独断的映画感想文:生きる LIVING
日記:2024年7月某日
映画「生きる LIVING」を見る.
2022年.監督:オリヴァー・ハーマナス.脚本:カズオ・イシグロ.
出演:ビル・ナイ(ミスター・ウィリアムズ),エイミー・ルー・ウッド(マーガレット),アレックス・シャープ(ピーター),トム・バーク(サザーランド).
ロンドンの市役所に職を得たピーターは今日が初出勤,駅で今日からの同僚と会う.課長のウィリアムズも来るが別の車両だ.仕事が始まると課長を始め仕事は遅々として進まず,他の課からたらいまわしされた仕事は他の課にたらいまわしにするか,塩漬けにするということが繰り返される.ピーターの引き継いだ机にも書類は山積み,向かいの席のマーガレットが,山積み書類のおかげで忙しいふりができるとアドバイスする.
この日珍しく早退したウィリアムズ,病院で主治医から余命半年の末期がんと告げられる.帰宅したウィリアムズは息子夫婦にそのことを告げようとするが,多忙な息子たちは耳を貸そうともせず寝てしまう.翌日ウィリアムズは役所を欠勤,大量の睡眠薬を購入するが使うことなく海辺のカフェーに行き,そこで知り合った不眠に悩む劇作家のサザーランドに睡眠薬をすべて与える.自分は人生の楽しみ方を知らなかったと打ち明けるウィリアムズ,その晩サザーランドの案内で飲み歩く.
ロンドンに戻ったウィリアムズは,しかし出勤することなく街をさすらう.そこで出会ったマーガレットは,事なかれ主義の役所をやめレストランに勤めると云い,ウィリアムズに推薦状を書いてくれるよう求める.その屈託ない態度に魅かれるウィリアムズ,その後マーガレットに映画に付き合ってもらった夜,自身の余命を打ち明ける.マーガレットは同情しつつも,職場に戻るようにと話す.ウィリアムズは憑き物が落ちたように翌日決然と出勤する….
黒澤明監督の1952年の作品「生きる」をカズオ・イシグロの脚本でリメイクした.落ち着いた画面と物静かな音楽が素敵.俳優はビル・ナイが何といっても味わい深い.酔ったウィリアムズがバーのピアニストの伴奏でスコットランド民謡「ナナカマドの木」を歌うシーンは哀切だ.
若い二人を演じるエイミー・ルー・ウッドとアレックス・シャープの明るさ,屈託のなさも魅力的.マーガレットが率直にウィリアムズと話すバーのシーン,ウィリアムズの死の直前公園のブランコで彼を見かけた若い警官が後日ピーターと語り合うシーン,それぞれが印象的だった.
★★★★(★5個が満点)
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