独断的映画感想文:LOVE LIFE
日記:2022年9月某日
映画「LOVE LIFE」を見る.
2022年.監督・脚本:深田晃司.
出演:木村文乃(大沢妙子),永山絢斗(大沢二郎),砂田アトム(パク・シンジ),山崎紘菜(山崎理佐),神野三鈴(大沢明恵),田口トモロヲ(大沢誠),嶋田鉄太(敬太).
団地で暮らす妙子・二郎の新婚夫婦,今日は妙子の連れ子の敬太がオセロの大会で優勝したお祝いと,義父・誠の誕生祝.ところがそのさなか思いがけない事故が起き,敬太は命を落とす.
放心状態のまま葬儀に臨む妙子と二郎,ところがその席に,数年前に失踪し離婚が成立している敬太の父・パク・シンジが現れる.シンジはろうあ者で,団地の近くの公園でホームレスとして暮らしていた.シンジは役所に生活保護を申し込むが担当課は二郎の職場,シンジの手話通訳は担当課の関連NPOに勤める妙子が行うことになる.一方団地の別棟で暮らしていた誠夫婦は郊外に転居することになり,その転居を手伝いに泊りがけで出かけた二郎は,職場の同僚で元カノの理佐と会うことになる….
矢野顕子の歌「LOVE LIFE」に着想を得て,20年越しにまとめられた監督のオリジナル脚本による映画.妙子はきびきびと歩きはっきりとモノを言い,てきぱきと仕事をこなす女性.シンジが失踪した後一人で敬太を育ててきた.しかし一方で妙子は,「敬太を独りで育てる自分」という立場に依存していたようにも見える.敬太を失った後は,「シンジの通訳をし(シンジの手話は日本の一般の手話と違うらしい)シンジの面倒を見る自分」への依存へとのめり込んでいく妙子.
二郎は妙子とのつながりに敬太を必要としていたようだ.敬太を失った後,両親と妙子との間でバランスを見だしていく二郎.周囲の人たちも何かに依存し,人との関係の中に偏った自身を位置付けている.一方弱い人間と目されたシンジは,何かに依存することが案外少ない人間であったようだ.
事故のあと空中分解していく妙子と二郎の関係がどうなるのか.いろいろなことを考えさせる映画.最後に流れる矢野顕子の歌が,胸にしみて美しい.
★★★★(★5個が満点).
人気ブログランキングへ
コメント