独断的映画感想文:PERFECT DAYS
日記:2024年12月某日
映画「PERFECT DAYS」を見る.
2023年.監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース.
出演:役所広司(平山),柄本時生(タカシ),中野有紗(ニコ),アオイヤマダ(アヤ),麻生祐未(ケイコ),石川さゆり(ママ),田中泯(ホームレス),三浦友和(友山).
平山はきわめて寡黙な男,アパートの一室に一人住み暮らす.毎朝決まった時刻に起き,支度してカセットテープを聞きながら軽トラで出勤する.仕事はシフトの相方タカシと分担して幾つかの公衆トイレを清掃することだ.昼休みは近くの神社で昼食を摂り樹々の写真を撮る,仕事が終わると銭湯で汗を流し浅草で一杯飲む.帰宅すると文庫本を読みながら眠りに就く.
休みの日にはコインランドリーで洗濯し,撮ったフィルムを現像に出しできた現像を受け取る.古本屋に行って文庫本を購入する.馴染みの居酒屋に行って常連客とママさん相手に一杯飲む.判で押したような同じことの続く日々,しかし平山は一つ一つの日常のことに喜びを見出している.
時には事件が起こるときもあり,タカシが入れあげているガールズバーの女アヤにアタックするための資金をせびられたり,そのタカシが急に仕事を辞め独りで倍の仕事をする羽目になったり,姪のニコが家出してきてアパートに転がり込んだりする….
平山がどういう家庭に育ちなぜ今一人住まいなのか,妻子はいるのか,何時からトイレ清掃を生業としているのか等は一切判らない.家出したニコを迎えに来た妹の話から,平山が父との確執があって家を飛び出し今の生活に入っていることが,僅かに判るのみだ.しかし役所広司の素晴らしい演技から,平山の人生がどういうものかは直に心で理解出来る.
平山が毎晩見る夢も含め,映像詩のようなカメラが美しい.カセットテープから流れる音楽も良い.冒頭はアニマルズの「朝日のあたる家」,その他オーティス・レディングの「ドック・オブ・ベイ」も素敵.休みの日に行く居酒屋で,ママさんが常連客(あがたもりお)のギターで歌う,浅川マキ版の「朝日樓(朝日のあたる家)」には涙が出た.
そのママさんの元夫と逢った翌日,いつもの様にカセットテープを聞きながら平山が出勤していく.朝日を浴びながら時に微笑み時に涙ぐみ車を運転していく長回しのラストシーン.まことに映画らしい映画,一見の価値あり.
★★★★☆(★5個が満点)
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