独断的映画感想文:思い出のマーニー
日記:2024年1月某日
映画「思い出のマーニー」を見る.
2014年.スタジオ・ジブリ.監督:米林宏昌.
出演(声):高月彩良(杏奈),有村架純(マーニー),松嶋菜々子(頼子),寺島進(大岩清正),根岸季衣(大岩セツ),森山良子(老婦人),吉行和子(ばあや),黒木瞳(久子).
施設で育ち,現在の養母・頼子と複雑な葛藤を抱えている杏奈は感情をほとんど表に出さない.持病の喘息が悪化し,医者に転地を勧められた杏奈は,夏休みのあいだ頼子の親戚・大岩夫婦の家に預けられる.
大岩夫婦は気さくなたちだったが,杏奈は自分の中にこもったまま絵だけを描いている.湿地の対岸には湿っち屋敷と呼ばれる無人の古い洋館があった.ある夕方,海辺に来た杏奈は,杭につながれたボートに興味を惹かれ乗り込んだ.ボートは湿っち屋敷に漂いつき,そこで杏奈は不思議な少女マーニーに会う.
マーニーの両親は旅行がちで彼女はばあやと女中と共にここに暮らしているのだという.杏奈はマーニーと次第に打ち解け,たびたび屋敷を訪れるようになるが,地元の子どもたちとは仲良くなれないままだった….
杏奈のひと夏の経験を通じて得られる,自らのアイデンティティと世界との結びつきの確認の物語.美しいアニメーションだが物語の展開はなかなか複雑で,現在と過去・現実と幻が複雑に交錯し,話の行く末は予断を許さない.
最大の謎マーニーとは何者かという問いの答えは,思いがけず杏奈と海辺で共に絵を描いていた老婦人・久子からもたらされる.それが杏奈と世界の結びつきを明解にし,杏奈は世界を受け入れるのだ.
物語の実態に現実感はなく,この世のものとは思えないマーニーと杏奈の交流は夢の様で,アニメという表現形態に即している.マーニーにより解放されていく杏奈の心情がいとおしく,感銘を受けた.
★★★☆(★5個が満点).
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