独断的映画感想文:名もなき歌
日記:2022年11月某日
映画「名もなき歌」を見る.
2019年.監督:メリーナ・レオン.
出演:パメラ・メンドーサ(へオルヒナ・コンドリ),トミー・パラッガ(ペドロ・カンポス),ルシオ・ロハス(レオ・キスぺ),マイコル・エルナンデス(イサ).
1988年,ペルー.ヘオルヒナとレオは若い夫婦.ヘオルヒナはすでに妊娠しており,両親の祝福を受け故郷アヤクチョを出て,リマ近郊で暮らし始める.家は砂丘の中腹にある掘立小屋,その日暮らしの二人だ.
ラジオで無料の出産サービスを行っている財団の宣伝を耳にしたヘオルヒナは,早速その産院に出かけ検診を受ける.数日後産気づくと,独力で産院に行き無事出産した.
しかし女の赤ちゃんは,ヘオルヒナが眠っているうちに検査のため病院に移されたと言われる.そのまま産院を追い出されたヘオルヒナ,翌日産院に行くとそこにはもう誰もいなかった.彼女はレオとともに警察や裁判所に訴えるが,極貧で有権者番号を持たない彼らは取り合ってもらえない.ヘオルヒナは新聞社に行き,そこで出会った記者のペドロは取材に乗り出してくれた….
この後の記述にはネタバレがあります.
ペルー出身の監督が,実話をもとにモノクロ・スタンダードの画面で描く,社会派ドラマ.寡黙な映画で,ペルーの事情に詳しくない自分にとっては判り難い展開だ.
ペドロの必死の捜索とヘオルヒナの努力で,同様な経験をした女性が数名見つかり,また海外へ養子縁組した赤子を送り出す組織の存在が浮かび上がる.しかし判明するのはそこまで.映画では一部の組織の摘発とそれに関与した汚職判事の罷免を伝える報道が明らかになるが,ペドロにこの問題に首を突っ込むなと警告する政治家や,ゲイであるペドロへの脅迫も明らかになる.
淡々と描かれていくペルー社会の貧困と格差,腐敗と偏見が胸を打つ.最後のシーンで,海を見つめながら一人で子守唄を歌い続けるヘオルヒナの歌声が,印象的だった.心に残る映画.
★★★★(★5個が満点).
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