独断的映画感想文:峠 最後のサムライ
日記:2023年7月某日
映画「峠 最後のサムライ」を見る.
2020年.監督・脚本:小泉堯史.
出演:役所広司(河井継之助),松たか子(おすが),田中泯(河井代右衛門),香川京子(お貞),佐々木蔵之介(小山良運),坂東龍汰(小山正太郎),永山絢斗(松蔵),芳根京子(むつ),榎木孝明(川島億次郎),渡辺大(花輪求馬),矢島健一(松平定敬),山本學(老人),井川比佐志(月泉和尚),東出昌大(徳川慶喜),吉岡秀隆(岩村精一郎),仲代達矢(牧野忠恭(雪堂)).
司馬遼太郎の原作から,河合継之助の戊辰戦争直前から亡くなるまでの激動を脚本化した.河合は薩長の倒幕方針を暴挙と批判,長岡藩の武装中立と東西両軍の調停という立場を掲げることで戦争を防ぐと主張する.藩境に迫った官軍に対し河合はこの趣旨の嘆願書を提出して交渉を試みるが,官軍は単なる時間稼ぎとみなし,嘆願書の受け取りを拒否,戦端は開かれた.
官軍の大軍に対し長岡藩兵は千人に満たず,数日を待たず官軍の信濃川渡河作戦により長岡城は落城する….
原作を読んだ時から河合のこの方策には強い違和感があった.英邁な家老である河合が,一方で領民を深く思いやりつつ武士の一分を重視して,結果的には長岡城下を焦土とする戦乱を巻き起こし長岡藩も領民の暮らしも壊滅させる.この厳然たる事実を見て,河合を「最後のサムライ」などと持ち上げる考えには,全く共感できない.映画では,この疑問を河合に幼少時から親しんだ料理屋の娘・むつに発言させている.
それにもかかわらず,映画としては本作品はしっかりとした時代劇として見ごたえ充分,特に役所広司の圧倒的な存在感と,充実した共演陣の好演が素晴らしい.映画の主旨には違和感ありながら,映画の出来には満足という複雑な感想となりました.
★★★☆(★5個が満点).
人気ブログランキングへ
コメント