独断的映画感想文:13デイズ
日記:2024年8月某日
映画「13デイズ」を見る.
2000年.監督:ロジャー・ドナルドソン.
出演:ケヴィン・コスナー(ケネス・オドネル大統領特別補佐官),ブルース・グリーンウッド(ジョン・F・ケネディ大統領),スティーヴン・カルプ(ロバート・ケネディ司法長官),ディラン・ベイカー(ロバート・マクナマラ国防長官),ルシンダ・ジェニー(ヘレン・オドネル),ビル・スミトロヴィッチ(マクスウェル・D・テイラー統合参謀本部議長(陸軍大将)),ピーター・ホワイト(ジョン・マコーンCIA長官),レン・キャリオー(ディーン・アチソン元国務長官),エリヤ・バスキン(アナトリー・ドブルイニン駐米ソ連大使),マイケル・フェアマン(アドレー・スティーブンソン国連大使).
1962年10月16日(火)に始まったキューバ危機を,大統領特別補佐官:ケニー・オドネルの目を通して描く.この日アメリカ空軍のU-2偵察機はキューバに設置されつつあったミサイルを発見撮影した.分析の結果このミサイルは,シアトル以外の全米がほぼ射程距離に入る中距離弾道弾と判明する.報告を受けたケネディ大統領は,国家安全保障会議執行委員会(略称エクスコム)を招集,対応策を協議する.
軍側はミサイル発射可能となる日は迫っているとし,直ちにミサイル基地を爆撃し,追ってキューバへ侵攻するよう強硬に主張する.一方マクナマラ国防長官,ロバート・ケネディ司法長官,オドネル等は,強硬策を取ればソ連は対抗してベルリンに侵攻し戦争になると強く反発する.大統領は辛うじて軍を押さえ,海上封鎖を行ってソ連の出方を見るとの方針を10月22日(月)に全米に向けアナウンスする….
映画は大統領を中心とする文官側と軍の微妙なバランスをスリリングに描く.海上封鎖での発砲は大統領の許可を要すとの指示がありながら,マクナマラの面前で海軍側がソ連船への砲弾発射を命じるシーン,マクナマラが激怒すると海軍側は手順通りの曳光弾の発射であると応じる.これに対しマクナマラは,自分がしたような誤解をソ連側がしないと言い切れるかと切り返し,海上封鎖は軍事作戦ではなく,ケネディとフルシチョフの対話なのだと指摘する.
米側の文官と軍の拮抗の一方,フルシチョフの書簡の変化はソ連でのクーデターを示すのではないかという観測も流れ,事態は極度に混迷する.海上封鎖6日目の10月27日(土)に偵察中のU-2機がキューバの地対空ミサイルに撃墜されると,軍は激高し10月30日(火)にはキューバ爆撃を決行する旨主張,エクスコムの大勢がこれに傾く.ケネディは外交手段でフルシチョフとの合意を取り付けるべく,ロバート・ケネディとソ連大使ドブルイニンとの秘密会談を実施する.
10月27日は戦争が始まるか止められるかの,まさに瀬戸際であった.映画はフルシチョフからミサイル撤去の回答が来て終了する.映画が描くケネディ政権は,必ずしも圧倒的な指導力を持っていたわけではない.この時点でケネディ大統領は45歳,ロバート・ケネディに至っては37歳(オドネルも同様だろう)である.この3人が3軍の長や政界の重鎮相手に悪戦苦闘するドラマは,見応え十分.
ラストシーンで3人がバルコニーでリラックスする姿が描かれるが,この1年後にケネディ大統領が,5年後にロバート・ケネディが暗殺されるのだ.両暗殺時にオドネルはそれぞれの選挙参謀を務めていたというが,失意のうちに政界を去ったとのこと.緊張感高く各俳優が好演,心に残る映画だ.
★★★★(★5個が満点)
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