独断的映画感想文:梅切らぬバカ
日記:2022年9月某日
映画「梅切らぬバカ」を見る.
2021年.監督:和島香太郎.
出演:加賀まりこ(山田珠子),塚地武雅(山田忠男),渡辺いっけい(里村茂),森口瑤子(里村英子),斎藤汰鷹(里村草太),林家正蔵(大津進),高島礼子(今井奈津子).
忠さんこと山田忠男は自閉症を抱える50歳.母の珠子と二人,古い一軒家に住む.毎朝6:45に起床し7時に朝食を摂る規則正しい生活.庭の梅の木は道にまで張り出して隣家の里村家からは文句を言われている.忠男の父がこの梅の木を植え,この木が見ているから悪いことはできないと言って息子を育てたおかげで忠男はいい子に育った,と珠子は言う.
里村家の一人息子草太は,珠子・忠男と仲良くなった.毎日忠男は作業所へ,珠子は自宅で占い師を開業.ところが忠男の誕生祝の日に忠男はぎっくり腰に,「このままでは共倒れ」と,珠子は忠男を近くのグループホームに入所させる.入所直前,珠子は梅の枝を剪定しようとするが,梅を伐る音に忠男は固まってしまい,剪定は中止.
忠男がホームに入って暫くしたある夜,自販機でジュースを飲んでいた忠男は塾帰りの草太に誘われ,近くの乗馬クラブの馬小屋にいるポニーを見に行く.ポニーを連れ出したところを警備員に見つかり,草太は逃げるが忠男は捕まった.ポニーはそのまま脱走して,夜道でこれと出会った町会長が腰を抜かし,事態はグループホームへの抗議運動に発展する….
おだやかなヒューマンドラマ.といってこの親子の生活は穏やかなことばかりではない.里村家に忠男が入り込んだ時は,主人茂が烈火のごとく怒り,珠子は平身低頭して忠男をもらい下げてきた.尤も忠雄は草太が失くしたボールを庭で見つけて届けただけだった.梅を伐りかけた後,忠雄はかなり暴れたらしい(部屋にはひっくり返った机や倒れた扇風機が映っている).誤解に基づくとは言え,ポニー事件のため忠男はグループホームを退所し自宅の生活に戻った.梅は伐らぬままだ.
一方里村家とは,草太がポニー事件の真相を白状したこともあって,互いに理解し合えるようになった.忠男は,乗馬クラブの前を通る時もポニーにかまったりしないで,大人しく過ごすようになる.忠男の爪を噛む癖はいつの間にかなくなった.何も変わらないようで,少しだけだが変わったこともあるのだ.
俳優はそれぞれ腕の良いベテランで,安心して見ていられる.いささか類型的なところはあるが,後味は良い映画.見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点).
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