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2022/09/04

独断的映画感想文:モーリタニアン 黒塗りの記録

日記:2022年9月某日
映画「モーリタニアン 黒塗りの記録」を見る.0_20220910225601
2020年.監督:ケヴィン・マクドナルド.
出演:ジョディ・フォスター(ナンシー・ホランダー),タハール・ラヒム(モハメドゥ・ウルド・スラヒ),ニール・バックランド(サーメル・ウスマニ),シェイリーン・ウッドリー(テリー・ダンカン),ベネディクト・カンバーバッチ(スチュアート・カウチ中佐・製作も).
真実の物語.4_20220910225601
モハメドゥはモーリタニア人,2011年11月に友人の結婚式場からモーリタニアの警察に拉致され,アメリカに引き渡された.以来アフガニスタンを経て,4年後にはグアンタナモ基地に拘留されている.その間起訴もされず勾留理由も明らかにされていない.
この案件を知人から丸投げされた人権派弁護士のナンシーは,引き受けることを決意してグアンタナモ基地に向かう.一方米政府は,テロへの闘いの成果としてモハメドゥを死刑とするべく,その起訴をスチュアート中佐に依頼する.裁判資料としてナンシーが受け取ったものはすべて黒塗りにされたものだった.徐々にモハメドゥの信頼を得たナンシーは,法廷で証拠の強制開示を勝ち取るが,そこにはモハメドゥがテロへの関与を自供した調書が含まれていた.一方,資料として上がってくるものが自供と伝聞証言に過ぎないことに異常を感じたスチュアート中佐は,報告書の基となるMFR(memo for report)の提供を求めるが,拒否される.5_20220910225601
ナンシーはモハメドゥに自供前後の状況の手記を書き封印して彼女に届けるよう指示し,スチュアート中佐は苦心の末MFRを入手する.そこに書かれていたものは,心身を破壊する拷問の実態だった….3_20220910225601
この後スチュアート中佐は起訴は不可能と判断して辞任,モハメドゥを中継で法廷証言させることに成功したナンシーは,判事の支持を得てモハメドゥ釈放の判決を勝ち取る.政府の抵抗により釈放までなお4年の歳月を要したが,拘禁14年後の2016年にモハメドゥは釈放された.
真実の物語としてアメリカ政府の悪逆非道ぶりが描かれているが,一方でそれをカバーするナンシー達の活躍が描かれ,最終的にモハメドゥは(本人が画面に登場して)誰も恨んではいない,現在はハッピーだと述べている.2_20220910225601
グアンタナモ基地の担当者がモハメドゥに同情的で,オンラインでの法廷証言に共感を示すようなシーンも描かれるが,モハメドゥを死刑にするという愚かな命令を下した責任者への追及は,映画にはない.その点では中途半端な映画.しかしこの題材を描いてエンタテインメントとして提供した力量には敬意を表したい.日本では全く考えられないことである.
★★★★(★5個が満点)
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