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2024年2月に作成された記事

2024/02/21

独断的映画感想文:わたしの叔父さん

日記:2024年2月某日
映画「わたしの叔父さん」を見る.1_20240225183601
2019年.デンマーク映画.監督・脚本・編集・撮影:フラレ・ピーダセン.
出演 イェデ・スナゴー(Kris),ペーダ・ハンセン・テューセン(Onkel),オーレ・キャスパセン(Johannes),チュ・フリスク・ピーターセン(Mike).3_20240225183601
舞台はデンマークのユトランド半島.27歳のクリスは足の不自由な叔父と二人暮らし,乳牛を飼い農場を営む.クリスは幼い時に家族を亡くし,独り身だった叔父に引き取られた.高校卒業時に獣医学部に合格していたが,叔父が倒れ進学をあきらめる.以来10年間,朝早く起き叔父の身支度を手伝い,食事を作って酪農の仕事をし,夕食後の珈琲を楽しみ,週一回買い物に行くという,決まりきった日常を過ごしてきた.
ある日乳牛が産気づくが,逆子で分娩は難航.しかし獣医のヨハネス先生が来る前に,クリスは自力で出産させることに成功する.ヨハネス先生はクリスに獣医になる勉強を再開するよう勧め,教科書を貸してくれる.一方家族が葬られている教会の聖歌隊の青年マイクと出会い,デートに誘われる.戸惑いながら生活の変化に向け一歩を踏み出そうとするクリスに,叔父は温かい目を注ぐ….5_20240225183601
第32回東京国際映画祭コンペティション部門でグランプリを受賞した映画.酪農という仕事からも叔父の状況からも,家を離れることは基本的にできないと考えるクリス,しかしヨハネス先生の説得で初めてコペンハーゲンに大学の講義を聴きに行くことになる.そのさなかに事件が起きた.4_20240225183601
物語の進行の中で,クリスがどんなに叔父を愛し精神的支柱として頼っているかが明らかになってくる.叔父もクリスを心から愛している.マイクがその関係に立ち入ろうとするとき,マイクとの関係まで難しくなっていく.進学も交際もどのように対応してゆけば良いのか,葛藤するクリスの心情が哀切だ.2_20240225183601
それらを描く寡黙で淡々とした画面も素晴らしい.映画はクリスの葛藤の中,突然暗転しエンドロールが流れる.クリスと叔父がこれからどうなるのか,観客の想像力にゆだねられる結末.なお,主演のイェデ・スナゴーは叔父役のペーダ・ハンセン・テューセンとは実の姪・叔父の関係.ペーダ・ハンセン・テューセンは俳優でなく酪農家で,舞台となる農場の所有者だそうだ.
★★★★(★5個が満点).
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2024/02/14

独断的映画感想文:少年の君

日記:2024年2月某日
映画「少年の君」を見る.1_20240224220301
2021年公開(制作2019年).監督:デレク・ツァン.
出演:チョウ・ドンユイ(チェン・ニェン),イー・ヤンチェンシー(シャオベイ),イン・ファン(チャン・イー),ホアン・チエ(ラオ・ヤン),ウー・ユエ (チェン・ニェンの母).5_20240224220301
チェンは母子家庭の高校3年生,母親は借金を抱え行商で外泊がち.借金取りの取り立てに怯えながら,チェンは全国統一入試合格を目指し必死に勉強する.校内ではいじめが横行し,ある日同級生が自殺する.その亡骸に上着をかけたチェンは次のいじめの標的となり,いじめを教師に訴えたためいじめはさらに陰湿化する.4_20240224220301
ある日下校途中,数人に暴行されている少年を見たチェンはとっさに警察に通報するが,自分もつかまり殴られる.少年シャオベイは身寄りもなく,高速道路の下のバラックに一人住むストリートボーイだった.チェンは自分を守ってくれるようシャオベイに依頼し,ぎごちないスタートながら二人は互いに心を開いて行く….3_20240224220301
第93回アカデミー賞国際長篇映画賞にノミネートされた中国・香港合作の青春映画.
統一入試合格に人生のすべてをかけるチェン,強い心で勉強に励むが不在の母親以外頼るものはない.シャオベイも暴力組織とつかず離れずの一匹狼だがまだ少年だ.二人は互いの境遇を知り,いつしか固いきずなで結ばれるようになる.
映画は後半,チェンを苛め抜いた少女が死体で発見された事件からミステリーがらみとなる.チェンとシャオベイはこの事件に関与しているのか.シャオベイは容疑者として逮捕されるが,刑事チャンはさらにチェンをも追及してくる.2_20240224220301
拘置所で面会したチェンとシャオベイが,何も語らずに微笑みあい互いに涙を流すシーンは印象的だ.チョウ・ドンユイとイー・ヤンチェンシーの好演が際立つが,映画全体の骨格も明確で見応えあり.
★★★★☆(★5個が満点).
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