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2023年1月に作成された記事

2023/01/29

独断的映画感想文:あなたの名前を呼べたなら

日記:2023年1月某日
映画「あなたの名前を呼べたなら」を見る.1_20230131212301
2018年.監督・脚本:ロヘナ・ゲラ.
出演:ティロタマ・ショーム(ラトナ),ヴィヴェーク・ゴーンバル(アシュヴィン),ギータンジャリ・クルカルニー(ラクシュミ).
ラトナは富豪の御曹司アシュヴィンのマンションに住み込みで働くメイド.休みをもらって久しぶりに実家に帰ったのに,携帯で呼び出される.アシュヴィンが結婚する筈だった花嫁サヴィナの浮気がばれ,結婚は取りやめになったのだ.ラトナはムンバイに戻り,傷心のアシュヴィンの世話に専念する.3_20230131212301
ラトナは19歳で結婚,しかし花婿はすでに死病にとりつかれており4カ月後に亡くなった.婚家は花婿の病気を隠していたのだ.ラトナは田舎の因習により,その後一生を婚家の未亡人として生きなければならなかった.ラトナはムンバイに働きに出たいと願い,口減らしのため婚家もそれを認めた.ラトナはメイドとして働き,稼ぎを妹の学費にもう4年も送り続けている.妹には自分のような人生を歩ませたくないのだ.
一方,アシュヴィンはニューヨークで文筆家を目指していたが,建築業の父を継いだ兄が亡くなったため呼び戻され,父のもとで働いている.ラトナはデザイナーとして自立したい夢があり,アシュヴィンの許しを得て裁縫の勉強に励んでいる.アシュヴィンも懸命に働くラトナに好意を持つようになった.しかしラトナの妹が学業半ばで結婚することを知らせてくる.ラトナの4年間の送金は無駄となった….2_20230131212301
ラトナとアシュヴィンは立場は違うが,因習や階級社会の建前に縛られ,思い通りの人生を送れないことに変わりはない.二人は互いに好意を持つが,ラトナは未亡人として婚家の支配下にある.アシュヴィンが食堂で食事をし,ラトナは台所の床に座って食事をしなければならない現実は,変えることは困難だ.4_20230131212301
ラトナはアシュヴィンの願いにも拘らず彼を名前では呼ばず,「旦那さま(SIR)」と呼び続ける.ラトナとアシュヴィンを演じる俳優がいずれも印象的,二人がインドの現実に前向きに向かっていく物語が素敵だ.映画はハッピーエンドではないが,希望の光がほの見える中に終了する.インド映画らしく幾つか挟まれるインド歌謡が,いずれも明るく陽気で楽しい.原題はSIR,邦題はいかにも甘ったるくあまり適切ではない.他の国ではそれぞれセニョールとかムッシューとかになっている.
★★★☆(★5個が満点)
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2023/01/13

独断的映画感想文:リスペクト

日記:2023年1月某日
映画「リスペクト」を見る.5_20230131120401
2021年.監督:リーズル・トミー.
出演:ジェニファー・ハドソン(アレサ・フランクリン),フォレスト・ウィテカー(C.L.フランクリン師),マーロン・ウェイアンズ(テッド・ホワイト),メアリー・J・ブライジ(ダイナ・ワシントン),オードラ・マクドナルド(バーバラ・フランクリン),タイタス・バージェス(ジェームズ・クリーヴランド師),マーク・マロン(ジェリー・ウェクスラー),スカイ・ダコタ・ターナー(幼少期のアレサ),ヘイリー・キルゴア(キャロリン・フランクリン),セイコン・セングロー(アーマ・フランクリン),ヘザー・ヘッドリー(クララ・ウォード).3_20230131120401
アレサは幼少時から,伝道師で歌手でもある父の巡業に同行して歌を歌っていた.母は離婚して別居していたが,月に一度ゴスペル歌手でピアニストでもある母の家に行くことが,アレサには無上の喜びだった.しかし母はアレサが幼いうちに急死してしまう.父の家には様々な男女が出入りし,アレサは12歳の時に妊娠し子どもを産む.子どもは曾祖母にあたるバーバラが面倒を見た.
アレサは16歳の時に父の勧めで歌手デビューをするが,何でも歌える器用さが災いしてヒットには恵まれなかった.19歳のとき父の反対を押し切りマネージャーのテッド・ホワイトと結婚する.24歳の時アレサはアトランティック・レコードに移籍,敏腕プロデューサー:ジェリー・ウェクスラーは彼女のゴスペル性を重視し,アラバマのフェイム・スタジオで録音を開始する.この方針が当たり,彼女は待望のヒット曲を連発,25歳でオーティス・レディングのカヴァー「Respect」で全米1位を獲得した.しかしテッドの暴力により結婚は破綻する….2_20230131120401
アレサ・フランクリンの半生を描く音楽映画.その波乱に富んだ人生を,1972年ロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で行われたゴスペル・アルバム「Amazing Grace」のライブ録音まで綴る.このライブでアレサは父と和解,アルバムも大成功を収めた.またこのライブ映像は,2018年に「アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン」として公開されている.4_20230131120401
この映画ではなんと言ってもジェニファー・ハドソンの歌唱が感動的.彼女は歌唱録音のライブにこだわったと云う.つまりこの映画の歌唱は,スタジオ録音のアフレコではなく,全て撮影現場のライブ録音なのだ.1_20230131120401
更に音楽が生み出されていく過程の描写が素敵.フェイム・スタジオでの録音,ミュージシャンにアレサがピアノを弾きながら主題とリズムを示す.そこにベースがベースラインで参加,ギター・ドラムスが加わっていき,最後にブラスセクションも参加する.このスリリングなシーンが素晴らしい.同様なシーンは「Respect」の録音場面でも見られ,ここではアレサが歌い始めると,バックコーラスを担当する二人のアレサの姉妹が即興で,目を見張るようなコーラスをつけていく.音楽が生まれる瞬間がいずれも感銘的だ.エンドロールに流れるアレサ自身が歌う「ナチュラル・ウーマン:(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」も印象的.誠に見応え・聞きごたえのある映画.
★★★★☆(★5個が満点)
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