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2023年7月に作成された記事

2023/07/17

独断的映画感想文:峠 最後のサムライ

日記:2023年7月某日
映画「峠 最後のサムライ」を見る.1_20230722221501
2020年.監督・脚本:小泉堯史.
出演:役所広司(河井継之助),松たか子(おすが),田中泯(河井代右衛門),香川京子(お貞),佐々木蔵之介(小山良運),坂東龍汰(小山正太郎),永山絢斗(松蔵),芳根京子(むつ),榎木孝明(川島億次郎),渡辺大(花輪求馬),矢島健一(松平定敬),山本學(老人),井川比佐志(月泉和尚),東出昌大(徳川慶喜),吉岡秀隆(岩村精一郎),仲代達矢(牧野忠恭(雪堂)).3_20230722221401
司馬遼太郎の原作から,河合継之助の戊辰戦争直前から亡くなるまでの激動を脚本化した.河合は薩長の倒幕方針を暴挙と批判,長岡藩の武装中立と東西両軍の調停という立場を掲げることで戦争を防ぐと主張する.藩境に迫った官軍に対し河合はこの趣旨の嘆願書を提出して交渉を試みるが,官軍は単なる時間稼ぎとみなし,嘆願書の受け取りを拒否,戦端は開かれた.2_20230722221401
官軍の大軍に対し長岡藩兵は千人に満たず,数日を待たず官軍の信濃川渡河作戦により長岡城は落城する….
原作を読んだ時から河合のこの方策には強い違和感があった.英邁な家老である河合が,一方で領民を深く思いやりつつ武士の一分を重視して,結果的には長岡城下を焦土とする戦乱を巻き起こし長岡藩も領民の暮らしも壊滅させる.この厳然たる事実を見て,河合を「最後のサムライ」などと持ち上げる考えには,全く共感できない.映画では,この疑問を河合に幼少時から親しんだ料理屋の娘・むつに発言させている.4_20230722221401
それにもかかわらず,映画としては本作品はしっかりとした時代劇として見ごたえ充分,特に役所広司の圧倒的な存在感と,充実した共演陣の好演が素晴らしい.映画の主旨には違和感ありながら,映画の出来には満足という複雑な感想となりました.
★★★☆(★5個が満点).5_20230722221401
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2023/07/13

独断的映画感想文:土を喰らう十二ヵ月

日記:2023年7月某日
映画「土を喰らう十二ヵ月」を見る.1_20230713114501
2022年.監督:中江裕司.
出演:沢田研二(ツトム),松たか子(真知子),西田尚美(美香),尾美としのり(隆),瀧川鯉八(写真屋),檀ふみ(文子),火野正平(大工),奈良岡朋子(チエ).2_20230713114501
映画の冒頭,軽快なジャズとともに飛ばしてゆく車,車は雪国に入りとある民家に到着,下りた真知子は民家に上がってツトムのもてなしを受ける.小説家のツトムは信州の山あいの村に住み暮らす.13年前に妻を亡くしたが,まだそのお骨は墓に収めていない.少年時代に寺の小僧だった時習い覚えた精進料理を,地元の食材で作って食べるのが楽しみ.編集者の真知子は年の離れた恋人で食いしん坊,ツトムの作った料理を食べるのが大好きだ.5_20230713114501
近くに住む亡妻の母チエさんとの交流,チエさんは味噌づくりの名手で,ツトムはもっぱらチエさんにもらう味噌を常食としている.近所の大工とも食のつながりで懇意である.チエが亡くなって,息子・隆の連れ合い・美香は葬儀をツトムに丸投げしてくる.筋違いとは思いながら,ツトムはチエの葬儀を自宅で行い,通夜の振舞を真知子の助けを借りてすべて準備することになった….4_20230713114501
ツトムの暮らしを,二十四節気に従い描いていく映画.ゆっくりしたテンポでツトムや周辺のひとたちの暮らしを描く.その映像や周囲の自然が美しく心がのどかになる.ツトムを演じる沢田研二のおだやかな演技もナレーションの声も,映画によく合って魅力的だ.これが遺作となった奈良岡朋子が美しい.俳優たちには生活感があまりないから,映画としては寓話的な感じはあるが,土井善晴先生監修のお料理はすべてリアルに美味しそう.楽しい映画だった.3_20230713114501
★★★☆(★5個が満点).
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2023/07/04

