独断的映画感想文:ミナリ
日記:2023年7月某日
映画「ミナリ」を見る.
2020年.監督:リー・アイザック・チョン.
出演:スティーヴン・ユァン(ジェイコブ),ハン・イェリ(モニカ),ユン・ヨジョン(スンジャ),ウィル・パットン(ポール),スコット・ヘイズ(ビリー),アラン・キム(デビッド),ノエル・ケイト・チョー(アン).
1980年代,韓国系移民のジェイコブは妻モニカ,娘のアン,心臓に病気のある息子デビッドとともに,アーカンソーの農園に引っ越してくる.ジェイコブは妻とともにヒヨコの雌雄鑑別師として働きながら,農場主を夢見て農園の開墾にいそしむ.ジェイコブの夢は韓国野菜を栽培し,韓国人ネットワークに安定的に販売することだった.井戸を自力で掘り,地元民ポールを雇って野菜成育に心血を注ぐ.
子どもたちの世話のために韓国からモニカの母・スンジャもやってくる.彼女は料理も作れずクッキーも焼かないうえ,悪態をつきながら花札をするのが大好きだが,子どもたちとは奇妙な友情を育んでいく.しかしやがて井戸が枯れ,水道の水を使うため経費がかさみ,販売を引き受けた韓国人業者に裏切られるなど災厄が重なり,ジェイコブとモニカは疲弊し関係も険悪になってゆく.更にスンジャが脳溢血の発作を起こし….
現代の移民の悪戦苦闘を描く,アメリカ映画.ブラッド・ピットが製作総指揮を執るが,スタッフ・俳優の多くは韓国系のひとたち.
移民がゼロから暮らしを作っていく苦労は,アメリカ人なら共感できるだろう.映画は家族の中での不和や葛藤,次々に降りかかる災難を描く一方,それを乗り越え或いは災難にかえって助けられて進んでゆく家族の結びつきを示してゆく.まことに禍福は糾える縄の如し,思いがけないデビッドの病気の改善の一方破綻する夫婦の関係,壊滅的な災厄の後結びつきを取り戻し再出発していく家族の姿が,深い感動を呼ぶ.
俳優は何と言ってもユン・ヨジョンが素晴らしい.この難しい役をスンジャその人として演じた力に拍手を送りたい.デビッド役のアラン・キムも素敵.見応え十分な映画らしい映画.なお,「ミナリ」とは韓国料理によく使われるセリの一種.1シーズン目は枯れるが2シーズン目に再生したものが美味しいと云う.
★★★★☆(★5個が満点).



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