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2023/02/12

独断的映画感想文:コンパートメントNo.6

日記:2023年2月某日
映画「コンパートメントNo.6」を見る.No61
2021年.フィンランド/ロシア/エストニア/ドイツ合作.監督:ユホ・クオスマネン.
出演:セイディ・ハーラ(ラウラ),ユーリー・ボリソフ(リョーハ),ディナーラ・ドルカーロワ(イリーナ).No62
ラウラはフィンランド人の留学生,モスクワで教授イリーナの下宿に住み彼女とは恋仲.イリーナは自宅で学者仲間を集めたパーティーをたびたび開き,考古学を専攻するラウラはムルマンスクにある1万年前の岩窟壁画ペトログリフの話を聞き興味を持つ.
ムルマンスクに行くことになったラウラだが,同行するはずのイリーナはドタキャン,独りで2等寝台に乗り込んだラウラの同室はロシア人男性のリョーハだった.粗野なリョーハは列車が出るなり飲み始め泥酔,フィンランド人を馬鹿にしてラウラを娼婦扱いし,体に触りに来る.激怒したラウラは別の寝台車を探すが,車掌は対応せず列車内は満席.仕方なく元の部屋コンパートメントNo.6に戻る.No64
翌朝食堂車で言葉を交わした二人,ラウラが考古学専攻の大学生と知ったリョーハの態度は少し変わったようだ.列車が一晩停車する途中駅で,リョーハはラウラを知人の家で過ごそうと誘う.イリーナにうまく電話の通じないラウラは,リョーハに連れられその家に行くが,主人は年配の夫人で,ラウラとは話が弾んだ.翌日列車に戻った二人,ぎごちない中で徐々に打ち解け合うが….No65
カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品.1990年代の混乱したロシアでの,ラウラの史上最悪と思える旅路のロードムービー.インテリ留学生ラウラと一本気な労働者リョーハのおずおずとした接触が面白い.出だしの無茶苦茶な態度とは裏腹に,リョーハはやんちゃではあるが一本気でまっすぐな青年.ラウラだってイリーナを恋い慕ってはいるが,イリーナのいい加減さには内心気付いている,まっとうな女性だ.
この映画はそういうラウラとリョーハのロマンスを描く一方で,北極圏に暮らす人々のたくましさも描く.ペトログリフの帰途,猛吹雪の中ふざけ合って雪玉を投げ合い,打ち上げられた難船の残骸で遊ぶ彼ら二人のシーンには圧倒される.No63
とはいえ,通常のハッピーエンド,大団円では終わらないこの映画.ロシア的な憂鬱な冬景色のなか去っていくリョーハ,見送るラウラが印象的だ.一見の価値あり.
★★★★(★5個が満点)
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