独断的映画感想文:あちらにいる鬼
日記:2022年11月某日
新宿ピカデリーで「あちらにいる鬼」を見る.
2022年.監督:廣木隆一.出演:寺島しのぶ(長内みはる/寂光),豊川悦司(白木篤郎),広末涼子(白木笙子),高良健吾(小桧山真二),村上淳(秦),蓮佛美沙子(坂口初子),佐野岳(矢沢祥一郎),宇野祥平(新城),丘みつ子(白木サカ).
1966年,文学講演会で初めて出会った長内みはると白木篤郎,二人は九州の講演会にみはるが出かけたとき,結ばれる.左翼系の作家として作品を発表し続ける白木,しかし女性に対しては文学サークルの女性や,水商売の女性を次々と口説いては関係を持っている.この時点で白木の妻・笙子は第2子を妊娠中,笙子は淡々と白木の愛人との手切れや後始末をこなし,白木の留守中に無事次女を出産する.
白木は妻とは自宅新築の話を進め,みはるが若い愛人と別れて京都に住むようになると,その東京の別宅に入りびたるようになる.その一方で,他の女性との関係を隠そうともしない白木にみはるは思い悩み,遂にある決心を固めるが….
作家井上光晴と瀬戸内晴美の不倫を,井上光晴の娘・井上荒野が小説化した原作の映画化.主人公の二人にこのキャスティングを得たのは,まことに適切で大成功である.監督の,表情のアップと長回しとを多用する撮り方に,笙子の広末涼子を含めた3人が見事にこたえ,見応えあり.特に後半,3人の人柄,性格,考え方が次第に浮き上がってくるにつれて,映画の緊張感は次第に高まる.
みはるの出家・剃髪からラストシーンに至る過程は,感銘的で涙を禁じ得なかった.
★★★★(★5個が満点)
人気ブログランキングへ
コメント