独断的映画感想文:MINAMATA―ミナマタ―
日記:2022年11月某日
映画「MINAMATA―ミナマタ―」を見る.
2020年.監督:アンドリュー・レヴィタス.出演:ジョニー・デップ(W・ユージン・スミス),真田広之(ヤマザキ・ミツオ),國村隼(ノジマ・ジュンイチ),美波(アイリーン),加瀬亮(キヨシ),浅野忠信(マツムラ・タツオ),岩瀬晶子(マツムラ・マサコ),ビル・ナイ(ロバート・“ボブ”・ヘイズ).
1971年ニューヨーク.カメラマン:ユージ・スミスは自身の活動を終息すべく,子供へ金を残すため機材を売り払い,長年付き合いのあったグラフ雑誌LIFEとも袂を分かとうとする.そんな折,富士フィルムのコマーシャルのため通訳のアイリーンのインタビューに応じるが,アイリーンは彼に日本の公害病・水俣病の資料を渡し,訪日して水俣の写真を撮るよう訴える.沖縄戦に従軍カメラマンとして参加し,重傷を負って後遺症にも悩むユージンは当初断る.しかし資料を一読して水俣行きを決意,LIFE誌の編集長ボブ・ヘイズに水俣取材を了承させ,1971年アイリーンとともに水俣を訪れる.
ユージンとアイリーンは胎児性水俣病児であるアキコの家に泊まることになった.父親のタツオは二人を歓迎するが,アキコの写真は撮ることを許さない.水俣病患者で自身も撮影をするキヨシや,自主交渉派のリーダー・ヤマザキはユージンを支持するが,多くの住民は撮影に非協力的だった.それでもキヨシの協力で暗室や機材の整った作業小屋が準備され,ユージンは取材を進める.
公害源と思われるチッソの附属病院に潜入したユージン,アイリーン,キヨシは,そこで患者の写真を撮るとともに,チッソが以前から自社の廃液が水俣病の原因だと知っていたことを示す研究資料を発見する.しかしチッソの株主総会が近づくと,警官が山崎の家に押し入り,また作業小屋はネガやプリントもろとも放火により焼失する.全てを諦め帰国しようとするユージン,しかしLIFEのボブの叱咤激励や地元の少年シゲルとの交流を通じ,ユージンは再度立ち上がる.ユージンは自主交渉派の住民の前で,患者の写真を撮影させて欲しいと懇願する….
映画は冒頭,事実に基づく物語との表示があるが,本作はユージン・スミスという写真家の再生と,作品「入浴する智子と母」の完成に至る,水俣と水俣闘争を舞台とした物語と言って良い.そのために脚本では事実がかなり変更されているところがある.しかしそれは問題ではない.
ユージンを演じるジョニー・デップの演技は迫力があり,映画の進行とともに引き込まれる.「入浴する智子(映画ではアキコ)と母」の撮影シーンは厳かな静けさに満ちていて,感銘的だ.結末では,その写真がLIFEに掲載され世界に配信されていく.共演者も実力派ぞろい,一見の価値あり.★★★☆(★5個が満点).
P.S.この映画を見て,あらためて若い時に見た土本典昭監督の水俣のドキュメンタリー映画を思い出した.患者さんの厳しい状況が淡々と映し出される一方,夢のように美しい水俣・不知火海の風景が心に染みついた記憶がある.
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