独断的映画感想文:怪物
日記:2024年10月某日
映画「怪物」を見る.
2023年.監督:是枝裕和.音楽:坂本龍一.
出演:安藤サクラ(麦野早織),永山瑛太(保利),黒川想矢(麦野湊),柊木陽太(星川依里),高畑充希(鈴村広奈),角田晃広(正田文昭),中村獅童(星川清高),田中裕子(伏見真木子).
父を亡くし母子家庭で暮らす早織と湊.最近,湊の様子がおかしい.怪我をして帰ってきたり,部屋の中で荒れたりする.湊は担任の保利先生が暴力をふるい暴言を吐くと云う.早織は学校に行って校長に事情を聴くが,すぐに幹部教員と保利が現れ,形ばかりの謝罪を繰り返す.具体的なことを尋ねても紋切り型の謝罪以外は一切答えない教員たち.幾度か学校を訪ねるうちに保利先生と教員たちに怒りと疑念を感じる早織,ついに学校で集会があり保利は保護者たちの面前で謝罪をする事態となる.
ここで画面は変わり,映画は再び保利の視点から事態を記述する.新任教師として赴任し児童と学校に馴染もうとする保利,保利は星川依里がいじめられていることに気付く.その現場の近くには常に湊がいる様だ.その湊が教室で暴れていた場に来合わせた保利は,止めようとして湊に接触,湊は鼻血を出す.湊は依里をいじめているのではないか,保利は湊を追及しようとする….
湊,依里,保利をはじめとするクラスの面々,校長をはじめとする教員たち,学校を追及し続ける早織,いったい誰が「怪物」なのか,湊はいじめっ子なのか.後半,映画は湊と依里の視点から三たび事件の経過を追う.その真相はどうか.
次第に埋まっていくジグソーパズルの全体像.ある嵐の夜真相を悟った保利は湊の自宅を訪ねるが,湊も依里も姿を消していた.早織と共に二人の行方を追う保利,嵐は激しさを増し道路は山崩れで遮断される中,二人は何を見たか….
息苦しい閉塞感のある私たちの社会,その大人たちの言動を反映する子供たち.その社会を構成する一人一人の怪物化が私たち自身の首を絞めていく.最後に,何ものにも束縛されず緑野を駆けていく少年たちと,それに重なる坂本龍一のピアノ.このラストシーンには涙を禁じ得ない.
★★★★☆(★5個が満点)
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