独断的映画感想文:あなたの名前を呼べたなら
日記:2023年1月某日
映画「あなたの名前を呼べたなら」を見る.
2018年.監督・脚本:ロヘナ・ゲラ.
出演:ティロタマ・ショーム(ラトナ),ヴィヴェーク・ゴーンバル(アシュヴィン),ギータンジャリ・クルカルニー(ラクシュミ).
ラトナは富豪の御曹司アシュヴィンのマンションに住み込みで働くメイド.休みをもらって久しぶりに実家に帰ったのに,携帯で呼び出される.アシュヴィンが結婚する筈だった花嫁サヴィナの浮気がばれ,結婚は取りやめになったのだ.ラトナはムンバイに戻り,傷心のアシュヴィンの世話に専念する.
ラトナは19歳で結婚,しかし花婿はすでに死病にとりつかれており4カ月後に亡くなった.婚家は花婿の病気を隠していたのだ.ラトナは田舎の因習により,その後一生を婚家の未亡人として生きなければならなかった.ラトナはムンバイに働きに出たいと願い,口減らしのため婚家もそれを認めた.ラトナはメイドとして働き,稼ぎを妹の学費にもう4年も送り続けている.妹には自分のような人生を歩ませたくないのだ.
一方,アシュヴィンはニューヨークで文筆家を目指していたが,建築業の父を継いだ兄が亡くなったため呼び戻され,父のもとで働いている.ラトナはデザイナーとして自立したい夢があり,アシュヴィンの許しを得て裁縫の勉強に励んでいる.アシュヴィンも懸命に働くラトナに好意を持つようになった.しかしラトナの妹が学業半ばで結婚することを知らせてくる.ラトナの4年間の送金は無駄となった….
ラトナとアシュヴィンは立場は違うが,因習や階級社会の建前に縛られ,思い通りの人生を送れないことに変わりはない.二人は互いに好意を持つが,ラトナは未亡人として婚家の支配下にある.アシュヴィンが食堂で食事をし,ラトナは台所の床に座って食事をしなければならない現実は,変えることは困難だ.
ラトナはアシュヴィンの願いにも拘らず彼を名前では呼ばず,「旦那さま(SIR)」と呼び続ける.ラトナとアシュヴィンを演じる俳優がいずれも印象的,二人がインドの現実に前向きに向かっていく物語が素敵だ.映画はハッピーエンドではないが,希望の光がほの見える中に終了する.インド映画らしく幾つか挟まれるインド歌謡が,いずれも明るく陽気で楽しい.原題はSIR,邦題はいかにも甘ったるくあまり適切ではない.他の国ではそれぞれセニョールとかムッシューとかになっている.
★★★☆(★5個が満点)
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