独断的映画感想文:去年の冬、きみと別れ
日記:2024年6月某日
映画「去年の冬、きみと別れ」を見る.
2018年.監督:瀧本智行,脚本:大石哲也,原作:中村文則.
出演:岩田剛典(耶雲恭介),山本美月(松田百合子),斎藤工(木原坂雄大),浅見れいな(木原坂朱里),土村芳(吉岡亜希子),北村一輝(小林良樹).
雑誌編集長の小林は,フリーライターの耶雲から企画の売り込みを受ける.最近失火でモデル・吉岡亜希子が焼死し,その件については不起訴処分になった写真家・木原坂雄大は,実はモデルを焼き殺したのだという記事企画である.木原坂雄大と姉の朱里は,母親を亡くし父親から虐待を受けて育った.父親は姉弟の幼い時に殺害されたが,その事件は迷宮入りである等,耶雲の挙げた根拠はいずれも状況証拠だったが,上司は興味を示し耶雲の企画を進めることにする.
耶雲は木原坂の自宅を訪ね面談し,自宅出入りの許可を得る.全力で取材を進める耶雲,結婚間近だった婚約者百合子とも疎遠となる.ところが雄大は百合子に目をつけモデルとして自宅に招く.それ以来消息を絶った百合子,耶雲は小林とともに木原坂の自宅に飛び込むが,そこには燃え上がる死体を狂喜して撮り続ける木原坂の姿があった….
これが物語の前半,この後映画は,編集者小林が実は朱里と通じ合っていたことや,耶雲恭介の思いがけない独白を展開し始める.登場人物それぞれの,実は互いに前半では隠されていた関係性が明らかにされていくのだ.しかしなお事件の全貌は見えず,着地点は容易に明かされない.伏線がすべて回収され物語の全構成が明らかになるラストシーンは,なかなかの見応え.
見終わって見れば,個々のシーンのタイミングは全くの偶然の結果であったり,事前の準備や金の都合はどうなっていたのか等,未解決の問題は幾つも出てくるが,映画の進行中は怒涛の展開にあれよあれよと乗せられていくのがいっそ痛快である.見て損はなし.
★★★☆(★5個が満点).
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