出演:山﨑賢人(高倉宗一郎),清原果耶(松下璃子),藤木直人(ロボット),夏菜(白石鈴),眞島秀和(松下和人),浜野謙太(坪井剛太),田口トモロヲ(遠井教授).2_20220713103801
R.A.ハインラインの名作SFをリメイク.両親を病気で失った高倉宗一郎は,父の親友松下教授に引き取られ,一人娘の璃子と猫ピートとともに兄妹同然に育てられる.成人しロボット技術者として画期的なロボット開発に成功した宗一郎,しかし恩人松下教授夫妻は事故死し,璃子は今は宗一郎のパートナーでもある松下教授の弟・和人の庇護下にある.3_20220713103801
一方宗一郎は恋人で和人の秘書でもある白石鈴に裏切られ,研究成果も和人との会社の株もすべて奪われる.失意のどん底で宗一郎は30年間の冷凍睡眠に逃避しようとするが,思い直し和人の家に向かう.そこでは白石と和人が祝杯を挙げていて,その話す内容を聞いた璃子は,宗一郎の身を案じて彼の家に向かう.それを追う和人,一方宗一郎は入れ替わりに和人宅を訪れるが,白石鈴に襲われ冷凍睡眠に送り込まれる.璃子を追った和人の目の前で宗一郎の家は爆発炎上,それ以来璃子の行方は不明となる.30年後すべてを失い無一文で覚醒した宗一郎,5日間だけ覚醒者に提供されるロボット・ピートの協力を得て,璃子の行方やその後のロボット産業の動きを調べるが….4_20220713103801
原作は1956年の作品,その後のSFのお手本となった古典で,タイムマシンものとしてのストーリーの行方は誰にでも想像がつく.俳優は何と言っても清原伽耶が魅力的.一方で藤木直人のロボット・ピートの演技,猫のピートの演技も秀逸,その他は可もなく不可もなし.全体として古典SFの名作の香りは生かしきれず.
★★★(★5個が満点).
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2022/06/03

独断的映画感想文:鳩の撃退法

日記:2022年6月某日
映画「鳩の撃退法」を見る.
2021年.監督:タカハタ秀太.1_20220612150701
出演:藤原竜也(津田伸一),土屋太鳳(鳥飼なほみ),風間俊介(幸地秀吉),西野七瀬(沼本),豊川悦司(倉田健次郎),佐津川愛美(幸地奈々美),桜井ユキ(加賀まりこ),岩松了(川島社長),村上淳(山下),坂井真紀(加奈子),濱田岳(堀之内),ミッキー・カーチス(房州老人),リリー・フランキー(まえだ).3_20220612150701
高円寺のバーで働く元作家の津田,津田から新作として原稿を受け取った編集者・鳥飼は,5万円と引き換えに原稿を預かる.その内容は次のようなものだった.2_20220612150701
主人公は元作家の津田,今は富山でデリヘル嬢の送迎運転手として暮らしている.ある日津田はなじみの深夜喫茶で,顔見知りの男・秀吉に声をかける.水商売をしている秀吉は,夜中に帰宅して妻子を起こさないためここで読書し時間をつぶしている.秀吉と別れた津田は,デリヘル嬢の加賀まりこから恋人の春山を駅に送るよう頼まれるが,春山は駅で待っていた別の車に乗り込む.翌日秀吉は従業員から3万円前借したいと頼まれ了承するが,その後自宅で妻から妊娠したという報告を聞き,その日はバーを休むと連絡を入れる.しばらくして津田は懇意にしていた古本屋の主人・房州が亡くなった知らせを受けるが,房州が津田宛に残したバッグには3003万円の現金が入っていた.一方,秀吉は津田と深夜喫茶で別れた日から,家族ともども行方不明になっていた.数日後津田はデリヘルの社長から呼び出され,津田が床屋・まえだで使った1万円札が偽札で,警察と「本通り裏」と呼ばれるヤクザのボスが,偽札を使った人物を追究していることを聞く….4_20220612150701
鳥飼が読む津田の原稿はフィクションなのか現実なのか.かって津田の傑作小説を扱った鳥飼は,それが事実そのままであったことからトラブルに巻き込まれた経験を持つ.秀吉と妻子は何故・どこへ消えたのか.偽札は何故津田が持つに至ったのか,そのケリはどうつけられるのか.映画の後半,輻輳する謎は次々に伏線を回収して明らかになっていくが,その決着がどうなるか,スリリングな展開はなかなか面白い.5_20220612150701
俳優では藤原竜也を始め,豊川悦司,浜野謙太,岩松了ほかベテラン俳優がふんだんにキャスティングされ,それぞれが味のある演技.エンタテインメントとして見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点)
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