独断的映画感想文:ベイビー・ブローカー
日記:2024年1月某日
映画「ベイビー・ブローカー」を見る.
2022年.監督・脚本・編集:是枝裕和.
出演:ソン・ガンホ(ハ・サンヒョン),カン・ドンウォン(ユン・ドンス),ペ・ドゥナ(アン・スジン刑事),イ・ジウン(ムン・ソヨン),イ・ジュヨン(イ刑事).
雨の夜,若い女が乳児を施設の赤ちゃんポストの前の床に置き姿を消す.見張っていたスジン刑事は赤ん坊をポストの中に入れ,部下に女の行方を追うよう指示し,ポストの見張りに戻る.赤ちゃんポストの受付ドンスとサンヒョンは監視カメラの映像を消去し,翌朝赤ん坊をサンヒョンのクリーニング店に連れ帰った.警察の尾行をまいた女・ソヨンは再び施設に戻るが,赤ん坊・ウソンはいない.受付のドンスがソヨンをサンヒョンのもとに連れて行き,自分たちは赤ん坊のブローカーであり,ウソンを裕福な夫婦の養子にあっせんすると説明すると,ソヨンは自分もあっせんに同行すると言い出す.
一方,赤ん坊の人身売買を追っていたスジン刑事は,現行犯逮捕をするべく彼らを追い続ける.こうして赤ん坊を売る立場のサンヒョン・ドンスと母親のソヨン,赤ん坊のウソン一行と,彼らを追うスジン刑事らの旅が始まる.サンヒョン一行には,ドンスが自分の育った児童養護施設に立ち寄った際,車にもぐりこんだ少年ヘジンも同行することになった.一方スジン刑事のもとには,ソヨンが売春組織の幹部を刺殺した容疑者であることが知らされる….
最初の養父母候補はウソンにケチをつけて値切ろうとしたために,ソヨンに罵倒されて破談となった.スジン刑事が送り込んだオトリの養父母候補は不妊治療が不首尾との設定で登場するが,ドンスの質問に誤った回答をしたため,転売目的のニセ夫婦とみなされ失敗.その過程で次第に疑似家族の様相を呈していくサンヒョンの一行,オトリ捜査や現行犯逮捕至上の捜査方法に疑問を抱くスジン刑事らが描かれる.
殺された組織幹部の手下たちがサンヒョンに連絡し,またスジン刑事が減刑を考慮してソヨンに自首するよう接触する中,ウソンにとっては理想的な買い手夫婦が現れ,一行はソウルに集合する….
妻子に捨てられケチな犯罪者として危ない橋を渡るサンヒョン,母に捨てられ施設で育ったドンス,ヘジン,子供を売らざるを得ない立場の犯罪容疑者ソヨンが,次第に互いを理解する過程が印象深い.ホテルの部屋でヘジンにねだられ,暗闇の中一人一人に「生まれてきてありがとう」と声をかけ続けるソヨンのシーンが感銘的.またスジン刑事も,盗聴するサンヒョン一行の和気あいあいさに,次第に心を開いていく.彼らを演じるソン・ガンホ,カン・ドンウォン,ペ・ドゥナ,イ・ジウンの演技がいずれも素晴らしい.ユーモアやペーソスも程よく,結末も共感できる.見て損はなし.
★★★★(★5個が満点).
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