独断的映画感想文:ミナリ

日記:2023年7月某日
映画「ミナリ」を見る.
2020年.監督:リー・アイザック・チョン.1_20230705184401
出演:スティーヴン・ユァン(ジェイコブ),ハン・イェリ(モニカ),ユン・ヨジョン(スンジャ),ウィル・パットン(ポール),スコット・ヘイズ(ビリー),アラン・キム(デビッド),ノエル・ケイト・チョー(アン).7_20230705184401
1980年代,韓国系移民のジェイコブは妻モニカ,娘のアン,心臓に病気のある息子デビッドとともに,アーカンソーの農園に引っ越してくる.ジェイコブは妻とともにヒヨコの雌雄鑑別師として働きながら,農場主を夢見て農園の開墾にいそしむ.ジェイコブの夢は韓国野菜を栽培し,韓国人ネットワークに安定的に販売することだった.井戸を自力で掘り,地元民ポールを雇って野菜成育に心血を注ぐ.4_20230705184401
子どもたちの世話のために韓国からモニカの母・スンジャもやってくる.彼女は料理も作れずクッキーも焼かないうえ,悪態をつきながら花札をするのが大好きだが,子どもたちとは奇妙な友情を育んでいく.しかしやがて井戸が枯れ,水道の水を使うため経費がかさみ,販売を引き受けた韓国人業者に裏切られるなど災厄が重なり,ジェイコブとモニカは疲弊し関係も険悪になってゆく.更にスンジャが脳溢血の発作を起こし….3_20230705184401
現代の移民の悪戦苦闘を描く,アメリカ映画.ブラッド・ピットが製作総指揮を執るが,スタッフ・俳優の多くは韓国系のひとたち.
移民がゼロから暮らしを作っていく苦労は,アメリカ人なら共感できるだろう.映画は家族の中での不和や葛藤,次々に降りかかる災難を描く一方,それを乗り越え或いは災難にかえって助けられて進んでゆく家族の結びつきを示してゆく.まことに禍福は糾える縄の如し,思いがけないデビッドの病気の改善の一方破綻する夫婦の関係,壊滅的な災厄の後結びつきを取り戻し再出発していく家族の姿が,深い感動を呼ぶ.5_20230705184401
俳優は何と言ってもユン・ヨジョンが素晴らしい.この難しい役をスンジャその人として演じた力に拍手を送りたい.デビッド役のアラン・キムも素敵.見応え十分な映画らしい映画.なお,「ミナリ」とは韓国料理によく使われるセリの一種.1シーズン目は枯れるが2シーズン目に再生したものが美味しいと云う.

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★★★★☆(★5個が満点).
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2023/07/03

独断的映画感想文:ドリームプラン

日記:2023年7月某日
映画「ドリームプラン」を見る.
2022年.監督:レイナルド・マーカス・グリーン.1_20230704144301
出演:ウィル・スミス(リチャード・ウィリアムズ),アーンジャニュー・エリス(オラシーン・ウィリアムズ),サナイヤ・シドニー(ビーナス・ウィリアムズ),デミ・シングルトン(セリーナ・ウィリアムズ),トニー・ゴールドウィン(ポール・コーエン),ジョン・バーンサル(リック・メイシー).
テニス界を席巻したビーナス,セリーヌのウィリアムズ姉妹を育てた父:リチャードを描く映画.リチャードは2度目の妻オラシーンとの間の子をプロテニスプレイヤーに育てようと,プランを練り独学でテニスを学ぶ.リチャードのコーチのもと公共施設で練習する日々,しかしその指導も限界に来る.2_20230704144301
様々なコーチのもとに売り込みを図るリチャード,あるチャンスに直接見て貰えた有名コーチ:ポール・コーエンは,姉妹の実力を認め無料での指導を了承,しかし指導は一人だけということになる.リチャードはビーナスの受ける指導をビデオ撮りし,セリーヌもそれを見て猛練習,二人はジュニア大会に出場して驚異的な成績を収める.これを見て彼女たちを丸抱えで面倒見ようというエージェントが訪問してくるが,リチャードは断り,彼らを紹介したポール・コーエンとも縁を切る….3_20230704144301
リチャードは新たにリック・メイシーと契約を交わし,無料でコーチする代わりに将来の稼ぎの15%を提供するという条件で,家族全体をフロリダのメイシーのアカデミーで面倒を見ることとした.姉妹は指導を受け力をつける.リックはジュニア大会への出場を勧めるが,リチャードは教育を優先しそれに応じない.4_20230704144301
3年間待ってビーナス自身が試合を渇望するようになり,ついにビーナスは14歳でプロデビューを果たす.ビーナスは2戦目で世界王者アランチャ・サンチェス・ビカリオに敗れ失意に沈むが,コートの外には彼女を支持する多くの若者が待っていた….5_20230704144301
リチャードの強烈な個性は圧倒的だが,同時に姉妹をはじめ家族への愛情あふれる心情が描かれ感銘的である.特にウィル・スミス,サナイヤ・シドニーの演技を始めリチャード一家を演じる俳優たちが素晴らしい.リチャードとビーナス,リチャードとセリーナがそれぞれ心を通わす会話シーンには涙を禁じ得なかった.見て損はなし.なお,原題は「King Richard」,洒落が効いている.
★★★★(★5個が満点).
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