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2022/06/11

独断的映画感想文:すばらしき世界

日記:2022年6月某日
映画「すばらしき世界」を見る.0_20220616142801
2021年.原作:佐木隆三「身分長」.監督・脚本:西川美和.
出演:役所広司(三上正夫),仲野太賀(津乃田龍太郎),橋爪功(庄司勉),梶芽衣子(庄司敦子),六角精児(松本良介),北村有起哉(井口久俊),長澤まさみ(吉沢遥),安田成美(西尾久美子),白竜(下稲葉明雅),キムラ緑子(下稲葉マス子).4_20220616142801
殺人罪で13年の刑期を終え旭川刑務所を出た三上正夫.東京の保護司・庄司のもとで堅気への一歩を踏み出す.福岡で私生児として生まれた三上は施設育ち,14歳で暴力団の舎弟となり少年院入りとなる.以降10犯を重ね,最後の犯罪は妻が経営するスナックに日本刀を持って乗り込んできた対立暴力団の若者を,その日本刀で返り討ちにした殺人罪によるものだった.5_20220616142801
三上は行方不明の実母を探したいと,TV局に自分の「身分帳(刑務所が作成した個人台帳)」の写しを履歴書代わりに渡していた.プロデューサーの吉沢は,制作会社の津乃田に三上の密着取材を依頼,津乃田は三上が殺人犯と聞いて躊躇するが,三上は人懐こく人付き合いの良い男だった.体調も悪く庄司の勧めで生活保護を受けることになった三上,その担当の井口や庄司夫妻,同郷と知れて親しくなったスーパー店長の松本らと交流しながら生活再建を目指す.3_20220616142801
しかし自分なりの正義感を持ち,堅気でない相手には暴力の行使をためらわない三上.運転免許の取得や就職がうまくいかず苛立った三上は周りとも衝突,兄弟分の暴力団組長・下稲葉の誘いで福岡に里帰りするが….
実在の人物に取材した佐木隆三の小説「身分長」を原作とする映画.2_20220616142801
三上は自身の気概と暴力を頼りに誇りを持って生きてきた男だ.そう生きてきた男にとって堅気社会の壁は高い.怒りの爆発を必死に抑え我慢して生きていく三上,彼を支える周囲の人の真情も,なかなか三上の本質を変えるには至らない.しかしある事件が三上を変えたのではなかったか,自身も弱い人間の一人なのだと思い至ったのではなかったのか.そう思えた映画のラストシーン,カメラが見上げた青空をバックに,ようやく映画のタイトル「すばらしき世界」が映し出される.まことに印象的な幕切れ.1_20220616142901
主演の役所広司・仲野太賀始め共演陣も演技が素晴らしく,高い緊張感で物語が進行する.特に身を挺して堅気に戻るよう説得する下稲葉の妻を演じたキムラ緑子の,「そやけど空が広いち言いますよ」というセリフなど,印象的なシーンが随所にある.一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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