独断的映画感想文:最後の決闘裁判
日記:2022年7月某日
映画「最後の決闘裁判」を見る. 2021年.監督・製作:リドリー・スコット.
出演:ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン,製作も),ジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー),マルグリット・ド・カルージュ(ジョディ・カマー),アランソン伯ピエール2世(ベン・アフレック,製作も). 100年戦争の頃のフランス.准騎士ド・カルージュは腕の立つ若武者,リモージュを巡る戦いで友人の准騎士ル・グリアの危急を救う.以来二人は親友となる.
ド・カルージュはロベール・ド・ディボヴィルの娘マルグリットを娶る.マルグリットの持参金の中には妻の親しんだ肥沃な土地:オスール・ファル・コーンが含まれていたはずだが,領主ピエール伯の横やりでその土地は取り上げられ,ピエールの徴税官として信任を得たル・グリに与えられた.ド・カルージュは不満を隠せず王室に訴え出るが却下され,ピエールの不興を買ったド・カルージュは,父の死後そのべレム長官職を受け継ぐことは出来ず,長官にはル・グリが就任する.激怒したド・カルージュはピエール伯,ル・グリとの関係を悪化させる.
しかし1年後,旧友の跡継ぎ出生の祝いに招かれたド・カルージュとマルグリット,ド・カルージュはル・グリと和解し,マルグリットはル・グリの和解のキスを受けた.翌年,スコットランド遠征軍に参加したド・カルージュは騎士の位を得る.パリに行き給金を得て帰還すると,マルグリットが留守中ル・グリの訪問を受け,凌辱されたと訴えた….
本作は冒頭の決闘裁判開始のシーンの後,ド・カルージュの証言,ル・グリの証言,マルグリットの証言の3篇から構成され,最後に決闘裁判の経過が描かれる.3人の証言から浮かび上がるのは,それぞれの主観的主張が相手から見てどうなのかという人間の素顔だ.
勇猛果敢なド・カルージュは実は戦略をわきまえない猪武者で,直情径行で激怒しやすい性格は領主に仕える立場にも,領地や家庭の経営に対しても向いていない.マルグリットは夫の留守中にそのいい加減な領地経営に気付き,領主としての仕事に手ごたえを感じる.ル・グリは教養もあり的確な徴税で出世する男だが,女好き.しかし真の恋に目覚めたのはマルグリットに対してが初めてらしく,マルグリットも自分を好いているという妄信にとらわれている.ル・グリはマルグリットを襲ったことは認めつつ,実はマルグリットも受け入れていたので凌辱には当たらないと主張する.このような主張に基づき行われる決闘裁判.決闘裁判は決闘の結果を神の裁定として受け入れるという裁判で,この場合敗れたものの死体は罪人として扱われ,ド・カルージュが敗れた場合はマルグリットもその場で火あぶりになる.
本作は実際にあった事件に取材した原作による.中世の頑迷な考え方,血生臭い殺戮場面には圧倒されるが,主演3名の演技と監督の力量は素晴らしく,一見の価値ある映画.
★★★★(★5個が満点).
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